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王都の混乱
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「お義兄様。マリアお姉さまのこと、まだ憎んでいらっしゃいますか?」
王都へと向かう途中、魂だけになったアリシアが降りてきて、俺に問いかけた。
「……わからない」
俺を勝手に生贄にして、先代魔王の身代わりに仕立て上げたことは許せないが、そうでもしないと愛する者を永遠の煉獄から救えなかったのだ。
マリアを憎む気持ちは今も変わらないが、心の奥底ではわずかに彼女に対する同情心が芽生えていた。
「奴はただのビッチだと思っていたが……身も魂も捧げて先代魔王を救おうとしていたんだな。奴は紛れもなく『聖女』だったんだ」
先代魔王のことは忘れて、『マリア』として新しい人生を送ることもできたはずである。
裏切り者として憎まれ、好きでもない男たちに身を捧げ、最後には魂すら消滅することになっても、愛する者を救おうとした彼女の献身に、俺は複雑な思いを感じていた。
奴を許すことはできない。だが奴は俺に許されたいとも思っていないだろう。
自らを屑にまで貶めないと愛する人を救えないとして、その選択を選べる者がどれだけいるのだろう。
それに、俺は本当にアスタロトが救われているのかも疑問に思っていた。なぜなら、『復讐の衣』の中に不完全ながら彼の記憶があるからである。
記憶とは魂に刻まれた情報である。もしや、彼の魂は未だに『復讐の衣』に取り込まれたままなのでは?
もしかして、マリアは神に騙され、踊らされていただけなのではないか?
アリシアはそんな俺を見て、何かを決めた表情をする。
「お義兄様。マリアお姉さまを見て、私は自分の身を汚してでも為すべきことを悟りました。そのために、天に昇ろうと思います」
「……そうか。ならばこれでお別れだな」
「……いいえ」
アリシアは、優しい微笑みを向けてくる。
「忘れないでください。私はお義兄様を愛していると。幾星霜の年月が流れたのち、きっと再び会える日が来るでしょう」
その言葉を残し、アリシアの魂は天に昇っていく。
これで俺の心残りもなくなった。あとは復讐を最後まで貫くのみ。
俺は改めて決意すると、王都に向かって飛んでいった。
ライトただ一人により国中が混乱の渦に巻き込まれている。
食料不足と経済破綻、そこにさらにヴァンパイアによる被害と疾病による医療崩壊まで加わり、何百万人もの人が死んでいった。
残された者たちは、最後の希望にすがって王都ライディンを目指す。
「王都には勇者様がいる。俺たちをまもってくれる」
命からがら各都市から逃げ出した者たちは、苦労の果てにようやく王都にたどり着く。
しかし、彼らを待っていたのは非情な現実だった。
「王都にいれてほしいだと?ふざけるな。今は戦時中だ。得体のしれない者まで入れることはできん」
彼らを追い返しているのは、殺気立っている王都警備兵である。治安の悪化を恐れた国王は、彼らに命令して避難民たちを追い返していた。
「そんな!ようやく王都にたどり着いたのに!」
「俺たちはどこにいけばいいんですか?」
そう訴えるが、冷たく返される。
「知らんな。その辺で野宿でもしていればいいだろう」
「そんな!今から冬が来るんですよ!」
もう季節は秋が終わって冬に突入している。ほとんど着の身着のままで逃げ出した民たちは、このまま放置されたら凍死してしまうと必死に訴えた。
「金があるやつは特別にいれてやる。だが、そうでないやつはそのまま野垂れ死ね」
避難民の中のほんの一部の金持ちは、兵士たちに賄賂を払うことでいれてもらえたが、それ以外のものは放置され、結局城壁の外でテントを張って生活することになる。
多くの人が集まったことで衛生状態が悪くなり、すぐに病気が蔓延することになった。
「痛い……苦しい……」
「ゴホゴホ……」
エルシドから避難してきた民たちから始まった黒死病は、瞬く間に難民キャンプに広がっていく。
飢えと病気、魔王の襲撃におびえる民たちからは、勇者に救いを求める声上がった。
「勇者光司様!お助けください」
「私たちの希望!どうか魔王を倒して、私たちを救ってください」
そんな声が、連日のように王都を取り巻く難民たちから聞こえてくる。
さすがに、国王といえでもこれ以上この状態を放置することはできなかった。
王都へと向かう途中、魂だけになったアリシアが降りてきて、俺に問いかけた。
「……わからない」
俺を勝手に生贄にして、先代魔王の身代わりに仕立て上げたことは許せないが、そうでもしないと愛する者を永遠の煉獄から救えなかったのだ。
マリアを憎む気持ちは今も変わらないが、心の奥底ではわずかに彼女に対する同情心が芽生えていた。
「奴はただのビッチだと思っていたが……身も魂も捧げて先代魔王を救おうとしていたんだな。奴は紛れもなく『聖女』だったんだ」
先代魔王のことは忘れて、『マリア』として新しい人生を送ることもできたはずである。
裏切り者として憎まれ、好きでもない男たちに身を捧げ、最後には魂すら消滅することになっても、愛する者を救おうとした彼女の献身に、俺は複雑な思いを感じていた。
奴を許すことはできない。だが奴は俺に許されたいとも思っていないだろう。
自らを屑にまで貶めないと愛する人を救えないとして、その選択を選べる者がどれだけいるのだろう。
それに、俺は本当にアスタロトが救われているのかも疑問に思っていた。なぜなら、『復讐の衣』の中に不完全ながら彼の記憶があるからである。
記憶とは魂に刻まれた情報である。もしや、彼の魂は未だに『復讐の衣』に取り込まれたままなのでは?
もしかして、マリアは神に騙され、踊らされていただけなのではないか?
アリシアはそんな俺を見て、何かを決めた表情をする。
「お義兄様。マリアお姉さまを見て、私は自分の身を汚してでも為すべきことを悟りました。そのために、天に昇ろうと思います」
「……そうか。ならばこれでお別れだな」
「……いいえ」
アリシアは、優しい微笑みを向けてくる。
「忘れないでください。私はお義兄様を愛していると。幾星霜の年月が流れたのち、きっと再び会える日が来るでしょう」
その言葉を残し、アリシアの魂は天に昇っていく。
これで俺の心残りもなくなった。あとは復讐を最後まで貫くのみ。
俺は改めて決意すると、王都に向かって飛んでいった。
ライトただ一人により国中が混乱の渦に巻き込まれている。
食料不足と経済破綻、そこにさらにヴァンパイアによる被害と疾病による医療崩壊まで加わり、何百万人もの人が死んでいった。
残された者たちは、最後の希望にすがって王都ライディンを目指す。
「王都には勇者様がいる。俺たちをまもってくれる」
命からがら各都市から逃げ出した者たちは、苦労の果てにようやく王都にたどり着く。
しかし、彼らを待っていたのは非情な現実だった。
「王都にいれてほしいだと?ふざけるな。今は戦時中だ。得体のしれない者まで入れることはできん」
彼らを追い返しているのは、殺気立っている王都警備兵である。治安の悪化を恐れた国王は、彼らに命令して避難民たちを追い返していた。
「そんな!ようやく王都にたどり着いたのに!」
「俺たちはどこにいけばいいんですか?」
そう訴えるが、冷たく返される。
「知らんな。その辺で野宿でもしていればいいだろう」
「そんな!今から冬が来るんですよ!」
もう季節は秋が終わって冬に突入している。ほとんど着の身着のままで逃げ出した民たちは、このまま放置されたら凍死してしまうと必死に訴えた。
「金があるやつは特別にいれてやる。だが、そうでないやつはそのまま野垂れ死ね」
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多くの人が集まったことで衛生状態が悪くなり、すぐに病気が蔓延することになった。
「痛い……苦しい……」
「ゴホゴホ……」
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飢えと病気、魔王の襲撃におびえる民たちからは、勇者に救いを求める声上がった。
「勇者光司様!お助けください」
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そんな声が、連日のように王都を取り巻く難民たちから聞こえてくる。
さすがに、国王といえでもこれ以上この状態を放置することはできなかった。
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