偽勇者扱いされて冤罪をかぶせられた俺は、ただひたすらに復讐を続ける

大沢 雅紀

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第一部完結 

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ここまで読んでいただいてありがとうございました
これで第一部完結となります

第二部の冒頭と、現在書いている新しい復讐の物語の紹介をさせていただきます

エルフ王国 エターナル公爵家

王国の中でも三本の指に入るほどの権勢を誇るその家では、公爵夫人が出産の時を迎えていた。

「あなた……産まれましたわ。可愛い女の子です」

美しい公爵夫人が抱っこしている腕の中には、女の赤ちゃんが抱かれていた。

その全身から、真っ黒い闇の魔力が立ち上っている。

「おお。なんと可愛い子だ。しかも闇の魔力とはなんと縁起がいい。我が家は伝説のダークエルフを先祖に持つ名門貴族だ。これは先祖返りなのかもしれん」

髭を生やした公爵は、親ばか丸出しで喜ぶ。

「さっそく王家に報告に行かねばならんな。そういえば、最近王家にも光の魔力を持つ王子が生まれたとのことだ。もしかしたら、この子と婚約などということになるかもしれぬ」

「いやですわ。あなた。まだ気が早いですわよ」

公爵夫人は、手放しで喜んでいる公爵に苦笑する。

「それで、この子の名前は決めていらっしゃいますの?」

「ううむ。伝説のエルフである『ララーシャ』様の名前を借りるというのは?」

公爵はそう提案するが、夫人は首を振った。

「実は、この子がお腹の中にいるときに、お告げがありましたの。この子の名前を、アリアにして欲しいと」

「アリアか。少し変わっているが、いい名前だな。よし、決めたぞ。この子の名前は、アリア・エターナルだ」

公爵は、赤子を抱き上げて喜ぶ。赤子は父の腕の中で、ただ無邪気に笑っていた。



数年後

公爵家の庭では、二人の子供が遊んでいた。

「あははは。アリア、早くこっちにこいよ」

八歳ぐらいの活発そうな男の子が、庭を走り回っている。

「いけませんわルシャナ様。転んでしまいますわよ」

彼を追いかけているのは、黒い髪の美しい幼女だった。

「大丈夫だって……あっ」

ルシャナが石に躓いて、転んでしまう。

「うわーーーん」

膝から血が流れ出て、ルシャナは泣き出した。

「よしよし。痛いの痛いの、飛んでいけ」

追い付いたアリアが傷口に手を当てると、黒い闇が傷を覆い、痛覚を麻痺させる。

「あ、痛くなくなった。ありがとうアリア」

「どういたしまして。では、手当を……」

メイドを連れてこようとしたアリアを、ルシャナは引き留めた。

「待ってよ。わが王家に伝わる光魔法を試してみるから。『ヒール』」

ルシャナの指から光魔法が発せられ、傷口を照らす。膝から流れる血が止まり、傷もふさがった。

「すごいですね。王子はこんなこともできるのですか?」

アリアに尊敬の目を向けられ、ルシャナは威張る。

「ふふん。俺は勇者にして魔王であるライト様の血を引く新たなる勇者なんだぞ」

そう宣言するルシャナに対して、アリアは複雑な表情を浮かべた。

「どうしたんだ?」

「いえ……なんでもありませんわ」

アリアはふっと微笑むと、優しくルシャナの頭をなでる。

「あなたが光の魔力で世界を救う勇者になるのなら、私は闇の魔力で人々を救う聖女になりましょう」

「あはは。それはいいな。僕は勇者だ!」

アリアに乗せられて、すっかりその気になるルシャナだった。

「ルシャナ様。これはプレゼントですわ」

しばらく遊んだ後、アリアは黒い首輪を差し出す。

「なんだこれ?」

「私が作った『闇のチョーカー』です」

それは禍々しく真っ黒に染まり、闇の魔力を放っていた。

首輪を見て、ルシャナは首をふる。

「いい、いらない」

「えっ?」

思いかげないことを言われて、アリアは困惑する。

「だってダサいもん。まるで犬の首輪みたいで」

「そ、そんな!お願いです。身に着けてください」

しつこくアリアが迫ってくるので、ルシャナは逃げ出して屋敷に入った。

「公爵ぅ。アリアが無理やり俺に首輪をつけようとするんだ!」

「なんですと?こら!アリア」

父親に怒られて、アリアはしゅんとなる。

「いいか、お前は将来王子の婚約者になるんだ。いじめたりしちゃだめだぞ!」

「べ、別にいじめとかじゃ……な、なんでもありません。ごめんなさい」

怖い顔をされ、アリアは素直にルシャナに謝った。

「いいよ。それじゃ遊びの続きをしよう」

元気よく庭に駆け出していくルシャナを見て、アリアはため息をつく。

(失敗しましたわ。ルシャナ様に闇の装備をつけて、勇者としての成長を阻害しようとしましたのに……まさかデザインがダサかったから身に着けてくれないとは)

心の中で落ち込むアリアだった。



私はアリア。エルフ王国のエターナル公爵の長女です。

実は私には前世のアリシアだった頃の記憶と、愛するお義兄様を『魔王』という柵から救い出す使命があります。そのために現世の家族をも利用するつもりなのですが……。

「アリアちゃん。新しいドレスを買ってあげたわよ」

「可愛いアリア、今度みんなで旅行にでもいこうか。いつも忙しくて、かまってやれてないからな」

こんな感じで、優しいお父様とお母様に溺愛されて育てられてしまい、困惑しているところです。

(ああ。どうしたらいいのでしょうか。お義兄様を助け出すには、新しい魔王を産みださないといけません。ですが、そのことで今の両親を破滅させることにでもなったら……)

いけません。優しいお父様とお母さまを裏切り、破滅に導くことになると思うと、どうしても躊躇してしまいます。

迷った私は、とりあえず現世のお友達であるルシャナ王子を篭絡することにしました。

「王子は本当に強いですね。きっと世界を救う勇者になれますよ」

「そ、そうかな。よーし。頑張るぞ」

私がおだてると、王子は喜んで更なる修行に打ち込みます。なんてほほえましい……じゃなくて素直なんでしょう。

「王子、お疲れ様です。汗を拭きましょう」

「ああ、ありがとう」

王子はちょこんと私の前に座ります。私は真っ黒いタオルを持ってきて、汗をふいてあげました。

「あー。さっぱりした」

「王子に喜んでいただけて、私もあれしいです。そうだ。この『闇のタオル』を差し上げますので、お使いください」

王子の経験値を吸収するタオルを作って差し出しますが、受け取ってもらえませんでした。

「いや、いいよ。というか、僕はあんまり黒い物が好きじゃないし、汗でぐっしょりしているしね」

こんな感じで逃げられてしまいます。私の婚約者となったルシャナ王子は、一向に闇の装備を身に着けてくれません。私の作るアイテムに、何か問題でもあるのでしょうか?

そんな感じでぐずぐずしているうちに15歳になり、いよいよお義兄様の復活が近づいてきます。

(困りましたわ……なんとかルシャナ王子様を闇落ちでききる要素を見つけないと)

そう思っていると、お父様に呼ばれました。

「アリア、王家から申し出があった。お前を正式にルシャナ王子の婚約者にしたいそうだ」

嬉しそうなお父様を見ていると、どう答えたらいいのかわからなくなります。

えっと……前世でライトお義兄様とマリアお姉さまの婚約を王家から強制されたときは、コルタールお父様は苦虫をかみつぶしたような顔をしていたんですよね。そこをマリアお姉さまに付け込まれたんでした。

「反対なされないのですか?」

「反対?どうして?」

お父様はきょとんとした顔をしています。

「あの……私が王家に嫁ぐと、お父様が寂しくなるのではと」

「……確かに、父親としては複雑な思いを感じる。だがルシャナ王子は優秀で優しい方だし、お前とも仲がよい。彼なら安心して娘を任せられるだろう。幸せな家庭を築くのだぞ」

そういってお父様は屈託なく笑います。

そうでした。ルシャナ様は農民の息子であったお義兄様と違い、生まれながらにして王子様でした。

身分に対する拘りからお義兄様への憎しみを持っていた前世の父上と違って、彼を迫害する理由なんて何もないいのです。

(ルシャナ様を『魔王』に仕立て上げることは、無理みたいですね)

ルシャナ様は生まれつき勇者の力を持つ王子様で、闇に堕とすには恵まれすぎています。それに、いい人なので後ろめたいですし。

でも、このままではまずいわ。お義兄様を永遠に救えなくなる。そう思った私は、現状を打破するために元人間の王国があった大陸に渡ることにしました。

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