追放された転送者は、天空王となって世界に復讐する

大沢 雅紀

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天空城侵入

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数日後
王都は各国連合軍に取り囲まれていた。
「開門!」
「天空王に逆らった罪人たちよ。潔く裁きを受けよ!」
各国連合軍からそんな声が投げかけられる。
王都は分厚い城壁に取り囲まれて難攻不落の要塞だったが、その周囲はすべて軍によって取り囲まれていた。
そしてその頭上には、巨大な天空城が鎮座している。
「……俺たちはどうなるんだ?」
「あの人数に攻め込まれたら、ひとたまりもない。おまけに天空城まで来ているし……」
取り囲まれた王都民たちは、不安で恐れおののく。
「……やはり、あのルピンとかいう男が新たな天空王になったのは事実なのか?」
「俺たちはいったいどうすれば……」
王都民たちは怯えながら空を見上げるが、天空城は不気味な沈黙を保っていた。

王城
皇女の間では、若い男女が抱き合っていた。
「ウェイ様……怖いですわ」
「レイチェル。大丈夫だ。俺は勇者だ。ルピンのような偽天空王などに負けはしない」
勇者ウェイは必死にそう慰めるが、その顔色は悪い。
すでに包囲されて三週間になるが、その間天空城からは何のリアクションも起きてない。
逆にそのことが不気味で仕方がなかった。
その時、兵士が部屋に入ってくる。
「勇者ウェイ様。陛下がお呼びです」
「そうか……わかった」
ウェイはしぶしぶ兵士に連れられて、玉座の間に来る。
そこでは眉間に皺を寄せた王が待っていた。
「勇者ウェイよ。王都は現在危機的状況にある」
王はそういって窓の外を示す。王城はパニック状態になった市民に取り囲まれていた。
「天空王に詫びろ!」
「偽勇者ウェイをルピンさまに捧げて許しを請え!」
そんな声が玉座の間にも聞こえている。ルピンの処刑時にはあれだけ彼に罵声を浴びせ沸き立っていた王都民たちは、自分たちが包囲されて命の危険にされさせたとなるとあっさり掌を返して王や勇者を批判していた。
「貴族たちの間にもそのような声が多い。冤罪をかぶせたそなたと王女を処刑して天空王に許しを請えとな」
「………そのようなたわ言に耳を貸すと後悔するでしょう。たとえ私や王女をいけにえにしようと、奴が許すとは思えません」
ウェイの言葉を聴いて、王は頷く。
「そのとおりじゃ。じゃが、このままではいずれわれわれは破滅する。すでに王都内では食料が不足し、暴動がおきかけている。各国の軍隊も交渉に応じず、天空王の許しがないかぎり包囲は解かれないようじゃ」
王はそういうと、兵士たちに合図する。
頷いて玉座の間からでた兵士は、二人の人間を連れてきた。
一人は翼が生えた少女で、もう一人はみすぼらしい老人である
「あ、あなたは……」
ウェイは老人を見て驚く。やつれて見る影もないが、その顔には確かに見覚えがあった。
「勇者ウェイ。今となってはそなたが最後の希望じゃ。なんとかしてあの偽天空王を倒してくだされ」
やつれた顔でウェイの手を握るのは、地上に追放された元天空王だった。
「倒せといわれても、どうすればいいのか……?」
「それについては私から」
隣にいた翼が生えた少女が進み出る。
「ウェイさま。私は天使ルイと申します。天空人の中でたった一人あの偽天空王ルピンに囚われていましたが、隙を見て逃げ出しました。これをお届けしようと思いまして」
ルイは懐から白銀色に輝くオーブを取り出す。
「これは?」
「勇者を強化する「勇者のオーブ」でございます。これがあれば、あなたの力を数十倍にできます」
「なるほど……」
ウェイはオーブを受け取り握り締める。すさまじい魔力が伝わってきた。
「偽天空王ルピンを奪い、天空城を制御できる「天空のオーブ」奪い返せば、ここにいる真の天空王様に力を戻すことができます」
それを聞いて、元の天空王も希望を取り戻す。
「勇者ウェイよ。世界を救えるのはそなたしかおらん」
「ワシからも頼む。混乱した世界を元の秩序に戻せるのはそなただけなのじゃ」
二人の王に懇願され、ウェイはルピンと戦うことを決意するのだった。

ルイに連れられ、ウェイは天空城に上がっていく。以前きたときは清潔な白亜の城だったが、今の天空城は住人を失った廃墟の城も同然だった。
「いくぞ!」
ルイに導かれ、ウェイは天空の町に入る。
すると、あらゆるモンスターが襲い掛かってきた。
「シャインスラッシュ!」
ウェイは光魔法を連発してモンスターたちをなぎはらう
しかし、モンスターたちはひるむことなく襲い掛かってきた。
「くそっ」
「がんばってください。天空のオーブがあるのは天空城の中心部です」
ルイはそう応援してくるが、大量に襲い掛かってくるモンスターたちと戦うはめになって息着く暇もなくなる。
いつしかルイとも別れ別れになり、魔物の群れに飲み込まれていった。

天空城
「天空王様。ただいま戻りました」
そういって玉座の前に膝をつくのは、先ほどまでウェイと一緒にいた天使ルイ。彼女はおびえた様子でひたすら頭を下げた。
「ご苦労。もう用はないから、行っていいぞ」
玉座に座る俺は、そういって空中に視線を向ける。そこにはウェイが血まみれになってモンスターと戦う映像が浮かんでいた。
「お、王よ。行けとはどこにでしょうか?」
ルイがおずおずと聞いてくるので、俺は冷たく返した。
「どこにでも。今日をもって天空城の歴史は終わる。ここにいたら巻き込まれるだろうからな」
そういって俺は玉座から転移魔法をルイに掛ける。
「オクルーア」
ルイはこの場から消えて、天空城は俺一人になった。
「さあ、ウェイよ早くこい」
俺はモンスターに命を削られながら、それでも近づいてくるウェイを迎えるための準備に取り掛かるのだった。

「はあっ……はあっ……」
ウェイはポーションを飲んで自分で自分を癒しながら、少しずつ前進を続ける。そしてとうとう天空城の中心部にたどり着く。
そこは球形の形をした部屋で、見たこともない機械のようなものが壁面一帯を埋め尽くしていた。
「こ……ここはなんだ?」
「知りたいか?」
その声と共に分厚い扉が開き、一人の少年が入ってくる。彼は手に黄金色のオーブをもっていた。
『反逆者ルピン……」
「よくここまでたどり着いたな。褒めてやろう」
俺は余裕たっぷりに言い放つ。
「さて、最後の戦いだが、その前に聞きたくないか?天空城とは何かを」
「知るか!」
ウェイは首を振るが、俺は彼に世界の真実を説明してやった。
「ここから離れた異世界に、文明が進んだ世界があった。その世界が滅びるとき、そこにいた人間は新たな世界を建設するために各々飛び立った。その乗り物が天空城だ。彼らは何もない星に降り立ち、一から生物を作った」
「だとすると、やっぱり天空人は神じゃないか」
ウェイがそうつぶやくと、俺は頷く。
「たしかに神かもしれない。だけど奴らはいつしか人間レベルの存在にまで成り下がった、自分たちが優れた支配者であることょを確認するために、地上人を作り出したんだ」
「知るか!それが俺になんの関係がある!」
ウェイがわめくので、俺は彼の役割を説明してやった。
「わからないか?地上人たちの天空人たちへの信仰を失わせないために、時に魔王を作り出して暴れさせる。そして天空城が作り出した勇者に倒させて、勇者に尊敬を集めさせて天空界に迎え入れる。何百年も、何千年も同じことが繰り返されていたんだ。お前はただのマッチポンプの道具にすぎんよ。勇者魔王システムとは地上人を永久に天空人の奴隷にするためのシステムの一環だ。だが……」
俺は一度言葉を切って、自分の手の中の黄金のオーブを見つめる。
「そのシステムも今ここで終わりだ!」
俺は自ら「天空のオーブ」を中央の台座に設置する。ウィーーンという音とともに、部屋が縮み始めた。。
「き、貴様!何のつもりだ!」
ウェイは怒りの声をあげるが、同時に天空城そのものから激しい警告音が発せられる。
「モード変更。通常航行に移ります」
同時に部屋のドアが閉じられ、球形の壁が迫ってくる。
「なんだ!何をした?」
『これで天空城はこの世界から去ることになる。その間、中の住人を守るために防御体制をとるんだ。そう……精神体、つまり魂すら通過できない壁に囲まれることになる」
俺が言っている間にも、どんどん壁が迫ってくる。
「さあ、天空城が動き出すまで少し時間がある。戦いをはじめようか」
俺はそういって拳を構えた。
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