調教師ファーマーの気まぐれ漂流記

竹田勇人

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第5話 カルテック王国

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スポンド「いやぁ、驚いたな。まさかピーコが飛べるなんて」
クレール「本当びっくりだよ。だけどよかった。大きいからみんな乗っても余裕だし、荷物も結構持てそうだね。」
スポンド「流石にS級魔獣ともなると能力も桁外れだな。飛べないはずのピーコックが飛んじまうんだから、それにこの羽根、こんな大きさ見たことねえ。1枚500バルツはくだらねぇだろうな。」
クレール「色も綺麗だし、飛んでる姿も様になってるよね。」
今、僕たちは太陽の光を虹色に反射させるピーコの背中に乗り、カルテック王国まで向かっていた。クープはずっと浮かれていて、僕とスポンドはピーコのスペックの高さに驚くばかりだった。攻撃力はもちろん、攻撃のレパートリーや防御、速度も速いし何よりこうして飛べるのが大きい。この大きさで飛べる魔獣はフライングドラゴンやファルコン種じゃないといないと思っていた。実際、ピーコはピーコックの中でもかなり特殊な方で、レベルはクープにこそ劣るもののそれでもレベル157。S級魔獣の中でも結構高いレベルの魔獣である。戦闘を本職としない僕らのパーティには十分すぎるほどの戦力だ。
スポンド「見えてきたぞ!」
スポンドの指差す先には高い塀に囲まれた見渡す限りの石畳が見える。遥か上空からでも街の雑踏が聞こえてくるかのような賑わいを見せている。僕たちは大きな城門の前に立って衛士に軽く会釈した。
クレール「クープもピーコも大人しくするんだぞ。」
クープ「クー!」
ピーコ「ギュルル…」
クープが敬礼の形で手をおでこに当てるとピーコは翼を軽く広げて喉を鳴らした。それだけでも結構な風が立っている。衛士も少しばかり驚きと恐れを隠せない様子だ。
衛士「ようこそカルテック王国へ。その魔獣はくれぐれもしっかりと管理をお願いします。」
衛士も僕が調教師であることは分かっていて言っているのだろう。本来ならば人間を1人残らず食い散らかしてもおかしくない魔獣が僕の一言に喉を鳴らして大人しくしているのは少し優越感だった。
スポンド「なぁ、家とか仕事とかはどこで聞けば分かるんだ?」
衛士「わが国には中央王国運営局があります。ギルド加入や土地購入や住民申請、職業紹介に至るまで王国のサービスのおよそ全てをそこで受けられます。」
スポンド「そうか、丁寧にどうもな。」
クレール「ありがとう。衛士さん。」
敬礼した衛士にクープが敬礼で返す。すると衛士の顔が少し綻んだ。流石はクープといったところか。この笑顔に癒されない人間はいないだろう。僕たちは早速街の大通りを中央王国運営局まで歩く。できればピーコの背中に乗ってひとっ飛びと行きたいとこだがまだ知れ渡ってもいない超大型ピーコックが空を飛んでいるのを見られると混乱を招くのは確実だからとりあえず知れ渡るまではこうして連れて歩くしかない。とは言っても、さっきから僕らをちらちら見てくる人が多いところを考えるとあまり時間はかからないように思える。せいぜい一週間もすれば噂は知れ渡るだろう。スポンドは大きな王国の街並みに目を皿にしている。かくいう僕も驚いてはいる。今までまともに石畳の続く大通りをこんなにたくさんの人にまみれて歩いたことなんて一度もなかった。ピーコのおかげで道は僕らの周りだけ空いているけど、本来ならば歩くのは非常に困難だったろう。ピーコはただ強いだけではなくそれなりの優越感も与えてくれるらしい。クープも嬉しそうに歩いている。本当にこの2体の魔獣には精神的にも世話になっている。そうこう思っているうちに中央王国運営局についた。大きな扉を開けて中へ入る。ピーコは少し窮屈そうだがなんとか耐えてもらわないと、こんな大きいのを外へ置いて宿泊先を探したらピーコの寝床がなくなってしまう。
スポンド「今日から泊まれる宿を探してくれ、できればこの馬鹿でかいピーコックが寝られる馬小屋があると嬉しいんだが。」
エリナ「し、少々お待ちください。」
胸からエリナの名札を下げた彼女は僕らより少し年上に見えた。奥へ入っていくと大きなファイルを抱えて戻ってきた。
エリナ「えっと…人間が3人と魔獣が一体ですね…」
クレール「待って、この子は魔獣なんだ。」
僕はクープを持ち上げた。
クープ「クー!クー。」
エリナ「魔獣…?見たことないですが…」
クレール「木霊なんだけど超変上位種だからちょっと形が違うんだ。」
エリナ「そ、そうでしたか。それでは、街の郊外にマリエールという温泉旅館があります。大きい屋敷なので直ぐ分かると思います。」
スポンド「そうか、ありがとう。」
クレール「ちなみに、今募集している仕事はある?」
エリナ「えぇっと…特にはないのですが、ブラエハムの研究所に魔獣を見せれば報酬をもらえるかもしれません。」
クレール「ありがとう。」
エリナ「はい、王国での生活をお楽しみください。」
エリナさんは花のような柔らかい笑顔で手を振ってくれた。周りの人はまだ少しだけ驚いている。とにかく、今は宿屋に行くのが先決だと思い、直ぐに看板を頼りにマリエールに向かった。
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