調教師ファーマーの気まぐれ漂流記

竹田勇人

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第11話 覚醒

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クレール「神に授かりし…」
「ガルルル…」
キーコ「今日は調子悪いですね。ほとんど逃げられてますし。」
クレール「なんか上手く力が入らなくてね…」
キーコ「最近練習も多かったから疲れているのでしょう。今日はもう終わりにしましょう。」
クレール「うん、そうするよ。」
僕はその日、どことなく身体が重くて思うように動かなかった。キーコの言う通り疲れがたまっていたのかと思っていたが、夜になると症状は悪化し、うなされるほどの高熱が出ていた。
アリー「大丈夫ですか?何か欲しいものあります?」
クレール「ううん…大丈夫だよ…きっと、明日には良くなってるから。」
そう言う僕の声はとても弱々しく、きっと大丈夫には聞こえなかったと思う。気がつくと僕の部屋にみんなが集まっていた。まるでこのまま死んでしまうのかと思うほどだった。
スポンド「どうすんだ…これ素人じゃどうしようもねぇぞ。」
キーコ「ブラエハム殿ならあるいは、何かわかるのでは?」
スポンド「おぉ!それだ!ちょっと飛んでくれ!」
キーコ「もちろんです。早く乗ってください。」
スポンドはキーコの背に乗って漆黒が漂う夜の空をブラエハムの研究所まで最高速度で飛んだ。研究所の上まで来ても、もちろん研究所も光はない。夜に目が慣れていても見つけるのに時間がかかった。
スポンド「おい!ブラエハム!起きてくれ!おい!」
スポンドは勢い良くドアを叩きながら叫んだ。
ブラエハム「なんじゃなんじゃ。何を騒いでおる。今何時だと…」
スポンド「いいから早く乗ってくれ。」
キーコ「飛びます!」
キーコの背の上でブラエハムに事の事情を説明する。
ブラエハム「なるほど…心当たりがないでもないが…」
スポンド「どういうことだ?」
ブラエハム「いや、まだ確証はない。直接見れば多分わかると思うのじゃが…」
キーコ「もう直ぐつきます。」
普段も不気味な屋敷は不穏なオーラを放ちますます不気味な様相で建っている。
スポンド「クレール!大丈夫か!」
クープ「スポンド、さっきからクレールの身体が…」
みるとクレールの身体は白い光に包まれベッドから少し浮いている。
ブラエハム「やはり…覚醒じゃ。」
スポンド「覚醒?」
ブラエハム「短期間に急激にレベルが上がることによって身体がついていける耐性を整えるために魔力を異常解放して強制的に体力ステータスを上昇させる現象じゃ。本来は魔術や魔導を専門で学ぶ人しか起こらないはずだが。」
レヴェントン「聞いたことがあります。おそらく、クレール様は魔力を使い切っては回復を繰り返したがために起こったと思われます。」
ブラエハム「そうじゃな…S級魔獣に教われば無理もないか…」
クレール「身体が…熱いよ…」
アリー「大丈夫ですか?クレールさん!」
ブラエハム「離れるんじゃ!早く!」
部屋は真っ白な光に包まれ、僕は身体の芯が割れるような衝撃に気を失った。
クープ「クレール!クレール!」
気がつくと僕は部屋のベッドで横になっていた。
アリー「よかった!クレール…もしかしたら、死んじゃうかもって~!」
アリーは寝ている僕の上に抱きついた。少し布団が湿る。
スポンド「心配したぞ。目さまさねぇしよ。」
クープ「無事でよかったよ。」
キーコ「申し訳ありません。まさかそんなに負担だったとは。」
クレール「ううん、ありがとう。おかげで魔力も体力もすごい上昇したもん。それにごめんね。心配かけちゃって。」
ブラエハム「そうだ。少し起き上がってくれ。ステータスを見てやろう。」
クレール「そんなことできるの?」
ブラエハム「ギルドのステータス表示の魔法ぐらいわしにかかれば朝飯前じゃ。」
ブラエハムは僕に向けて詠唱を始めると背中にステータスが浮き上がった。
クレール「どうなんですか。」
ブラエハム「…す、すごい成長じゃ。レベルが34まで上っておる。魔力は魔導士と比べても大差ないレベルじゃ。それに緊縛魔法と調教魔法の即効と無制限のスキルが発動した…」
クレール「え?」
レヴェントン「無制限…」
スポンド「なんか、問題なのか?」
レヴェントン「いいえ。しかし、無制限スキルについては伏せておいたほうがいいでしょう。」
ブラエハム「これは禁断のスキルじゃ。即効はいい。詠唱がなくても魔力量が十分になれば仲間にできる。しかし、無制限スキルとは…その名の通り制限がなくなる。1つは量。魔力の限りレベルに関係なく数を増やせる。しかし問題はもう1つの効果じゃ。このスキルは種類の無制限も兼ねる。」
クレール「それは…つまり…」
ブラエハム「魔力を帯びるものなら全てじゃ。魔獣はもちろん、聖獣、意思を持つ魔道具の類や古代の合成魔獣に至るまで…そして、人間までも。」
スポンド「嘘だろ…」
レヴェントン「もちろん、魔力が足りなければ失敗はしますが、人を奴隷にすることすら可能…ということです。」
クレール「待ってよ!僕はそんなことしないよ!」
ブラエハム「わかっておる。しかし、そう思わん者もおる。このスキルは危険じゃ。絶対に人に言ってはならない。悪ければ指名手配さえありえるぞ。」
レヴェントン「かつて、このスキルを手にした国王がこの国を長年にわたり独裁してきた。それからこのスキルは禁忌とされています。」
ブラエハム「まぁ、悪用しなければ便利なスキルじゃ。上手に使いなさい。」
僕は、自らの手に人をも変える力があると知り、背中に悪寒が走った。真っ赤な太陽が空をオレンジに染め上げながら、地平線を越えて顔を出していた。
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