クソガキ、暴れます。

サイリウム

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原作開始前:崩壊編

93:決着

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「これにて諸侯会議は終わりとする。すまないが公爵たちは、内々に話しておきたい議があるため残ってくれ。では解散。」


第二王子がそう言うと、粛々と帰っていくお貴族さんたち。一瞬ティアラちゃんも帰ろうとしたが……、そういえば今日から公爵様だった。わーい! 偉い人ー! 正直責任とか滅茶苦茶嫌だけど、ある程度好き勝手出来るようになるのならもうそれでいいや。

でも実際、どこの領地任せられることになるんだろうね。

王にとって、貴族に土地をどう分割させるのかって言うのはかなりの悩みものだろう。大量の貴族が処断された今、この王国にはかなりの空き地が存在している。貴族目線で考えるのならそれまで持っていた土地と地続きな場所が好ましいんだろうけど……。全部が全部そうできるほど、簡単なものではないだろう。

と言っても、変に飛び地を与えてしまうと貴族の反感を買ってしまう。本拠地から離れれば離れるほど移動が手間だし、自分の監視下に置けない。自然とそれまでの家臣団から人を割かなきゃならないから、領土が増えたのに力を削がれるという変なことになってしまう。


(絶対的な王権を持っていればそんなことしても黙らせることが出来るんだろうけどね~。)


今の王家には、とんでもなく力がない。

そもそも国王がご乱心だったためそれまで蓄えた力を失ってしまっており、五大臣たちにくわれてしまったところもある。さらに所有する強者の数も先の帝国との戦いで0になってしまっている。なんかヤバそうなメイドさんたちがいるけど……。正面切っての戦いでは正直“強者”とは言えない様な感じだった。戦力として数えるのは、難しいのだろう。

対して貴族側。マンティスは元五大臣みたいなものだしある程度力を蓄えているっぽいし、元伯爵にして現ロリコン公爵は言わずもがな。エレナのとこはペガサスと強者二人。ご新規様であるティアラちゃんは武力だけでなく宗教も持っている。王と貴族のバランスは、完全に貴族に傾いていると言っていいだろう。


(つまり王家からすれば貴族に立ててもらいながら、自身の力を取り戻していくか、前世世界のように“君臨すれども統治せず”の方向に持って行くかの二択。まぁその辺りは第二王子次第だろうけど……、貴族のご機嫌取りをしなければいけない立場ってことは変わらない。)


それを考えると、他の貴族さんたちはともかく……。私やエレナやロリコンあたりの領地が、飛び地を得たりする可能性は低いだろう。そもそもロリコンは無駄に優秀だから飛び地でも問題なく統治しそうだし、私やエレナの所は怒らせたら簡単に王国が崩壊するだけの力を持っている。おそらくどの公爵家も“今は”王を立てる姿勢を崩すことはないだろう。けれど王家からすれば、それがいつ崩れるか解らない。貴族たちの不興を買うような行動は避けるだろう。

となると……、ティアラちゃんの領地は五大臣の誰かが持ってた領地をそのままもらうか、いい感じに整形してもらうってことになりそうだよね。あのクソたち領民から搾り取るだけ搾り取ってるだろうし……。


(最初は税率めっちゃ安くしたろ。)


そんなことを考えていると、いつの間にか貴族たちの退席が終わっていたようで残っていたのは見知った顔のみ。第二王子が緊張をほぐすためかため息を吐きながら、首元を緩める。……ほぼ友達しかいない様なもんだし、私も着替えよっかな? と言うことで服を私服に変更~。

軽く指を振りながら着替えを行っていると、私の対面に座っていた先輩公爵、マンティスが第二王子へと声を掛ける。


「お疲れさまでした殿下。無事終わりましたな。」

「あぁ。これも皆のおかげだ。急だった故に参加できない貴族もいたようだが……、今回の一件で私の即位に横やりを入れる者は出てこないだろう。……よろしいですね、父上。」

「……あぁ。すでに私は王たる資格はない。お前が望むときに、この冠を脱ごう。」


予め決めてあったことを再確認するように、やり取りが行われていく。


「あのさ、ちょっといい?」

「どうか致しましたか、使徒様。」

「なんで私公爵なの? 正直爵位とか要らないんだけど。」


まぁ確かに爵位というか、領地あった方がアユティナ様の教会とか建てられるから嬉しいんだけど、爵位に付随する面倒な責任とかは本気で要らないのだ。というか当初の取り決めじゃ全部金銭の支払いにするつもりじゃなかったの? 政治と宗教を離すって方針はどこ行った? 使徒っていう宗教そのものが公爵に成っちゃっていいの?


「確かに、使徒殿の懸念はごもっともなのですが……。」


王子の言葉を代弁するように、マンティスが口を開く。

薄々解っていたことだが、やはり私の立てた功績が多すぎて金銭で支払おうとした場合どう考えても不可能という結論に至ったのだそうだ。故に爵位と土地を渡すことでその代わりとし、金銭の負担を少しでも減らそうとしたことで、こうなったらしい。

まぁそうだろうとは思ってたけど……。とりあえずロリコン。『ティアラは儂が育てた』みたいな訳知り顔で頷くんじゃない。消し飛ばすぞ?


「それが愛の形であれば受け止めるぞ我が天使よ……! 無論タダではこの首はやれぬ、我が愛も存分に味わってもらうことになるだろうがな!」

「気持ち悪。……オリアナさんやっちゃっていいよ。」

「あー。まぁ昨日大量に死んだし一人ぐらい誤差か。」

「姉上、私も混ぜてください。コイツ娘のこと一瞬欲に染まった眼で見てましたし。そも弟子に纏わり付く害虫など我ら大人が除去すべき存在です。」


よっこらせ、なんて言いながら全身に魔力を込め始めたオリアナさんに、同様に魔力を滾らせながら軽い屈伸運動を始めるナディママ。わーい! 最強のグランマ&ママだ! やっちゃえー!


「い、いやいやいや! オリアナ殿! ナディーン殿! どうか、どうか収めて頂いて! 必要ならばこのマンティスの首を持って行ってもらっても構いませぬ。」

「大変申し訳ない使徒様。この者は確かにかなり重い業を背負ってはいるのだが、今後の国政に於いてどうしても必要な存在であるため……。ご容赦いただけないだろうか?」

「いや、止めてくださるなマンティス殿に殿下! これはいわば試練! 我が天使へとたどり着くための障害となればこのリロコ。全力で挑ませて頂こう! そして無事突破した暁には……、我が天使よ、その唇を頂いても構わぬな?」


((((((きも……。))))))


なんか真面なことを言っているような気もするが、内容も仕草も声も気持ちが悪い。おそらくその場にいた全員の感情が一致したのだろう。先ほどまで周囲に漂っていた“殺し合い”の雰囲気が一気に消し飛ぶ。しかもこのロリコンの末恐ろしい所は、この状況を“狙って”起こした可能性が高い、というところだろう。

本当に、本当に無駄に優秀だ……。


(けど正直。そろそろガチでこの関係に終止符打っておかないと嫌なんだよね。)


私が領地を持つと言うことは、そこに居を構えると言うことになる。そして奴と私が同格の“公爵”。今後出会う確率はこれまでに比べるとぐんと伸びるだろう。別に今は何とかなっている? なっているが……。どこかで私が爆発してロリコンごと色々吹き飛ばしてしまう気がする。

“使徒”として覚醒し、最上級職に成った以上ロリコンと私の戦力差は、私に傾くはずだ。こいつなら無駄に能力を上げて強くなってきてもおかしくはないが、“神秘”の使い方を学んだ私にはどう足掻いても勝てない。けれど戦えば周囲への被害は避けられないだろう。

しかもコイツの“頭”だけは、国として残しておいて欲しいという要望で、私もそれには酷く同意できる。有能過ぎるが故に、そして国への忠誠はしっかりしているからこそ、“切れない”のだ。

去勢しようにも、昔オリアナさんが潰したはずのソレがなんか復活してるらしいことを鑑みるに、まぁ無理だろう。

早い話、“このロリコン”を諦めさせる必要があるのだが……。


(これまでとは、まるっきり違うアプローチ。ただ闇雲に拒否するのではなく、もっとロリコンにとって重くキツイ何かが……!)


あ、そうだ。いいこと考えた。アユティナ様ー! ちょっと手伝って~。こんな感じのこと言えば、あのロリコン野郎の脳みそ破壊できるかな~って思うんですけど。どうですかね?


【確かに良い考えではあると思うし、私が証言すれば“事実”として扱われるだろうし、確かに完全な嘘ではないけど……。いいの? 後々“色々”と面倒になりそうだけど……。ほんとに大丈夫?】


うん、上手く行けば奴の“性癖”事壊せるかもだし……。やる価値はあるはず! おそらくというか確実に私以外の子たちも被害にあっているのだ。完膚なきまでにその脳みそを破壊するために、多少の嘘と真実を混ぜに混ぜて混乱させながら、物理的ではなく精神的に。伯爵自身にその脳みそを破壊させてやる……!

うぉぉ! 唸れなんか使い込んでるうちになんか上手くなったティアラちゃんの演技力! フルパワー!





 ◇◆◇◆◇





「……そういえば、リロコ。お前の趣味ってさ、13歳までだよね?」

「ん? 確かにそうだな我が天使よ。妻となる其方に理解を得られているとうれしい限りだ……!」


コイツの、ロリコン具合は原作で強く理解している。その存在が13に達した瞬間、全く食指が動かなくなるという色々とヤバい癖を持っているのがこいつだ。原作では途中加入であることや、メイン筋にあまり関わってこなかったことから『傍から見る分にはキャラが濃いし面白味のあるやつ』で収まっていたが……、現実では違う。

けれどその“幼さ”に対して強すぎるこだわりを持っているからこそ……、崩せれば、壊せる。

コイツは幾ら制限していたとはいえアユティナ様の神秘に対しても耐えて来た“バケモノ”だ。外側からの攻撃は効かない。だからこそ自分で、壊させる。内側からそれを崩すのだ。


「私さ。もう13過ぎてるんだけど良いの、色々と?」

「…………は?」


この肉体は依然として8歳。こいつのタイムリミットまで5年もある。けれどこの精神は……、別だ。違う世界に生きた人間の記憶をそのまま保有している私は、精神年齢だけで言えば普通に20歳をこえている。そこにちょっとした嘘と、神の奇跡を追加する。


「確かに見た目はこうだけどさ、アユティナ様の元で10年以上修行してたから……、普通に13超えてるよ、私。結局聞きそびれてたから今聞くけどさ……、それでも私は“範囲内”?」

「え、いや、わ、私の魂はいな、否と……!」

「確かに初めて会ったとき? 迷宮都市のころは年齢そのままだったけど……。神殺しの時に流石に修業期間とか足りないからさ。ちょっとアユティナ様に時間弄ってもらって修行してたの。だからもう20超えてるよ、わたし。」
 

「え、は、う……。」


明らかに動揺し、その頬に汗を浮かべ始める伯爵。

実際は、神秘の扱いにそれほど時間を掛けていない。あの聖戦の中で実践を通して学んだし、アユティナ様と一体化したことでその動かし方は体に染み込んでいる。たとえ操作中にこの体が両断されようとも、神秘の動きが乱れることはあり得ない。

けれどまぁ“神秘”とは神の力だ。人の身でどうこう出来る様な存在ではない。伯爵もそれを理解しているのだろう。“10年”という長い期間、修練に充てなければ使えなかったという“虚偽”には、現実味がある。そしてそれを……、神が保証する。


「そんなに信じられないならアユティナ様からも証言してもらおっか? アユティナ様ー!」

【はいはい、何ですかティアラちゃんや。】


一瞬にして世界の時が止まり、私達の脳に直接神の声が響く。“見せつける”ように敢えて机の上に置いてあったペンを持ちあげてみれば……、手を離しても、それが落ちることはない。


「この前の戦いのとき、私アユティナ様のとこで修行させてもらいましたよね。10年くらい。」

【あー、そう言えばしてたね~。でも実際腕がいい方だと思うよ? 使えない子は一生無理だし、三桁年かかるような子もいたからさ。さっすがティアラちゃん、才能あるぅ~! ……んで、急だけど何かあったの?】

「いえ、ちょっとこいつが信じられない様な顔してたので……。」

【ん? あぁ君かぁ。別に人の趣味に神の私が口出しする気はないけどさ、相手が嫌がってるのなら手を引くんだぞ? 今日は機嫌がいいから見逃してア・ゲ・ル。じゃーねー!】


神がそう言った瞬間、世界の時が再度動き始める。宙に浮いていたペンも、重量に座れ地面へと落ちていく。

これだけやれば、ロリコンのように無駄に優秀でなくとも、『神は時間を操ることが出来る』上に、『私が神の元で何年修行したとしても、現実世界では1秒も経ってない』ということを理解できるだろう。あ、ちなみに時間を止めるって技はアユティナ様がクソ女神がいた場所を取り返したおかげで出来るようになった御業みたいです。


【ミサガナが居座ってた場所って、王国の真上みたいなとこで、昔私が暮らしてた場所と同じなのよね。つまりこの世界自体の操作とか。輪廻の管理とか、世界自体のシステム周りがここに集まってるのよ。だから世界の時間を止めるとかも普通に出来るんだよね~。まぁあいつ全く整備とかしてなかったから、今全力でメンテナンス中なんだけどさ……。】


とのことです。あ、ちなみに時間停止だけど、“神秘”持ちには全く効かないから戦闘にはあんまり意味がないんですって! 神の時間を止めようとするのなら、権能として時関連を持ってる人じゃできないらしいです。前から思ってたけど、神秘ってほんと凄いエネルギーだよね。

さて、もう十分『自分の好きだった相手は、すでに成人していた』を理解させられたわけだけど……。これだけじゃまだ弱い。もっと、押し込もう。


「というか。そもそもの話さ……。私の精神って、どっちかというと“男”寄りなんだよね。だから恋愛対象も、女性なの。」

「え……。」


事実。前世の私は、男だった。この世界の原作となっている『永遠のアルカディア』は男性向けR18ゲーム。まぁ一部の女性も買っていたようだが、私は男で、このゲームを遊んでいた。多少精神が体に引っ張られていることは自覚しているが、恋愛対象は依然として女性。まぁ体が女性のことを“同性”と判断しているため、女性にもあんまりそんな感情は抱いていないのだが……。男性が恋愛対象になることは、今後ありえないと断言できる。


「あと普通に私、故郷に婚約者いるし……。」


虚偽。そんなものはいない。


「う、う、うそ、だ……。」

「ほんとだよ? フアナって言うの。成人したら再会しようねーって。」


事実。フアナとはこの世界における成人である15歳。原作開始の年に再び相まみえるという約束を交わしている。今何をしているのかは知らないが……、おそらく来る日に向けて力を蓄えてくれているだろう。この話し方だとフアナが婚約者みたいな感じになってしまうが……。まぁあの子だったら謝れば許してくれるだろうし、事情を話せばむしろ「そんなことならもっとこの名を使いなさい! 私の名で友の身を守れるのなら! いくらでも貸しますわ!」なんて言ってくれるだろう。

なので、問題はない。……多分。

地面を蹴り、机を飛び越えながらあえてロリコンに近づく。明らかに動揺、いやかなりのダメージを受けている。

それもそうだろう。

自分の好いたはずの相手がいつの間にか自身の許容範囲から飛び出しており、そもそも相手の恋愛対象にすら入っておらず、すでに相手がいる。

どれか一つだけであればこいつは飛び越えて来た可能性が高いが……、同時に三つ脳みそに叩き込むことで、その動きが鈍る。

だからこそ……、更に押し込む。


「ずっと、最初から言ってるけどさ……。私、お前のこと大嫌いなんだよね。というか、お前の屋敷見て再確認したけどさ。自分以外の女を何人も囲っているような奴が、誰かに好かれると思う?」

「あ、あ、あぁ、あぁぁぁあああああ!!!!!!」


叫び声を上げながら、そのまま後ろにぶっ倒れる伯爵。

その顔は真っ白で、口から泡を吐いている。

ふぅ、とりあえず何とか、なったよね。



……じゃあなんで私はまだ悪寒を感じてるんだ?






ーーーーーーーーーーーーーーーーーー






〇覗き見してた人(時間対策完了済)

え、公爵!? それで私が婚約者? も、もしかして。いやもしかしなくても! “迎えに行く”って言葉は……、~~~ッ♡♡♡ (以下二時間ほど自主規制)
……はッ! このままでは私とティアラ、隣に立つどころか釣り合いませんわ! お母様に速攻で花嫁修業を、いやヘイカに領地経営を学ぶ? あーもう時間は足りませんわ! でも時間止めても対応できるのヘイカとティアラぐらいですし……。そうだ! 私が増えればいいのですわ! 分身! 分身の魔法ですわ!


〇アユティナ
あー、うん。がんば。


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