クソガキ、暴れます。

サイリウム

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原作崩壊後:神魔の覚醒

104:元気だった?

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「……ティアラ、その後ろの。誰?」

「あ、エレナお疲れー! これ? 皇帝。」


私が感じていた使徒の気配が無くなった瞬間。大きな羽ばたきと共に上から降りてくるのは、エレナの姿。ちょうど直前まで使徒討伐を進めていたようで、手に持っている槍の青い宝石の装飾が、強く光り輝いている。HPを吸収して回復してる時の特徴だねぇ。

んで、ティアラちゃんが首根っこつかんでずるずると引っ張っているのが、皇帝さま。この国の頂点! すっごく偉い人! 近くにいたから、こう後ろから首筋をトンってして気絶させてきたの。前世じゃアレ『アニメみたいにうまくできる様なもんなん?』って色々言われてたけど、ティアラちゃんは使徒なんで! 神秘ぶち込んで無理矢理気絶させて、再現したって感じですね~。


「でもクソ女神の神秘弾き出してアユティナ様の神秘入れても、実質的に神秘による洗脳になっちゃうから……。エレナ。その余った活力というか、HPをこの人に叩き込んでくれない? それで神秘弾き飛ばす。」

「こ、皇帝? おま、なんてもんを……。まぁいいわ、とりあえずその黒い靄みたいのを消せばいいのね? 多分叩き込んだら破裂しちゃうから、いい感じに悪い所だけ包み込むように……。」


そうそう、皇帝さん! なんか『悪魔』って言って来るし、『一太刀ぐらいは覚悟してもらうぞ』みたいなコト言ってたから、文字通り一太刀だけもらってあげたの。こう、頭でね? 上から一直線の奴。

でも昔のティアラちゃんみたいによわよわじゃなくなって、つよつよになった私はんなもん効かないのです! 神秘による身体強化と、タイタンとの融合による強化。それを合わせれば、幾らゴジケサの神秘によって強化された皇帝の一撃でも問題なし。上段からの大剣による叩き落しを無傷で受けられるってもんよ!

ま、流石にちょっとおでこが赤くなっちゃったけど、血は流れてないからヨシ!


「ま、帝国さんには色々悪いことしちゃってるからね。殺し過ぎちゃったと言えばそうだし……。私って別に女神さえ殺せればそれでいいみたいな所あるしさ。詫びで一発ぐらいならねー。」

「……いやたぶん私もそのまま体で受けきれるとは思うけど、相変わらずあんたイカれてるわね。普通顔に大剣叩きつけられそうになったら避けるでしょ。それに、お前の嫁さん。キレるんじゃないの?」

「あ。」


エレナにそう指摘され、そーっと上。フアナがいる方角を見つめると……。

あ、ダメっすね。むっちゃキレていらっしゃる。私が皇帝を生かすって話をしたから殺さないようにはしてくれてるけど、“殺さなければ”いいんでしょ? みたいな顔していらっしゃる……! や、止めてあげてねフアナ? この人色々おいたわしい方だから……!


「自分の大事な部下10人中8人失うでしょ? 本拠地爆破されたからそれ以外の臣もやられてるでしょ? 兵も大量に殺されてるでしょ? んで帰ったらクソ女神が暗躍しまくってるでしょ? 民人質に取られているようなもんだから何もできずに乗っ取られて、自分も半分くらい洗脳。しかも帝都も巨石によってぶっ壊れされちゃった。うむ、流石クソ女神。生かしては置けぬ……!」

「……大半貴女が原因じゃないの、それ。」

「うぐッ! で、でも。もとはと言えば全部クソ女神のせいだから……。」


実際帝国のクソ女神が攻めてこなければ戦争起きてないし、もっと言えばその二人のクソ女神がアユティナ様をこの世界から追い出さなければ何の問題も起きなかったから。て、ティアラちゃん悪くない……。帝国は崩壊しちゃうだろうけど、クソ女神はぶっ殺すし、帝国任された貴族とかが悪政敷き始めたら消し飛ばすからそれで許して♡


「いや無理でしょ。ギリ顔合わせても殺し掛からないぐらい? ……というかティアラ。神秘ってこれであってる? 今活力で囲い込んだと思うんだけど。」


そういうエレナの方を見ると、皇帝の体内や魂にまとわりついている黒の神秘に、エレナの活力が纏わりついているのが見える。……けど纏わり付いたツタを剥がすんじゃなくて、丸ごと全部くるんで引っこ抜こうとしてる感じだ。このまま摘出しちゃったら体から魂とか全部抜ける奴ですね……。死んじゃうぞ?


「……私に精密作業は無理ね。うん。あの子に任せた方が良いんじゃない?」

「確かに。んじゃフア「お呼びですか旦那様?」……地獄耳?」

「ずっと“見ています”ので。」


こわ……。あ、じゃあ。この皇帝さんのこととか解ってるよね? この後みんなで女神殴りに行くんだけど、こっちが皇帝を守ってる所を見られたら、絶対人質として使って来ると思うのよ。だからクソ女神が何もできないように、あらかじめ奴の神秘を体から吐き出さしておこうって思ってたんだけど、ちょっと私もエレナもできなくてさ。お願いしていい? ……もちろん拷問はナシで。


「…………残念ですわね。確かに魂にまで影響を及ぼしているようですが、この程度であれば問題ありません。」


酷く残念そうというか、別に人質にされても皇帝ごと女神殺せばいいんじゃ? みたいな思考に行きついてそうな顔をするエレナが、彼に手を当てる。すると彼女の高圧力の魔力が皇帝の体内に入って行き……。ゆっくりとゴジケサの神秘を消し飛ばしていく。


「こんなものですかね。」

「おぉ、すごいな。一瞬。」

「だねー。さっすがフアナ。頼りになる~!」


そういうと、少し胸を張りながら『それほどでもありますわ!』という彼女。うん、普通にしてたら可愛いし頼りになる、大人の姿もまぁすごく凄いんだけど。……ちょっと愛が重いんだよね。うん。こわい。

さ、さぁ! んじゃ皇帝の確保も終わったし、エレナが使徒の殲滅を終わらせてくれた! やる事全部終わりましたし、メインディッシュと行きましょうか!


「えぇ、そうね。魔法で伝達と転移、すぐに手配しますわ。場所はあの教会でいいのかしら?」

「うん。あそこが一番クソ女神の神秘が濃いからね。絶対いるはず。……にしても味方全員やられたような物なのに、未だに動きを見せてないとか何考えてるんだろ? ちょっち不安ではあるけど、どうせクソ女神だし大丈夫でしょ。」

「では、術式を。」


フアナがそう言いながら軽く手を鳴らすと、私たちの姿が一瞬で掻き消え、教会の出入り口付近に全員が集結する。私達三人だけじゃなく、さっきまで市民の無力化をしてくれていた姉妹たちとかもここに集まった感じだね。んじゃ、まだ気絶してる皇帝をオリアナさんに任せまして……。


「女神退治にー! レッツゴー!」




 ◇◆◇◆◇




「っと、もう行ったのですか姉上。」

「うん? あぁナディか。こんなもん投げ渡して三人で飛んで行っちまった。」


そう言いながらオリアナが軽く持ち上げるのは、依然として気絶した皇帝。

彼に埋め込まれた神秘はかなり濃く、同時にその魂にまで影響を及ぼすものだったが……、フアナによって完全に除きとられ、ついでに傷ついた部分の修復が行われている。女神ゴジケサに捕食された部分を戻すことはできなかったが、今後日常生活を送るのに何一つ不自由しない体に戻れた、と言えるだろう。


「皇帝……、ですか?」

「だな。若いころはこいつの首取りに行くって意気込んでたもんだが……。」

「正直、そんな気にはなれませんね。流石に同情が勝ります。」

「だよなぁ。」


そんなことを言いながら。白目をむいて泡を吐いている皇帝を、地面に軽く投げ捨てるオリアナ。ティアラのせいでとても大変な目にあっている彼だが、オリアナやナディーンからすれば、コイツのせいで自分の友や部下たちが死んだようなもの。長年の殺し合いで積み重なってしまった遺恨は、ティアラのやらかしをもってしてもそうそう消えない。哀れみこそすれど、優しくするような気にはならなかったようだ。


「にしても、子供の成長は早いものですな。気が付けば女神に喧嘩を売れるようになり、実力も申し分なし。不安がないと言えば嘘になりますが、酷いことにはならないと安心できるレベル……。何とか親の面目を取り戻しましたが、子に追い抜かされる経験など考えたこともありませんでした。」

「確かにな。……まぁあいつら、いや“ティアラ”がおかしいだけだな。うん。無駄に周囲に影響を及ぼしてくるせいで色々おかしくなってる気がする。」

「違いない。」


そう笑い合いながら、部下たちに指示を出していく二人。

女神がいる教会に向かって来るのは、改造された帝国民たち。女神を守るためなのか、それともただ敵に向かう様に命令が出されているのかは解らないが、とにかくこちらに向かって寄ってきているのは確かだ。女神退治に向かった三人が周囲に気にせず戦えるように、オリアナは姉妹や貴族の私兵たちに、ナディーンは自身の騎士団に命を飛ばしていく。

二人の実力は突出しすぎているがために、彼女たちが前線に出ることはない。子供たち、そして部下たちに戦果を積ませるためだけに動く。勿論危険が訪れれば介入するだろうが、そうそう起きることはないだろう。故にナディーンは戦場を眺めるというよりも、娘や部下たちがどれだけ実力を発揮できるか、言うなれば参観日のお母さんの様な面持ちで眺めていたのだが……、オリアナは背後。教会の方を警戒しながら、準備を進めている。


「姉上? 魔力なんて起こして何を……。あぁ、グングニルですか? 姉上の新技。名付けをしない姉上にしては珍しい奴。」

「恥ずかしいから辞めろ。」

「良い響きでは? ……あれ、姉上それ何本作るつもりです?」


そう言いながらナディーンが視線を向けると、どんどんと自身の魔力を込めに込めた槍。『紅の滅槍グングニル』を量産していくオリアナ。既に3本目を作成し終わっており、真っ赤に発光する破壊兵器を地面に並べてたと思えば、また新しいグングニルを作っていく。もうこれだけで三回帝都が更地になるのだが……、一体何と戦うつもりなのだろうか。

というか馴染み過ぎて気が付かなかったが、いつの間にか若返りの力を行使し、老いた体から全盛期の若い姿を取り戻していた。

ナディーンからすればあのアンデッドの“ヘイカ”という者の協力を受けながら、若返った姿でも万全を尽くせるようにオリアナと鍛錬していたため、あまり違和感を抱かなかったのだが……。そういえば今回の戦いではまだ若返っていなかったな、と思い出す彼女。


「……え、もう5本目作り始めてる。何本作るので?」

「できるだけ。女神が予想よりも強かったときの支援用……、ってだけの使い道なら良かったんだけどな。なんかこう、嫌な予感がするんだよ。『ティアラたちがやり過ぎて色々暴走する』って予感がな。」

「あぁ……。」


納得するナディーン。オリアナの言う通り、暴走する可能性が非常に高いと考える彼女。

だって今回の攻城戦で初手で巨石転がしを行い、『スポーツ!』なんて言ってる奴である。何かやらかさないはずがない。しかもその婚約者? であるフアナはティアラ絶対主義。ティアラがやりたいと望んだり、もしくはティアラから“餌”が提示されれば、全力で協力してしまうし、何が起きても止めないだろう。そしてナディーンの娘であるエレナも、ティアラに強く影響されている。まだ貴族としての教育などのおかげか、この中で一番ブレーキが効きやすいのだが、一度アクセルを踏み切れば絶対に止まらない。

まぁつまり、“何か”起きた時の為に止める準備を、オリアナはしているのだった。


「……とりあえず私も若返っときます。出力上がりますし。」

「そうしとけ。」





 ◇◆◇◆◇





「たのもー!」


そう言いながら、教会の扉を蹴飛ばす。

王国の女神ミサガナが白を好むとすれば、帝国の女神ゴジケサは黒を好む。故に教会の配色も、黒がメインになっている。蹴飛ばした扉が礼拝堂の宙を飛び、落下。そしてその先。おそらくもともとは女神像が置いてあったであろう場所に、大きな玉座が置かれている。

そんな無駄に豪華な椅子に腰かけるのは……。小柄ながらも無駄に濁った神秘を詰め込んだ、醜い塊。

帝国の女神、ゴジケサだ。


「……ふーん。思ったより、早かったね人間。けど思った通り、礼儀を知らないみたい。」

「そりゃ礼儀を払うに値するかどうか、考える頭があるからね! あ、そうだ。お土産持ってきたよ! つまらないものですが受け取ってくれると嬉しいなぁ!」


そう言いながら、空間から射出するのは【鋼の槍】。神によって無限に増え続けるそれは、槍が崩壊する直前まで神秘が込められている。これ一本で殺せるとは思っていないが、ご挨拶の一撃とすれば、十分だろう。そう思い、槍を放ったのだが……。女神に到達するよりも早く、弾かれてしまう。

下手人は、“見覚えのある”真っ黒な鎧。教会の床に開かれた真っ黒な穴。ここからでも見える、人の口が何重にも重なったような穴の中から出てくるのは、死んだはずの黒騎士。そしてその左右に生み出される……。おそらく帝国十将の生き残り、『雷切』と『慈愛』だ。

ゴジケサの神秘に呑まれているというより、神秘そのもの。素体として彼らの死体を使ったのは事実だろうが……、改造しすぎてて、原型をとどめていない。


「趣味が悪いねぇ。」

「人形遊びは、嫌いなんだ。楽しいのに。……私のお気に入りと、お気に入りじゃないの。その人間たちをどうにかして。」


クソ女神がそういうと、一斉に動き出す黒騎士たち。けどまぁ……


「圧倒的に、力不足じゃない?」

「嘗められたものですわね。」

「……昔ママが苦戦したって聞いたけど、過去の話か。」


空間から【神槍オリンディクス】を抜き、黒騎士を両断した後に空間に収納する私。後衛職の『慈愛』からすべての魔力を抜き取り、それをもって焼き消すエレナ。【終槍ディフェクト】を起動し振るうことで文字通りこの世から『雷切』を消し飛ばすエレナ。

過去の私達であれば苦戦しただろうけど……、それだけの話。


「んで、どうする? 大事なお人形さんが消えたわけだけど……。今ならその首を差し出せば痛みなく殺してあげるけど、どうする?」

「……。」


そうクソ女神に問いかけるが、返答は帰ってこない。“人形”と称した自身の配下が消し飛んだというのに、一切表情を変えていない。確かに奴が持つ神秘は多いが、私達三人合わせれば十分に殺し切れる。それは幾ら人を見下しているクソ女神でも、理解できているはずだ。


「……ふふ、人形は所詮。人形。……真ん中の、あの私たちが追い出した神の神秘を持ってるの。お前がアユティナの使徒?」

「……そうだよ! ティアラちゃんって言うの! 冥土の見上げに覚えて死んで行ってね♡」

「そう。……やっぱり、あれは趣味が悪いね。人なんて神にとっては家畜。放置しておけば勝手に育つんだから、一番美味しい時に食べるべき。それなのに旬が過ぎたのをずっと放置してる。意味が解らない。」


“補食”を司る神なせいか、ずいぶんと食事に関してご高説を垂れるゴジケサ。普段の私なら話の途中でも関係なしに殺し掛かるんだけど……、眼前のこいつが腹に溜め込んだ神秘が、とんでもない勢いで巡り始めてる。うかつに手を出せば、ドカンってことか。


「まぁ食事の趣味も、使徒の趣味が悪くても。確かにあの時の私よりも、強かった。……だからこそ、手を組んだの。改めて紹介しておこうか、家畜たち?」


ゴジケサはそう言葉を発しながら、ゆっくりと立ち上がる。そして歩を進め、立ち止まった瞬間。この部屋の中に、もう一つの神秘が出現する。ゴジケサとほぼ同量。黒ではなく、白い神秘。どちらも酷く濁った、吐き気を催す様な、邪悪な神秘。……クソが、星の核に叩き込んであげたってのに、まだ死んでなかったのかよ。


「久しぶり、とでも言えばいいのかしら? アタシを殺そうとしたその罪。それがどれだけ愚かだったのか、ここで思い知らせてあげるわ……!」

「ミサガナ……! 上等。ならもっかい殺すまで! 今度はアユティナ様の手を煩わせずにね!!!」


そう叫びながら、武器を構える。そして私に合わすようにエレナも自身の愛槍を構え、フアナが一歩下がることで支援に入る。前衛二人に、後衛一人。そして二人とも、親友で、戦友だ。これで負ければどうか詰んだってレベルの布陣。後はこっちの気合次第!


「これは前哨戦。アユティナのことだから、使徒が危機に陥れば絶対に降りてくる。そこを叩いて、全部終わらせる。解ってるよね、ミサガナ。」

「こっちのセリフよゴジケサ! アタシの脚を引っ張るんじゃないわよ!」


眼前の二柱の神秘は、爆発する。さっきまで感じていたソレよりも、だいぶ多い。

けど、戦えないレベルじゃない。

多分お互いの権能を無理矢理使って神秘量を強化したんだろうけど……、私達だって、強くなってる。


「別に貴女たちに何かあるわけじゃないけど、人にとって害でしかないのは確か! さっさと退場してもらうよ!」

「ティアラが、消えろと言っているのです。理由なんて必要ないでしょう?」

「前口上不要! 死ねぇぇぇ!!!!!」


最後の戦いが、今始まる。


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