56 / 72
第三章:来たる日に備えて
交わらない
しおりを挟む「レン!元気にしてたか?大丈夫か?
お前、その隊服…ほんとに、ホワイトノーブルに…?
それにお前…
禁色の情報を流してた内通者だって…ほんとなのか?
そうだ!ヒマリは!無事なのか?!
ホワイトノーブルに、何かされてないか!?」
俺は、まさかこんな所で
レンに会えるなんて、思ってもいなかったから
頭に浮かんだことを、何も考えずに、
息継ぎをするのも忘れて、まくし立てるように話しかけた。
「…。」
「レン…?
どうしたんだよ?ヒマリは…。」
「お前がっ!!
今更、ヒマリの心配なんかするな!!!」
黙って聞いていたレンが、突然、
大声で叫ぶように、俺に、そう言った。
「…はっ?それ、どういう…。」
再会を喜んでいた俺は、
予想外のレンの反応に動揺する。
「しらばっくれるな!!
【黒の再来】の瞬間…俺とヒマリは、見てたんだ。
ヒマリの叔父さん…シゲ叔父さんが…
お前のチカラ、真っ黒の稲妻に貫かれて、黒焦げになるところを!」
「なっ!それは違うっ!あれは…!」
「うるさい!この目で…
黒焦げになっていく叔父さんを、ヒマリと見てたんだ!」
レンは怒りで、声が震えたまま、俺に向かって叫び続ける。
「ヨウ…お前、”禁色”のヒマリを、狙ってたんだってな!?
お前が、ヒマリのような”禁色”を集めて
真の復活を企む、【黒の悪魔】だったなんて…。
7年も一緒にいたのに、全然気が付かなかった…っ!」
レンは、憎悪を隠そうともせずに、俺を睨みつける。
「だけど、残念だったな。
ヒマリも俺も…
もう、ホワイトノーブルで、真実を知ってる。
二度と、お前の嘘には、騙されない。」
今まで一度だって見たことがない、
レンの、憎悪に染まった鋭い視線に。
俺は、無意識に後ずさりしながらも、必死で弁解する。
「違うんだ!
あの日…叔父さんはっ!ブレイズに、殺されたんだよ!」
「ブレイズ…隊長だって…?」
俺の言葉に
少しだけ、レンが驚いた顔をした。
「そうだよ!
悪いのは、全部ブレイズなんだ!
俺たち、騙されてたんだよ!」
俺は、なんとか分かってもらおうと、
必死になって、叫び続ける。
「ホワイトノーブルが、悪い組織なんだ!
ブレイズが、あの日、ヒマリを狙ってたんだよ!」
俺の叫びを、黙って聞いていたレンは…
今度は、悲しそうな顔で言った。
「嘘をつくにしても、
もう少しマシな嘘をつけよっ!!!
ブレイズ隊長は、俺たち2人を…
お前の攻撃から守って、逃してくれた恩人だぞ…?
隊長が守ってくれなかったら…
今頃2人とも、叔父さんみたいに…死んでたんだぞ?」
悲痛な叫びの後、
レンは、俺から視線をそらすように、顔を伏せた。
「嘘じゃないっ!ほんとなのに…っ!!」
レンと…交わらない、気持ちと視線。
俺は、どうしたらいいのか焦って
ふっと、シオンと握ったままの手が、視界に入った。
「そ、そうだっ!
シオンと…こいつと、手を繋げば!
心の声が、読めるようになるんだよ!ほら、繋いでくれれば…!」
俺は、まだ、距離のある
顔を伏せたままのレンに、近付いていく。
すると、顔を伏せたままで、
レンが、冷たい声でつぶやいた。
「…そうやって、俺に近付いて…どうするつもりなんだ?
あの、真っ黒の稲妻で…俺も、黒焦げにするのか?
ヨウの顔して…これ以上…頼むから、やめてくれ。
お前は…もう、ヨウじゃない。ただの【黒の悪魔】だ。」
そう言い切って、顔を上げたレンは…
今にも、泣きそうな顔をしていた。
「レン…っ!違う、んだ。
ほんとに、俺じゃ…っ!!!」
俺も、同じように。
今にも泣いてしまいそうになって、上手く言葉が出てこない。
そんな俺の手を、握ったままだったシオンが
握ったままの手に力を込めて、そっとつぶやいた。
「…ヨウ、落ち着いて。
よく見るんだ。彼の、気持ち。」
(レンの…気持ち…?)
意識の外に追いやられていた、
レンの周囲を舞う、薄紫の付箋に、目をやると
【ヨウのこと…信じちゃ、だめだ。】
【ヒマリは、俺が守る。】
【禁色の情報を流した内通者?なんのことだ?】
【ホワイトノーブルは、黒の悪魔を倒す、正義だ。】
【ヨウが…悪魔なんだ。きっと…。】
【ヨウを、信じたい、のに…!】
「レンは…内通者じゃない…。
ホワイトノーブルの裏の顔も、”知らない側”…。
それに、俺のこと…まだ…!」
俺が、ポツリと吐いた言葉を聞いて、
無表情だけど、満足そうに、シオンは言う。
「ちゃんと、彼の気持ちを受け止めて。
そして、ヨウの気持ちは
頑張って、言葉にしないと…伝わらないよ。
…俺と、叔父さんみたいに。」
「シオン…!」
そうだ。ついさっき
俺が、シオンに言ったんじゃないか。
『声に出した方が、想いは伝わる』って。
(声に出したほうが…。
よし、だったら…!!)
俺は、初めて…実践で、
チカラを使う、覚悟を決めた。
その時
「レン!
違うわ、ホワイトノーブルの方が、
【黒の悪魔】を復活させて、世界を牛耳ろうとしていて…!」
後ろで聞いていたミチカが、
身を乗り出して、レンに声をかける。
それを聞いたレンはまた、
ゆっくりと顔を顔を伏せて
「ミチカも、【黒の悪魔】の味方か…。
…報告通り、だな。
モモナとアザミも、”そっち側”なんだろ?」
冷静な声で、淡々と話す。
次に、顔を上げたレンは、
もう、泣きそうな顔では無くなっていた。
「お前ら全員…
ヒマリのこと、狙ってんだな。
ヒマリを…
【黒の悪魔】の生贄(いけにえ)になんて、絶対させない。
俺が、ヒマリを守る。」
レンが、真っ白な隊服の袖をまくり
右腕を、陽の光の下に晒し、声を張り上げた。
「勅令するーー!」
0
あなたにおすすめの小説
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる