魔剣(タイトルの変更はあるかもです) クラリス自叙伝

李雨

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クラリスは、魔法学の授業中であることさえ忘れていた。教授のホーキンズを前に大きな欠伸をしてみせたのには、さすが見逃すことができないと友人のリリーがクラリスを咎めた。



「何やってるのよ、魔法学の授業中なのに!ーーしかも悪魔の教授を前にして、あんた殺されるわよ! 集中しなさいったら!」

「フアアアー」



 クラリスは返事の代わりに欠伸をしてみせた。リリーの顰めっ面よりも遥かに恐ろしい面相をした教授が近づいてきて、ルーン語を唱えた途端、クラリスの体が宙を舞った。長髪のプラチナブロンドがゆらりと揺れて金髪の長い睫毛が開き碧眼が現れる。



「お目覚めかな? 私の授業中に眠るとは命が惜しくはないということだろか?」



 絶対零度の声色は周囲の生徒等を凍りつかせた。黒いローブを纏った長身の男が右手を軽く振ると小さな杖が出現し、さらに振ると杖は拡大していった。ブルーグレイの眼が生意気な少女を捉え、再び呪文を繰り返した。杖の先から発した光玉は瞬く間にクラリス目がけて飛び立った。初等科の魔法学で習った魔法銃である。魔法銃は小動物から巨大生物、モンスターまで殺傷できるように段階的に威力を操作できるのだが、杖に慣れてない者が扱えば大きな事故に繋がる。この魔法学アカデミーでも、毎年のように数十名の生徒が瀕死の怪我を負っていた。



 クラリスは既に杖を構えて光玉を発し襲ってくる光玉を跳ね返した。そして衝突した光玉は同調し消えていった。クラリスはフッと息を吐くとホーキングを睨みつける。



「また? 馴染みの攻撃なので飽きてしまったわ! 教授ともなれば、少しは駆使した魔法を見せてほしいわね」



ほんの僅かにホーキンズの眉頭が動いた。



「ならば、これを受けてみるがいい」



 振り上げたホーキンズの杖から水が溢れ出して水柱となり、やがて強大な水竜へと変化した。水竜は大きな口を開きクラリスを飲み込もうとする。



「ᛒᛟᛗᛒᚨᚱᛞᚨᚱᚢᛗ」



 クラリスは呪文を唱えると杖を構え、水竜の口内へ小さな火竜を放った。一瞬苦悶し首をぶるっと震わせ水竜の姿は掻き消えて、辺りが真っ暗になった。空中に張られた結果の中に閉じ込められたのだ。



「クソッ! ホーキンズめ!」

  

 甲高く喚き散らす彼女の声は魔法学アカデミーのクラスメイト等には届く筈もない。もう何度も閉じ込められた結界だというのに、一度として破れることができないホーキンズの結界を前に、能力の差を感じずにはいられなかった。どんな状況でもお腹は減るもので、さっきから鳴りっぱなしだった。以前にも同じ状況が起きて、魔法で食べ物を出そうとしたけれど、結界が張られていては効力はなかった。






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