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呼吸困難

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 患者は胸水貯留の末期がん患者でした。
その日私は準夜勤務をしていました。患者は訪室時、私に呼吸困難を訴えてきました。私は指示簿に従い対応を行いましたが呼吸困難は改善しなかったため、どう対応したらいいか分からず反対チームの先輩に相談をしました。そうしてその時できる限りの対応を行いましたが患者さんの呼吸困難は全く改善せず、訪室の度、苦しそうにされていました。私は今の状態が少しでも改善できないか私が知っている浅い知識で対応を試みましたがそんなことではやはり改善は見られませんでした。私は苦しまれる患者さんにどう対応すればいいか焦っていました。とりあえず今できる最善な方法を調べようと病棟にある医学書から呼吸困難の改善に効果がありそうな看護技術を患者さんに説明しながらやってもらい改善するか試していきました。試しては効果があるかしばらくしてから再度訪室するを繰り返しました。今から考えるとそんなことでは呼吸困難が改善するのは難しい方法ばかりでしたがその時の私にとっては精一杯のできることでした。何度色々な方法を試してみても呼吸困難は改善しない,私は焦るばかり・・そんな私に患者さんは苦しそうな表情をしながらも「少しは楽になった」と言われるのですが、はっきり言って全く効果がないのは明らかでした。そうして何もできないまま私の勤務が終了し深夜の先輩看護師に引き継ぎました。引継ぎ後しばらくして患者さんは亡くなりました。患者さんは最後に先輩の肩に手を置いて「苦しいんや」と言って亡くなったそうです。私は看護記録を書くために残っていたため、死後の処置が終わった患者の病室に家族がいないときを見計らって訪室しました。そうして顔に布をかけられた患者さんの布をとることなく最後の挨拶をしました。どうしても苦しそうにしていた患者さんの顔をもう一度見る勇気がありませんでした。そうしていると何もできなかった自分が情けなくて悔しくて涙が溢れてきました。その時、患者さんにずっと付き添われていた奥さんが戻ってこられ私の姿を見て「夫のために泣いてくださりありがとうございます」と言われました。私はそんな言葉をかけてもらう資格はないと軽く会釈をして急いで病室を立ち去りました。その時の私は『看護師は患者の前では決して涙を見せてはいけない』と考えていました。私は患者さんの家族に涙を流している姿を見られたことに、私はなんて情けない看護師なんだと思っていました。

知識がないことは情けないことです。もっと私に知識があれば患者は違った最後を迎えることが出来たのではないか・・私はその後、一人ひとりの患者さんの病状をしっかり把握していくと共に常に新しい知識は入れていかなければと思ったことを今も覚えています。
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