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World1 突き飛ばされて異世界転生したら勇者になってくれと言われたんだが
37話
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「小鹿のパイ包みです」
「小鹿…。初めて食べるな」
「タカヒコは小鹿初めてですか?とっても美味しいですよ」
ダルティフィス村長宅での夕食会。コース料理というもの自体初めての俺だが、まさか小鹿を頂くことになるとは思っていなかった。
「勇者タカヒコ、食事中ですが、少しお話よろしいですかな?」
「えぇ、どうされましたか村長」
「今日ナイト村に到着されて、疲れていらっしゃる勇者様御一行にお話しするようなことではないとは分かっていますが、何分時間も人脈もない。私たちの事をすくっていただけないでしょうか、勇者様」
「とりあえずお話を聞かせていただいてもいいですか、ダルティフィス村長」
「わかりました。では…」
そう言ってダルティフィス村長が始めた話の内容は次のようなものだった。
―――――――――――
勇者様はナイト村を覆っている岩のドームを見てどう思われましたか?
やはり驚かれましたか。初めてナイト村にお越しくださった皆さん、口をそろえてそう言われます。今回お話しするのはその岩のドームとある伝説についてです。
太古の昔、今ナイト村がある場所にはレイン村という村があったそうです。と言ってもこれも歴史書に記述があるだけですから、定かではありません。
レイン村はその名の通り、雨の降る村で、一年中雨が降っていったそうです。その雨は村の人々に恵の水をもたらし、川ができ、その周りに人々が集まって町を作り、やがてこの世界で一番の村民を抱える村へと成長していったそうです。
そんな時あの悪夢が起きました。勇者様は魔王の降臨についてはご存知ですか?
ご存知なら話が早い。その魔王軍との戦いにはこの世界の8つの種族が連合部隊を組み魔王討伐へ向かいましたが結果は惨敗。大きな被害を被ることになりました。
当時この世界で一番多くの村民を抱えていたレイン村は連合部隊にも多くの戦力を投じ協力しましたが、戦いに敗れたことで、多くの村民が戦死し、人口は最盛期の2/3まで落ち込んだともいわれています。これだけならまだよかった。レイン村に追い打ちをかける事態が起こったのです。
「もしかして、小麦の大洪水ですか?」
「アスカさんはご存知でしたか。えぇ、小麦の大洪水がレイン村を襲ったのです」
「なぁ、アスカ。小麦の大洪水っていったい何なんだ?」
「ちょうど小麦の収穫時期と重なったせいで、その年の小麦が全滅し、大飢饉になったとされている大洪水のことです」
アスカさんのおっしゃる通りです。小麦の大洪水はレイン村を中心として起こったとされています。レイン村は大洪水に襲われ、多くの死者を出しました。種族の全滅も危ぶまれたほどだったそうです。
そんな時、天から神が我々に授けてくださったのが、この岩のドームだった。これが歴史書にある記述です。
――――――――――――――――――
「この岩のドームにはそんな伝説があるんですか」
「えぇ。まぁ伝説ですから昔からこの岩のドームはあったかもしれない。レイン村という村は存在していなかったかもしれない。誰にも真相は分からずじまいですね」
「でもとっても素敵な伝説よね」
「どういうことだクラルテ?」
「だってそう思わない?神様が子供たちを守るために岩のドームを作った。そして今、こんなきれいな街がある。とってもすてきな伝説じゃない」
「ふふふっ。クラルテの言う通りですね」
「村長、どうしてその伝説を俺たちに話したんですか?」
「えぇ、この伝説には続きがあるのです」
「続き?」
「えぇ、神が授けてくださったこのドームもいつの日か崩れ落ち、再び村を大洪水が襲うであろうという伝説です」
「そんな伝説が…」
「そして歴史書の記述が正しければ、そのドームが崩れ落ちる…再び小麦の洪水が村を襲うのが明日ではないかという研究結果が私のもとに報告されたのです」
「なっ…。それが本当なら…」
「明日のお祭りの最中にドームが崩れ落ちるかもしれないてこと…」
「でも明日は、他の村からも多くのお客さんが来てお祭りを楽しむんですよね。もしも伝説通りドームが崩れ落ちたとすれば、多くの人が亡くなることになるんじゃ…」
「えぇ。そこで勇者様御一行にお力をお貸しいただきたいのです」
「つまり、崩れ落ちるドームから村を守ってほしいと、そういう事ですか」
「端的に言えばそうなりますね」
「無茶ですタカヒコ!これだけの大きさのドームを、それも多くの人を守りながら?できるはずないじゃないですか!」
「今回はアスカに賛成ね。今まで勇者の活躍は間近で見てきた。私の村の救ってくれたしね。でも今までとはわけが違う」
「今までは広く空を飛び回ったり、無差別に魔法を放つことができましたよね。でも、このナイト村は地形的にそれができません。つまり、今までの戦い方ではナイト村を守ることができないんですよ」
「勇者。あなたは勇者だけど神じゃない。できない事があるのも当然よ」
「タカヒコ、今回ばかりは私たちの言い分も聞いてください!」
「…でも」
「勇者様。アスカさんやクラルテさんの言う通りです。無茶なお願いを言い出した私が悪い。一刻も早く祭りを中止にして、近隣の村に避難を開始しましょう」
「分かりました。お手伝いします」
俺は神ではない。いつから勘違いしていたんだろうか。
テーブルの上には冷めきったパイ包が食べられることなく置かれている
===========
===========
皆さんこんばんは。浜タカシです。
さて、ツキトバの年内通常更新は今日で最後となります。ツキトバの連載は7月から始めましたので、約5か月でしたが、今年一年お付き合いいただきありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。
それではよいクリスマスとお正月をお迎えください。
新年は1月12日より通常更新を再開する予定です。また来週は番外編4を更新しますのでこちらも是非。
「小鹿…。初めて食べるな」
「タカヒコは小鹿初めてですか?とっても美味しいですよ」
ダルティフィス村長宅での夕食会。コース料理というもの自体初めての俺だが、まさか小鹿を頂くことになるとは思っていなかった。
「勇者タカヒコ、食事中ですが、少しお話よろしいですかな?」
「えぇ、どうされましたか村長」
「今日ナイト村に到着されて、疲れていらっしゃる勇者様御一行にお話しするようなことではないとは分かっていますが、何分時間も人脈もない。私たちの事をすくっていただけないでしょうか、勇者様」
「とりあえずお話を聞かせていただいてもいいですか、ダルティフィス村長」
「わかりました。では…」
そう言ってダルティフィス村長が始めた話の内容は次のようなものだった。
―――――――――――
勇者様はナイト村を覆っている岩のドームを見てどう思われましたか?
やはり驚かれましたか。初めてナイト村にお越しくださった皆さん、口をそろえてそう言われます。今回お話しするのはその岩のドームとある伝説についてです。
太古の昔、今ナイト村がある場所にはレイン村という村があったそうです。と言ってもこれも歴史書に記述があるだけですから、定かではありません。
レイン村はその名の通り、雨の降る村で、一年中雨が降っていったそうです。その雨は村の人々に恵の水をもたらし、川ができ、その周りに人々が集まって町を作り、やがてこの世界で一番の村民を抱える村へと成長していったそうです。
そんな時あの悪夢が起きました。勇者様は魔王の降臨についてはご存知ですか?
ご存知なら話が早い。その魔王軍との戦いにはこの世界の8つの種族が連合部隊を組み魔王討伐へ向かいましたが結果は惨敗。大きな被害を被ることになりました。
当時この世界で一番多くの村民を抱えていたレイン村は連合部隊にも多くの戦力を投じ協力しましたが、戦いに敗れたことで、多くの村民が戦死し、人口は最盛期の2/3まで落ち込んだともいわれています。これだけならまだよかった。レイン村に追い打ちをかける事態が起こったのです。
「もしかして、小麦の大洪水ですか?」
「アスカさんはご存知でしたか。えぇ、小麦の大洪水がレイン村を襲ったのです」
「なぁ、アスカ。小麦の大洪水っていったい何なんだ?」
「ちょうど小麦の収穫時期と重なったせいで、その年の小麦が全滅し、大飢饉になったとされている大洪水のことです」
アスカさんのおっしゃる通りです。小麦の大洪水はレイン村を中心として起こったとされています。レイン村は大洪水に襲われ、多くの死者を出しました。種族の全滅も危ぶまれたほどだったそうです。
そんな時、天から神が我々に授けてくださったのが、この岩のドームだった。これが歴史書にある記述です。
――――――――――――――――――
「この岩のドームにはそんな伝説があるんですか」
「えぇ。まぁ伝説ですから昔からこの岩のドームはあったかもしれない。レイン村という村は存在していなかったかもしれない。誰にも真相は分からずじまいですね」
「でもとっても素敵な伝説よね」
「どういうことだクラルテ?」
「だってそう思わない?神様が子供たちを守るために岩のドームを作った。そして今、こんなきれいな街がある。とってもすてきな伝説じゃない」
「ふふふっ。クラルテの言う通りですね」
「村長、どうしてその伝説を俺たちに話したんですか?」
「えぇ、この伝説には続きがあるのです」
「続き?」
「えぇ、神が授けてくださったこのドームもいつの日か崩れ落ち、再び村を大洪水が襲うであろうという伝説です」
「そんな伝説が…」
「そして歴史書の記述が正しければ、そのドームが崩れ落ちる…再び小麦の洪水が村を襲うのが明日ではないかという研究結果が私のもとに報告されたのです」
「なっ…。それが本当なら…」
「明日のお祭りの最中にドームが崩れ落ちるかもしれないてこと…」
「でも明日は、他の村からも多くのお客さんが来てお祭りを楽しむんですよね。もしも伝説通りドームが崩れ落ちたとすれば、多くの人が亡くなることになるんじゃ…」
「えぇ。そこで勇者様御一行にお力をお貸しいただきたいのです」
「つまり、崩れ落ちるドームから村を守ってほしいと、そういう事ですか」
「端的に言えばそうなりますね」
「無茶ですタカヒコ!これだけの大きさのドームを、それも多くの人を守りながら?できるはずないじゃないですか!」
「今回はアスカに賛成ね。今まで勇者の活躍は間近で見てきた。私の村の救ってくれたしね。でも今までとはわけが違う」
「今までは広く空を飛び回ったり、無差別に魔法を放つことができましたよね。でも、このナイト村は地形的にそれができません。つまり、今までの戦い方ではナイト村を守ることができないんですよ」
「勇者。あなたは勇者だけど神じゃない。できない事があるのも当然よ」
「タカヒコ、今回ばかりは私たちの言い分も聞いてください!」
「…でも」
「勇者様。アスカさんやクラルテさんの言う通りです。無茶なお願いを言い出した私が悪い。一刻も早く祭りを中止にして、近隣の村に避難を開始しましょう」
「分かりました。お手伝いします」
俺は神ではない。いつから勘違いしていたんだろうか。
テーブルの上には冷めきったパイ包が食べられることなく置かれている
===========
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皆さんこんばんは。浜タカシです。
さて、ツキトバの年内通常更新は今日で最後となります。ツキトバの連載は7月から始めましたので、約5か月でしたが、今年一年お付き合いいただきありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。
それではよいクリスマスとお正月をお迎えください。
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