となりの君は、ちょっとかっこわるいけど、かっこいい。

つちのこうや

文字の大きさ
14 / 22
4章

練習するよ

しおりを挟む
 ダンスの発表会が決まってからは、レッスンの時以外にダンスをすることが増えた。
 家の洗面所で鏡を見ながらおどってたら、腕を壁にぶつけて痛かった。
 お姉ちゃんが笑いをこらえながら氷を持ってきてくれた。でも絶対内心は、まぬけだなあって思ってるよね。
 
 そんな日々の、ある日の朝。
 今日は早く登校したら、誰もいなかった。
 かなり早く来たからね。
 わたしは机といすばっかりが目立つ教室を見回した。
 教室の後ろのほうは、結構スペースがある。

 よし、踊ってみようか。あそこなら、きっと腕をぶつけない。
 わたしは教室の後ろに行った。
 鏡はないけど、ちょっとだけ、ステージ感がある。
 うわばきでリズムをとる。
 掃除がていねいにされた床をちょっと上履きでキュッとして、わたしはおどりはじめた。
 と……その時。
「あ、梨月、おどってる」
「えっ。ひゃっ。あ……」
 なんで陽飛きちゃうわけ? はやすぎない? 朝ひまなの?
 恥ずかしくなったわたしは、ダンスはとっくにやめて、じゃがんでいた。
「なんかすごいノリノリにおどってたな」
 陽飛はそう言って、自分の席に座った。
 わたしのとなりの席なんですけどそこ。まあ自分の席に座ることはふつうのことだからいいんだけど、いいんだけどさあ。
 恥ずかしくなってて、それで、自分の席にもすわりにくいって、わたし、どうすればいいの……?
「続きは、おどらないの?」
「え? お、おどらないよっ」
「あ、そうなんだ。おれ見たいのに」
「えっ」
 でも……。
「まだ、全然おどれるようになってないし」
「あ、なにか決まったのを練習してるんだ。 もしかして、ダンス習ってるの?」
「最近習い始めた」
 そういえば、陽飛にダンス習い始めたこと言ってなかった……。
「すげー、だからうまかったのか」
「わ、わたしうまかった?」
「うん。まあでも、恥ずかしいのもわかるし。やっぱり続きは無理しなくていいよ」
「あ、うん……。でもあのっ。発表会はね、駅前のホールでやるから、よかったらきてっ」
 あれ? わたし、なんで陽飛さそってるの? ただでさえダンス始めたばっかりで大変なのに、さらにハードル上げちゃってない?
「行きたい。いつあるの?」
「えーと、七月二十三日」
「行けそうだな。見に行くわ」
 なんで? なんで行くって即答するの? だから話がポンポン進んじゃってるじゃないの。
 でも、陽飛が来てくれるのは……うれしいかも。
 うん、誘ってよかったよ。だって、バレーボールの試合だって、陽飛が誘ってくれたんだもん。
 わたしから誘うのも、変じゃないよね。
 

「え、陽飛くんさそったの? 大胆! すばらしい!」
 その日の昼休み、実来ちゃんは興奮していた。
「すばらしいって、なんか観客目線だね実来ちゃん……」
「だってねえ。ていうか、ますますダンス頑張ろうね」
「そうだね。実来ちゃんはだれか誘うの?」
「うーん。親に見られるのも恥ずかしいんだよね。あと、梨月ちゃんみたいにキュンキュンな恋もしてないし」
「ほんと~?」
 実来ちゃん、してそうだけど。
「ほんとだよ」
「そっか」
「ま、でもわたしはわたしでせっかく好きなこと見つけたんだし、ダンスは頑張るから。一緒にがんばろっ」
「うんっ」
 そうだよ。わたし、がんばらなくっちゃ。
「実来ちゃん。今から練習しない?」
「いいね! どこでやる?」
「あんまりみられないところ。屋上とかどう?」
「屋上って入れるっけ」
「今はお花植えてあって、そこは入れるよ」
「そうなんだ。じゃあそこ行こう!」
 実来ちゃんも乗り気になってくれた。
 屋上だったら、誰もいないから、集中できそう。
 でも……本番は、たくさんの人の前でやんなきゃいけないんだよね。

 屋上はすっごく風が気持ちよかった。暑いけど。夏だしそれは仕方ないね。
 久々に来た屋上。
 なんか緊張まで吹き飛ばしそうだからここで本番をやりたいくらい。
「よし、梨月ちゃん、音楽かけようか」
「え、もってるの?」
「スマホと、小さなスピーカー」
 ポケットから得意げにだす実来ちゃん。
 実来ちゃんも、学校で練習する気満々だったんだ。しかも、わたしよりも熱心に。

 実来ちゃんがセッティングして、そしてミュージックスタート。
 うん、自然におどり始められる。
 最初の方はもう体で覚えた。
 腕も指も伸ばし、リズムを体の色んな所で刻む。ステップをリズミカルに。
 よし、そっちを見なくても、目の端っこでわかる。実来ちゃんとも、ほとんど完璧にそろっている。
 いい感じだよ。
 しかも楽しい。
 わたしは、なんか今、本当に久々に、自分で自分のことを、ちょっとかっこいいかもしれないと思った。

 二回おどり終わって少しして、昼休み終了のチャイムが鳴った。
 三回目の途中のダンスを、おわりにする。屋上から教室は遠いから、すぐに戻らないと、今度は授業開始のチャイムが鳴っちゃう。
 屋上をあとにするわたしと実来ちゃん。
「はあっ。つかれた」
「ほんと、つかれたね」
 汗びっしょりだった。
 こんな状態で、陽飛のとなり、ちょっと恥ずかしいかも。着替えようか。授業に遅れちゃうかもしれないけど。
 うん、着替えよう。
「わたし汗かいたからきがえるっ」
「え、梨月ちゃん、遅刻しちゃうよ?」
「大丈夫、急ぐから」
「ほんと? じゃあ、わたしは先に教室に行ってるからね」
「うんっ」
 わたしは走った。廊下のフックから自分の体育着をとって、更衣室へ。
 体育着に急いで着替えて、教室に戻った。
 ギリギリセーフ。
 自分の席に座ると、陽飛が、
「あれ? 何で体育着なんだ?」
 って聞いてきた。
 なんで? ってねえ。ま、わたしの気持ちとかは知らないもんね。
「あ、もしかして何かこぼした?」
「ちがう。わたしそんなどんくさくないもん」
「あ、そう」
 ふーん、って感じの陽飛。
 いいもん。別に陽飛に理由を分かってもらいたいわけじゃないし。


 その次の日からは、ちゃんと体育着に着替えてからダンスをおどるか、着替えを別に持っていくかをした。
 だから体育着で陽飛の横に座ることはない。
 でも、陽飛は、わたしがダンスの練習を休み時間もしてるってことは、知ってるみたいだった。
 たぶんわたしが実来ちゃんと、「今日もやろうね~」とか話してるからだと思う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

黒地蔵

紫音みけ🐾書籍2冊発売中!
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

オバケの謎解きスタンプラリー

綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます! ――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。 小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。 結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。 だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。 知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。 苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。 いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。 「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」 結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか? そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか? 思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

処理中です...