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5章
デートに行く
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「てことでね、あの……で、デート行かない?」
「いいよ」
あ、うん。なにこの差! わたしは頑張って誘ったのに、陽飛は冷静な返事なんですけど⁈
朝の教室。
教室にいるのは二人だけ。
好きな人と二人で教室にいて、しかもお互いに好きってわかってて、付き合い始めたばっかりって、なんか本当に信じられない。いいのかな。
でも、となりの陽飛は遊園地のチケットと演奏会のチケットを眺めて、
「梨月のお姉さんにお礼を言わないとな」
って言ってて、もうどう考えても、二人で出かける流れ。
でも、うちからまあまあ近いところに遊園地があって、よかった。だって、あんまり遠かったら、お母さんとお父さん行くの絶対許してくれないし。
「そういえば宿題やった?」
わたしは陽飛にたずねた。
「まだやってない。だって明日出すでしょ。今日出すやつはないじゃん」
「たしかに。でもさ、今一緒にやらない?」
「いいな。確かに今終わらせちゃうとだいぶ気が楽だ」
陽飛はそう言って、わたしよりも早く、ドリルとノートを取り出した。
そしてしばらくして。
わたしと陽飛はすっごく近くに座っていた。
科学館訪問のバスの時くらい。
「ほら、だから、ここがこうなって、これで、カメの足が四本だから……」
「なるほど、これがつるかめ算か」
「そういうこと」
陽飛はうなずいた。
そう、今、わたし、陽飛に勉強教えてもらっちゃってるの。
陽飛、算数得意なんだよね。あんまり目立ちたがりやじゃなくて発表とかしないから、気づきにくいけど。
わたし、恋人といっしょに勉強するって、やりたいことランキングすごい上位だったから、もうますます信じられない。
わたし、本当にドキドキしかしてないよ。
陽飛の横顔はなんだかやさしげで、あとちょっとだけうれしそうにみえて。
だから、本当にデートが楽しみで、このときは、デートで泣いちゃうとは思ってもなかった。
デート当日になった。
朝、お母さんもお父さんも仕事がなくてごろごろしている。
これは週末とはいえ珍しい。二人とも仕事が忙しい人だから。
で、今回ばかりはそれがうざかった。
「まず、車に気をつけるのよ。浮かれてふらふら道路に出たらひかれるわ」
「そうだな。あと。熱中症も心配だ。水のむんだぞ水。あと、休む」
「はーい」
出かけるって言ったらこれだもんなあ。
しかも無言でもうざい人が約一名。
超絶にやにやなお姉ちゃん。
ていうか、自分の演奏会今日でしょ。そっちのほうで緊張したりしないのかな。
まあお姉ちゃんのことだからしないかなあ。
ていうことで、予定よりも少し早めに家を出た。
待ち合わせ場所は駅。
暑いので、駅の中の待合室にした。そこはクーラーが入ってるもんね。
てくてく歩いてると、もう朝なのに暑くて、やっぱりこの選択は正解だった。
駅までやって来て、切符を買ってから改札を通って、売店の横にある待合室へ。
待合室の大きめの椅子に座ると、ちょっと一息。
デートの待ち合わせって……どこかおかしい。
だって、いつも教室でとなりの席で、たくさんしゃべってる人と会うのに、まるで初めて誰かと会うかのように緊張する。
ちなみにわたしは、今日はじめて、お姉ちゃんにこの前買ってもらった大人っぽいワンピースを着ている。
なんかまだ着始めなくてもいいかなって思ってたら、今日になっちゃってた。でも今日はすごく着たい気分なの!
だってね、実はわたし、陽飛にかっこいいって言ってもらったことはあるけど、かわいいっていってもらったことはない。
かわいいって言っても欲しいなあ。なんてね。
「おはよう」
「ひょうぇ」
陽飛、はや。
「なんでそんなにびっくりしてるんだ?」
「ううん。おはようね。今日は楽しもうね」
「そりゃもちろん」
陽飛はとなりにすわった。
そして得意げに紙を広げて
「前もって、ネットで調べて遊園地のマップ印刷してきた」
「すごいっ。ありがとう」
陽飛、準備いい~。
「陽飛、どこか行きたいところあるの?」
「まず、おれが行きたいのは、脱出ゲームだな」
「脱出ゲーム? 楽しそう」
「ちなみに、ホラー系脱出ゲームだけど、怖くていやだったりしない?」
「しないよ、陽飛こそ大丈夫なの?」
「大丈夫」
陽飛はうなずいた。
じゃあまずはここだね。
そしたら次は……ジェットコースターとかかな。あ、でもこの巨大ゴムボートウォータースライダーも楽しそう。
「わたし、ここ行きたいな」
もう、二つとも指さしちゃったよね。
だって演奏会の始まる午後四時まで、たっぷり遊べるわけだし。
「よくばりだなあ。でもどっちもおれも行きたい。もうそのへんどんどん乗ろうよ」
「うん。あ、電車もうすぐ来るよ」
「うおまじか。ちょっと待ってマップたたむから」
慌てる陽飛。そんな陽飛の準備ができるのを待ってから……
「ホームいくよ陽飛っ」
わたしは陽飛の手を引いた。
「おいっ。急ぎすぎだって」
「乗り遅れたら次二十分後だよ」
「たしかに」
「だから急ぐよ」
「わかったよ」
わたしと陽飛は階段を下った。
陽飛と、手、つないじゃったね。
「いいよ」
あ、うん。なにこの差! わたしは頑張って誘ったのに、陽飛は冷静な返事なんですけど⁈
朝の教室。
教室にいるのは二人だけ。
好きな人と二人で教室にいて、しかもお互いに好きってわかってて、付き合い始めたばっかりって、なんか本当に信じられない。いいのかな。
でも、となりの陽飛は遊園地のチケットと演奏会のチケットを眺めて、
「梨月のお姉さんにお礼を言わないとな」
って言ってて、もうどう考えても、二人で出かける流れ。
でも、うちからまあまあ近いところに遊園地があって、よかった。だって、あんまり遠かったら、お母さんとお父さん行くの絶対許してくれないし。
「そういえば宿題やった?」
わたしは陽飛にたずねた。
「まだやってない。だって明日出すでしょ。今日出すやつはないじゃん」
「たしかに。でもさ、今一緒にやらない?」
「いいな。確かに今終わらせちゃうとだいぶ気が楽だ」
陽飛はそう言って、わたしよりも早く、ドリルとノートを取り出した。
そしてしばらくして。
わたしと陽飛はすっごく近くに座っていた。
科学館訪問のバスの時くらい。
「ほら、だから、ここがこうなって、これで、カメの足が四本だから……」
「なるほど、これがつるかめ算か」
「そういうこと」
陽飛はうなずいた。
そう、今、わたし、陽飛に勉強教えてもらっちゃってるの。
陽飛、算数得意なんだよね。あんまり目立ちたがりやじゃなくて発表とかしないから、気づきにくいけど。
わたし、恋人といっしょに勉強するって、やりたいことランキングすごい上位だったから、もうますます信じられない。
わたし、本当にドキドキしかしてないよ。
陽飛の横顔はなんだかやさしげで、あとちょっとだけうれしそうにみえて。
だから、本当にデートが楽しみで、このときは、デートで泣いちゃうとは思ってもなかった。
デート当日になった。
朝、お母さんもお父さんも仕事がなくてごろごろしている。
これは週末とはいえ珍しい。二人とも仕事が忙しい人だから。
で、今回ばかりはそれがうざかった。
「まず、車に気をつけるのよ。浮かれてふらふら道路に出たらひかれるわ」
「そうだな。あと。熱中症も心配だ。水のむんだぞ水。あと、休む」
「はーい」
出かけるって言ったらこれだもんなあ。
しかも無言でもうざい人が約一名。
超絶にやにやなお姉ちゃん。
ていうか、自分の演奏会今日でしょ。そっちのほうで緊張したりしないのかな。
まあお姉ちゃんのことだからしないかなあ。
ていうことで、予定よりも少し早めに家を出た。
待ち合わせ場所は駅。
暑いので、駅の中の待合室にした。そこはクーラーが入ってるもんね。
てくてく歩いてると、もう朝なのに暑くて、やっぱりこの選択は正解だった。
駅までやって来て、切符を買ってから改札を通って、売店の横にある待合室へ。
待合室の大きめの椅子に座ると、ちょっと一息。
デートの待ち合わせって……どこかおかしい。
だって、いつも教室でとなりの席で、たくさんしゃべってる人と会うのに、まるで初めて誰かと会うかのように緊張する。
ちなみにわたしは、今日はじめて、お姉ちゃんにこの前買ってもらった大人っぽいワンピースを着ている。
なんかまだ着始めなくてもいいかなって思ってたら、今日になっちゃってた。でも今日はすごく着たい気分なの!
だってね、実はわたし、陽飛にかっこいいって言ってもらったことはあるけど、かわいいっていってもらったことはない。
かわいいって言っても欲しいなあ。なんてね。
「おはよう」
「ひょうぇ」
陽飛、はや。
「なんでそんなにびっくりしてるんだ?」
「ううん。おはようね。今日は楽しもうね」
「そりゃもちろん」
陽飛はとなりにすわった。
そして得意げに紙を広げて
「前もって、ネットで調べて遊園地のマップ印刷してきた」
「すごいっ。ありがとう」
陽飛、準備いい~。
「陽飛、どこか行きたいところあるの?」
「まず、おれが行きたいのは、脱出ゲームだな」
「脱出ゲーム? 楽しそう」
「ちなみに、ホラー系脱出ゲームだけど、怖くていやだったりしない?」
「しないよ、陽飛こそ大丈夫なの?」
「大丈夫」
陽飛はうなずいた。
じゃあまずはここだね。
そしたら次は……ジェットコースターとかかな。あ、でもこの巨大ゴムボートウォータースライダーも楽しそう。
「わたし、ここ行きたいな」
もう、二つとも指さしちゃったよね。
だって演奏会の始まる午後四時まで、たっぷり遊べるわけだし。
「よくばりだなあ。でもどっちもおれも行きたい。もうそのへんどんどん乗ろうよ」
「うん。あ、電車もうすぐ来るよ」
「うおまじか。ちょっと待ってマップたたむから」
慌てる陽飛。そんな陽飛の準備ができるのを待ってから……
「ホームいくよ陽飛っ」
わたしは陽飛の手を引いた。
「おいっ。急ぎすぎだって」
「乗り遅れたら次二十分後だよ」
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わたしと陽飛は階段を下った。
陽飛と、手、つないじゃったね。
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