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5章
遊園地まんきつ
しおりを挟む小さな会話が聞こえた。
「ギブアップしてきました」
「あら、それは残念です。でも第一ステージをクリアしただけでもすごいほうですよ。またよかったらチャレンジしてくださいね」
「ん……」
そっか、わたしたちギブアップしちゃったのか……ってえええええ!
な、なんで?
目を開けたわたしはびっくり。だって、な、なんかお姫様抱っこみたいなのされちゃってるよ?
「あ、起きた。歩ける?」
「たぶん」
わたしは陽飛を見つめた。
陽飛、重くないのかな。
ていうかまずその前に、怖すぎて倒れたわたし、超ダサい! きっと陽飛、笑いながらわたしを抱えて、ギブアップボタンを押したんだ。想像ついちゃうなあ。
陽飛はわたしをゆっくりとおろした。
わたしは立ち上がる。
ああ、なんか足をつかまれてる気がする。
気のせいだよね?
わたしはいったん足元を見下ろしてから、陽飛にお礼を言った。
「ありがとね……」
「元気ならそれで大丈夫。ちなみに、あのゾンビ、ただ鏡みたいな画面に映しただけだから、心配しなくても大丈夫だからな」
「わかってるよ! でもらでもいきなり出たからびっくりしちゃったの」
もー。そんなに詳しく解説しなくったってわかってるもん。
最初の脱出ゲームで色々とつかれてしまったけど、そのあとは脱出ゲームよりは平和だった。
ジェットコースターもウォータースライダーも、スピードはあるけどホラー要素はないし、真っ暗にもならないし。
そんな感じで、順調にわたしと陽飛はデートを楽しんでいた。
手はもう、時々当たり前のようにつないでいた。だって脱出ゲームのときはかなりぎゅっとしてて、お姫様抱っこまでしてもらっちゃったんだもの。
ある意味あれをきっかけに、ちょっとお互い恥ずかしがらずに色々できるようになったのかも。
よかったよかった。
お昼ご飯は、遊園地名物らしい、ハンバーガーを食べた。のんびりベンチに座って。
「そういえば、演奏会って何時からだっけ」
陽飛がきいてきた。
「四時からだよ。だから、三時くらいに遊園地を出れば大丈夫だと思う。ホール、遊園地のとなりだもん」
雨が降ったりすると、そこのホールで遊園地のパレードをやったりもするみたい。
今日は晴れなので、今からお昼のパレードが始まる。
ちょうどわたしたちの座っているベンチの前も、着ぐるみのキャラクターたちが、たくさん通るはず。
「さらに人増えてるね~」
「ほんとだね~」
見渡せば、パレードを待って、レジャーシートをひいたりして座っているお客さんもたくさん。
そして向こうのほうからは、何やらにぎやかな音楽が聞こえてきた。きっと、パレードがスタートしたんだ。
うん、なんかかなり遊園地の中の世界に浸かっちゃってる。楽しい。
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