となりの君は、ちょっとかっこわるいけど、かっこいい。

つちのこうや

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エピローグ

となりの「君」

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 週が明けて。今は月曜日の朝だ。
「おはよう」
「あ、おはよう。今日もまためっちゃ早いね、陽飛」
「まあな」
 朝、また二人だけの教室。
 こうやって、となりの席で誰も見てないところで話す日常が、結構好き。
 となりにいる陽飛は、なにやらがさごそしている。
「今日はこれ持ってきた」
「それなに?」
「これは、ビーチボールだ。しぼんでるけどな」
「ビーチボール?なんで持ってきたの?」
「洋香がだんだん元気になってきたからさ、病院の中でちょっとした運動ができるようになったんだ。だから、ビーチボールで遊べたらいいなって。今日放課後病院行くんだけど、梨月くる?」
「うん、行く!」
 わたしはうなずいた。
「よし、試しに今ここでふくらませるか。誰もいないし教室でビーチボールで遊ぼう」
「それ本気?」
「本気だよ。やりたくない?」
「た、楽しそうではある……」
 こうなんていうか、普段できないことをするっていうのが、魅力的で、うずうずするよ……。
「よし、ならふくらませるか」
 ビーチボールのせんをあける陽飛。そして思いっきり反り返って息を吸って……。
 
 がしゃーん!

 いすごと、後ろにひっくり返った。

「あはははっ」
「何で笑うんだよ! ていうかもしかして、いまのおれ、かっこわるかった?」
「ちょっとだけ」
 わたしは笑って答えた。
 そんなわたしをみつめて、陽飛が固まってる。
「どうした?もしかしてどこかぶつけた?」
「いや、ただ、ちょっと笑ってる梨月がかわいいなって」
「え? そ、そういうの今言うときじゃないんですけど⁈」
 そんな床に寝そべって言われてもねえ。
 だけど、ちょっとうれしいな。
「手かしなよ」
「大丈夫だって、自分で起きれるから」
「えいっ」
 そうだとしても、わたしは自分から手を握りに行った。
 陽飛は自分の力でも起きようとしてたから、すごく一気に顔が近くなる。そのまま抱きしめられちゃいそうだよ。
「……あ、ありがと」
 陽飛がそう、小さく言った。
 そんな陽飛を見て、わたしはドキドキしつつ思った。
 これからもこうやって、陽飛のちょっとかっこわるいところも、かっこいいところも、色々見るんだろうなって。

 だけどわたしは、そんな、ちょっとかっこわるいけど、かっこいい君が好き。
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