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卒業式の三日後
しおりを挟む久々に学校に行ったのは、卒業式の三日後。
人のいない、春休みの学校だった。
でもまだ、六年生を送り出すための看板とか、風船のアーチとか、そういうのがいっぱいあって、なんだか悲しくなる。
どうして私は、三日後に一人ぼっちで登校しているのだろう。
一人ぼっちは今に始まったことではなくて、ずっとだった。
一年生の時からずっとだ。
いつそうなったのかは覚えていない。
とにかく私は、友達ができなくて、それで学校に行きたくなくなって、それがずっと続いていた。
確か……何かばかにされたり、いやなことをたくさん言われたような気もする。
しかしそれは、退屈な六年間の壁の向こうの事なので、もうほとんど忘れてしまった。
昇降口に入った。
ずらりと空っぽの下駄箱が並んでいた。
でも、そんな下駄箱の中に、ぽつぽつ、上履きの入った下駄箱がある。
その中の一つが、私の下駄箱だ。
前に学校に来た時に、近いうちにまた学校に来よう、と決意を固めて置いた上履き。
そのまま一カ月くらい放置してしまった。
少し汚いけど、それを履くしかないので、それを履く。
足音が自分だけで、それが悲しかった。
学校に行かないで家にいるときも、一人の足音になるときはあるけど。
大きな学校の廊下を歩く足音が、一人ぼっちであることをアピールするのは、なんだかむなしい。
それでも私はちゃんと音を響かせて、教室まで行った。
私が所属している、六年三組。
教室の扉には、結構傷がある。
いつも学校に来ている人達なら、この扉の傷を覚えたりするのかな。
わたしにとっては、初対面に感じる傷ばかりだった。
そんな傷にこんにちはをしてから、教室の扉をあける。
中には先生がいた。
担任の、畠山先生だ。
「こんにちは、森田さん」
「こんにちは」
先生とあいさつする。
まずはこんな感じ。
なんというかね、先生とはあいさつできる。
「今日は一応四人来る予定なんだ。もし一人の方がよかったりしたら、言ってね」
「あ、いえ、大丈夫です」
この学年には、私以外にも不登校気味な人がいるのだ。
だからたまに、そんな人と登校する日が被ることもある。
とはいえ四人は珍しい。
けどあれか。もう卒業で、卒業式も終わっちゃったから、この週明けに来るしかなかったんだろう。私もそうだもん。
私は先生の机を見た。
卒業証書とか、卒業アルバムとか、記念品とか、そんなものが四人分見える。
はあ。
卒業証書をもらうのは罪悪感あるし、卒業アルバムなんて、私が写ってるの、一枚もないんじゃないかな。
多分証明写真みたいなのだけだよ。
そう考えると、だいぶ悲しいね。とはいえ学校に行ってなさすぎるのだから、仕方がない。
と、ここで別の人が教室に入ってきた。
「あ、先生超久々だねー。ま、今日は来たよ私。えらくない?」
「はいこんにちは。えらいよ」
「ふっふー。卒業かあ」
えーと、入ってきたのは女の子。会ったことはある。
確か桜下ももって名前だったような気がする。
かなりマイペースな人だ。メンタルも強そう。
学校の敷地に入ってからずっと結構緊張している私とは、なんか違う。
「あ、未杏ちゃんだ。はろやっほー」
「こんにちは」
私は名前を呼ばれたので、スタンダードに返した。
私は森田未杏。先生には森田さんって呼ばれてて、桜下さんにはなぜか下の名前で呼ばれている。
下の名前で呼ばれているのは謎。というか誰にでも親しいタイプなのかな。だとしたらそういうの、結構びびっちゃうかも。とてもいい人そうなんだけどね。
桜下さんは私の隣に座ってきた。
「あー、卒業か。いや恐ろしいほど思い出ないわ」
「そうだね」
私は返した。
「……」
「……」
そこから無言になっていたら、二人の男の子が入ってきた。
「はー、だりだり」
「だり」
だりだりの言葉使いな方々がやってきた。
だりを二回使った方が中島光輝っていう人で、だりを一回使った方が、渡辺勇平っていう人だったかな。
「卒業しに来るのも一苦労だ」
「な」
そんなふうに同意しあって、私と桜下さんの後ろに座った。
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