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1.はじめてのダンジョン
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「はあ、今日からどうしようかな」
俺は夜見ユウ。18歳。高校を卒業したばかりでこれからどうしようか考えているところだ。
将来の夢とか考えずに高校まで卒業してしまったからな。今頃になって、急に焦りを感じている。
「とりあえず、ダンジョンにでも潜ってみるか。行ったことないけど」
最近では、ダンジョンで魔物を倒し、その魔物が落とした魔石などを売って生計を立てている冒険者や、ダンジョン内で自分が戦う様子を配信するダンジョン配信者という職業が人気になってきているらしい。
将来の夢を持っていない俺は何もしないのは嫌だったので、暇な時間さえあれば体術、剣術、そして魔法を鍛えていた。
今まで鍛えてきた俺がダンジョンでも戦えるのか気になっていたので、少しだけワクワクしていた。
――もし、ダンジョンでも戦えるのなら冒険者にでもなってみようかな。
そんなことを呟きながら、俺はダンジョンへと向かった。
*****
「おお~、ここがダンジョンか」
ダンジョンに辿り着くと、一切の躊躇いなく足を踏み入れた。
さすがに何も準備をせずに来たわけではない。
冒険者たちが良く使用している少し重いが耐久性に長けた靴と、街の武器屋で購入した太陽をモチーフにしたデザインの短剣、そして自分の防御力を上げてくれるという黒いマントを身に着けている。
油断は禁物とよく言うからな。
まあ、そのせいで財布の中身は厳しい状況になってしまったが。
ダンジョンで稼げば問題なしよ!
「そろそろ、魔物が出てくるころかな」
短剣を構え、慎重に足を進める。
ダンジョンの中は死と隣り合わせだとよく聞く。ダンジョンで命を落としてしまうことも珍しくない。
つい先日もどこかの国のダンジョンで自分より格上の魔物に挑んで亡くなってしまった冒険者がいたってニュースでやっていたな。
もちろんこれは他国のみの話ではなく、日本でも起こることもある出来事だ。
だから、慎重に細心の注意を払いながらダンジョン内を進む必要がある。
『クク……クキキキキキキキキキィィィィィィイイイ!!!』
「ついに現れたか」
俺の目の前に姿を現したのは薄緑色の肌のゴブリンという魔物だった。
一体だけではなく、五体ほどいた。
俺は自分でも驚いていたが、はじめて魔物を目にしたのにも関わらず、俺の中に恐怖心は一切なかった。かといって油断しているわけでもない。
頭の中で理由を探しながらも俺はゴブリンたちへと短剣を構えながら走る。
ゴブリンに短剣の切っ先が到達する直前、俺は一つの答えに辿り着いた。
「これ、俺の天職じゃね?」
『キィィィィィイアアアアアア!!!』
短剣でゴブリンを一体、引き裂くと周りにいた四体のゴブリンたちが怒り狂ったように叫び声を上げながら突進してくる。
ゴブリンたちは固まって突っ込んでくるのでこれは絶好のチャンスだと思い、右の手をゴブリンたちに向け魔法を放つ。
「【竜の息吹】」
俺がそう唱えると、太陽のように燃え盛る炎がゴブリンたちを襲い、焼けて黒い塊になった後に光の粒子となって消えた。
コトン、と何かが落ちた。
「これは、魔石か。たしか冒険者はこういうものを売って収入を得てるんだよな。つまりこれが俺のダンジョンでの初収入ってわけだ!」
俺はダンジョンで初めて魔物を倒し、収入を得たことでテンションが上がっていたが、そんな時だった。
「誰か! 助けて!!!!!!」
奥の方から女性の叫び声が聞こえてきた。
命を落としてしまう可能性もあるというのに、俺の足は考える前にその叫び声の方へと走っていた。
「大丈夫か! 今助ける!」
そこには光の束を集めたような美しい金髪の女性とその目の前に俺の二倍以上の大きさのゴリラの姿をした魔物がいた。
『ウゴウゴウゴゴォォォォォオオオオオオオオ!!!!!!』
魔物は俺を気にせず女性に襲い掛かろうとしたので、俺は急いで足の裏に魔力を集中させ魔法を発動させる。
「【加速】」
魔法を発動させたことで俺の速度は上がり、一瞬で女性の目の前までたどり着く。
そして、次の瞬間には俺の目の前に魔物の拳があった。
これは魔法を発動している暇はないと考え、俺は一度短剣で拳を弾き返して魔法を発動させる余裕を作った。
魔法を発動させ、その魔法を短剣に付与する。
「【地獄の業火】」
すると、短剣は漆黒の炎を纏う。
それを見た魔物は危機感を感じたのかもの凄い形相で勢いよく突っ込んでくる。
「くらええええええええええええ!!!」
俺の短剣は魔物の腕を切り落とし、炎が体中に燃え広がっていきその魔物は地獄のような熱さに苦しみながら消え去った。
魔物を倒した俺はすぐさま後ろの女性を確認した。
「大丈夫でしたか? 怪我はしてませんか?」
「あ、はい、おかげさまで。ありがとうございます」
「いえ、大丈夫ですよ」
女性は怪我をしていないというが念のために病院まで連れて行くことにした。
*****
そのころ、ユウが女性を助けるために魔物と戦っている姿が偶然、ダンジョン日本支部公式配信に映っていたことをまだ本人は知らない。
【ライブチャット】
:え、何この冒険者!?
:ジャイアントゴリラが一瞬でやられたぞ!!!
:それに、あの女の人って……
:てか、あの黒い炎なんだよ!
:誰かこの冒険者知ってる人いないのか
:この冒険者、今日がダンジョン初めてらしい
:は?
:は?
:は?
俺は夜見ユウ。18歳。高校を卒業したばかりでこれからどうしようか考えているところだ。
将来の夢とか考えずに高校まで卒業してしまったからな。今頃になって、急に焦りを感じている。
「とりあえず、ダンジョンにでも潜ってみるか。行ったことないけど」
最近では、ダンジョンで魔物を倒し、その魔物が落とした魔石などを売って生計を立てている冒険者や、ダンジョン内で自分が戦う様子を配信するダンジョン配信者という職業が人気になってきているらしい。
将来の夢を持っていない俺は何もしないのは嫌だったので、暇な時間さえあれば体術、剣術、そして魔法を鍛えていた。
今まで鍛えてきた俺がダンジョンでも戦えるのか気になっていたので、少しだけワクワクしていた。
――もし、ダンジョンでも戦えるのなら冒険者にでもなってみようかな。
そんなことを呟きながら、俺はダンジョンへと向かった。
*****
「おお~、ここがダンジョンか」
ダンジョンに辿り着くと、一切の躊躇いなく足を踏み入れた。
さすがに何も準備をせずに来たわけではない。
冒険者たちが良く使用している少し重いが耐久性に長けた靴と、街の武器屋で購入した太陽をモチーフにしたデザインの短剣、そして自分の防御力を上げてくれるという黒いマントを身に着けている。
油断は禁物とよく言うからな。
まあ、そのせいで財布の中身は厳しい状況になってしまったが。
ダンジョンで稼げば問題なしよ!
「そろそろ、魔物が出てくるころかな」
短剣を構え、慎重に足を進める。
ダンジョンの中は死と隣り合わせだとよく聞く。ダンジョンで命を落としてしまうことも珍しくない。
つい先日もどこかの国のダンジョンで自分より格上の魔物に挑んで亡くなってしまった冒険者がいたってニュースでやっていたな。
もちろんこれは他国のみの話ではなく、日本でも起こることもある出来事だ。
だから、慎重に細心の注意を払いながらダンジョン内を進む必要がある。
『クク……クキキキキキキキキキィィィィィィイイイ!!!』
「ついに現れたか」
俺の目の前に姿を現したのは薄緑色の肌のゴブリンという魔物だった。
一体だけではなく、五体ほどいた。
俺は自分でも驚いていたが、はじめて魔物を目にしたのにも関わらず、俺の中に恐怖心は一切なかった。かといって油断しているわけでもない。
頭の中で理由を探しながらも俺はゴブリンたちへと短剣を構えながら走る。
ゴブリンに短剣の切っ先が到達する直前、俺は一つの答えに辿り着いた。
「これ、俺の天職じゃね?」
『キィィィィィイアアアアアア!!!』
短剣でゴブリンを一体、引き裂くと周りにいた四体のゴブリンたちが怒り狂ったように叫び声を上げながら突進してくる。
ゴブリンたちは固まって突っ込んでくるのでこれは絶好のチャンスだと思い、右の手をゴブリンたちに向け魔法を放つ。
「【竜の息吹】」
俺がそう唱えると、太陽のように燃え盛る炎がゴブリンたちを襲い、焼けて黒い塊になった後に光の粒子となって消えた。
コトン、と何かが落ちた。
「これは、魔石か。たしか冒険者はこういうものを売って収入を得てるんだよな。つまりこれが俺のダンジョンでの初収入ってわけだ!」
俺はダンジョンで初めて魔物を倒し、収入を得たことでテンションが上がっていたが、そんな時だった。
「誰か! 助けて!!!!!!」
奥の方から女性の叫び声が聞こえてきた。
命を落としてしまう可能性もあるというのに、俺の足は考える前にその叫び声の方へと走っていた。
「大丈夫か! 今助ける!」
そこには光の束を集めたような美しい金髪の女性とその目の前に俺の二倍以上の大きさのゴリラの姿をした魔物がいた。
『ウゴウゴウゴゴォォォォォオオオオオオオオ!!!!!!』
魔物は俺を気にせず女性に襲い掛かろうとしたので、俺は急いで足の裏に魔力を集中させ魔法を発動させる。
「【加速】」
魔法を発動させたことで俺の速度は上がり、一瞬で女性の目の前までたどり着く。
そして、次の瞬間には俺の目の前に魔物の拳があった。
これは魔法を発動している暇はないと考え、俺は一度短剣で拳を弾き返して魔法を発動させる余裕を作った。
魔法を発動させ、その魔法を短剣に付与する。
「【地獄の業火】」
すると、短剣は漆黒の炎を纏う。
それを見た魔物は危機感を感じたのかもの凄い形相で勢いよく突っ込んでくる。
「くらええええええええええええ!!!」
俺の短剣は魔物の腕を切り落とし、炎が体中に燃え広がっていきその魔物は地獄のような熱さに苦しみながら消え去った。
魔物を倒した俺はすぐさま後ろの女性を確認した。
「大丈夫でしたか? 怪我はしてませんか?」
「あ、はい、おかげさまで。ありがとうございます」
「いえ、大丈夫ですよ」
女性は怪我をしていないというが念のために病院まで連れて行くことにした。
*****
そのころ、ユウが女性を助けるために魔物と戦っている姿が偶然、ダンジョン日本支部公式配信に映っていたことをまだ本人は知らない。
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:え、何この冒険者!?
:ジャイアントゴリラが一瞬でやられたぞ!!!
:それに、あの女の人って……
:てか、あの黒い炎なんだよ!
:誰かこの冒険者知ってる人いないのか
:この冒険者、今日がダンジョン初めてらしい
:は?
:は?
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