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6.ミノタウロス
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「サリナ、行けるか?」
「もちろんっ! 一人なら絶対に無理だけど、ユウくんと上手く連携しながら戦うことができれば絶対に勝てる!」
「行くぞ!」
俺たちは同時に走り出した。
少しだけ俺が前を先行する。俺たちを視界にとらえたミノタウロスは睨みつけながら大きな雄たけびをあげ、右腕を大きく振り上げる。
暗くて気づかなかったが、こいつの手には巨大な斧があった。
それに気づいた俺はすぐさまサリナに下がるように伝える。
「一旦下がるぞ! こいつ、武器を持ってる!」
「武器持ちの魔物ね」
早めに気づくことができたのは良かった。
もう少し気づくのが遅れていれば前を先行していた俺はその巨大な斧で体を真っ二つにされてしまっていただろう。
判断を誤っていれば命を落としていたかもしれないというのに、俺は何故か笑みを浮かべていた。
それを見たサリナは一瞬驚いた様子を見せたが、すぐにサリナも笑顔になった。
「サリナ、何故だろう。命の危険もあるのに、俺は笑ってしまっているよ」
「きっとそれはユウくんが心の底から楽しんでいるからだよ。そして、それは私も同じ。ユウくんと一緒に戦えるのが心の底から楽しい」
「それじゃ、この戦いを楽しみながら勝とう!」
「うんっ!」
サリナもこの状況に全く恐怖心を抱いていない。
俺と同じように恐怖よりも楽しさが勝っているのだ。これはこれから先、俺たちがダンジョン配信者という職業に就くうえで良い影響をもたらしてくれるはずだ。
俺はそんなことを考えながら再びミノタウロスの方へと笑みを浮かべながら足を走らせる。
無策に突っ込むわけではない。
上手くいくかどうかはやってみなければ分からないが、上手くいく可能性は十分にあると思う。
俺は先ほどと同じようにサリナより少しだけ前を先行して走る。
「ここで俺たちの連携力が試される。サリナは俺の動きをちゃんと見ていてくれ!」
「わかった!」
ミノタウロスとの距離が約五メートルほどになると、ミノタウロスは巨大な斧を振り上げる。
(今だ……ッ!)
俺は加速し、一気にミノタウロスの目の前に辿り着く。
そんな俺の行動に焦りを全く見せず、そのまま勢いよく斧が振り下ろされる。
俺はその振り下ろされる斧と同じくらいの速度で短剣を振り、互いの武器がぶつかり金属音が響き渡る。
ほとんど同じ速度でぶつけたため、俺とミノタウロスは体勢を崩して倒れそうになる。
だが、相手は一人でも俺は一人じゃない。
俺には相棒――サリナがいる!
「今だ! 行けぇっ!」
「うん! わかってる!」
サリナは俺の声を聞く前にはミノタウロスの目の前に辿り着いていた。
恐らく俺の考えていることに気が付いていたのだろう。さすがサリナだ。
体制を崩しているミノタウロスに対してサリナは剣でミノタウロスを斬る。
魔法を使わなかったのは、魔法を使っている時間がなかったからだろう。魔法を使おうとしている間にミノタウロスは体勢を整え、反撃を開始していたはずだからな。
良い判断だと思う。
斬られたミノタウロスは苦しそうに叫び声をあげる。
『グゥゥォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
叫び声を上げながら苦しそうにはしているが、まだ戦えるようでまだ俺たちを睨みつけている。
完璧に不意を突いたというのに、まだ立てるのかよ……。
やはりその頑丈そうな見た目通りその肉体はかなり高い防御力を誇っているのだろう。
「ごめん! やりきれなかった!」
「いや、これは仕方がない。俺がやっていたとしても同じ結果になっていたはずだから。サリナの攻撃のタイミングはこれ以上にないくらい完璧だったよ」
「ありがとう。やっぱり、魔法を使わないと倒せないのかな」
「多分魔法無しの攻撃だと完璧に倒すことは難しいかもしれない」
「それじゃあ、私が時間を作るからその間にユウくんは魔法を使う準備をして」
「いいのか?」
「うん、私を信じて!」
「わかった」
サリナは俺が魔法の準備をする時間を作ってくれると言った。
この強力な相手に対して時間を作るというのは容易なことではない。少しの間、ミノタウロスと一対一で戦うことになるのだから。命の危険は二人で戦っているときの何倍もある。
それでも、信じてと言ってくれた。
その時の表情は任せてくれと言わんばかりの自信に満ち溢れた表情だった。その表情をみたからこそ俺はその提案を即承諾した。
時間を作りさえすれば、俺が何とかしてくれるのだと信じているのだろう。
サリナは剣を構えながらミノタウロスに突っ込んでいく。
キンッ! キンッ! と、何度も剣と斧がぶつかり合う音が響く。
サリナが時間を作っているうちに俺は魔法を準備する。
あまり悩んでいる暇はない。サリナも何とか耐えてはいるが防戦一方のようだった。急がなければ!
まずは、相手は強靭な肉体を持っているから短剣が折れないように強度を上げよう。
「【武器強化】」
そう唱えると、短剣が薄い赤色で光を放ち、短剣の強度が上がった。
だが、それだけで倒せるほどミノタウロスは甘くない。
俺は短剣に魔力をこめ、あとは魔法を唱えるだけで発動できる状態にし、サリナが戦っているミノタウロスのもとへと加速しながら走り出した。
「もちろんっ! 一人なら絶対に無理だけど、ユウくんと上手く連携しながら戦うことができれば絶対に勝てる!」
「行くぞ!」
俺たちは同時に走り出した。
少しだけ俺が前を先行する。俺たちを視界にとらえたミノタウロスは睨みつけながら大きな雄たけびをあげ、右腕を大きく振り上げる。
暗くて気づかなかったが、こいつの手には巨大な斧があった。
それに気づいた俺はすぐさまサリナに下がるように伝える。
「一旦下がるぞ! こいつ、武器を持ってる!」
「武器持ちの魔物ね」
早めに気づくことができたのは良かった。
もう少し気づくのが遅れていれば前を先行していた俺はその巨大な斧で体を真っ二つにされてしまっていただろう。
判断を誤っていれば命を落としていたかもしれないというのに、俺は何故か笑みを浮かべていた。
それを見たサリナは一瞬驚いた様子を見せたが、すぐにサリナも笑顔になった。
「サリナ、何故だろう。命の危険もあるのに、俺は笑ってしまっているよ」
「きっとそれはユウくんが心の底から楽しんでいるからだよ。そして、それは私も同じ。ユウくんと一緒に戦えるのが心の底から楽しい」
「それじゃ、この戦いを楽しみながら勝とう!」
「うんっ!」
サリナもこの状況に全く恐怖心を抱いていない。
俺と同じように恐怖よりも楽しさが勝っているのだ。これはこれから先、俺たちがダンジョン配信者という職業に就くうえで良い影響をもたらしてくれるはずだ。
俺はそんなことを考えながら再びミノタウロスの方へと笑みを浮かべながら足を走らせる。
無策に突っ込むわけではない。
上手くいくかどうかはやってみなければ分からないが、上手くいく可能性は十分にあると思う。
俺は先ほどと同じようにサリナより少しだけ前を先行して走る。
「ここで俺たちの連携力が試される。サリナは俺の動きをちゃんと見ていてくれ!」
「わかった!」
ミノタウロスとの距離が約五メートルほどになると、ミノタウロスは巨大な斧を振り上げる。
(今だ……ッ!)
俺は加速し、一気にミノタウロスの目の前に辿り着く。
そんな俺の行動に焦りを全く見せず、そのまま勢いよく斧が振り下ろされる。
俺はその振り下ろされる斧と同じくらいの速度で短剣を振り、互いの武器がぶつかり金属音が響き渡る。
ほとんど同じ速度でぶつけたため、俺とミノタウロスは体勢を崩して倒れそうになる。
だが、相手は一人でも俺は一人じゃない。
俺には相棒――サリナがいる!
「今だ! 行けぇっ!」
「うん! わかってる!」
サリナは俺の声を聞く前にはミノタウロスの目の前に辿り着いていた。
恐らく俺の考えていることに気が付いていたのだろう。さすがサリナだ。
体制を崩しているミノタウロスに対してサリナは剣でミノタウロスを斬る。
魔法を使わなかったのは、魔法を使っている時間がなかったからだろう。魔法を使おうとしている間にミノタウロスは体勢を整え、反撃を開始していたはずだからな。
良い判断だと思う。
斬られたミノタウロスは苦しそうに叫び声をあげる。
『グゥゥォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
叫び声を上げながら苦しそうにはしているが、まだ戦えるようでまだ俺たちを睨みつけている。
完璧に不意を突いたというのに、まだ立てるのかよ……。
やはりその頑丈そうな見た目通りその肉体はかなり高い防御力を誇っているのだろう。
「ごめん! やりきれなかった!」
「いや、これは仕方がない。俺がやっていたとしても同じ結果になっていたはずだから。サリナの攻撃のタイミングはこれ以上にないくらい完璧だったよ」
「ありがとう。やっぱり、魔法を使わないと倒せないのかな」
「多分魔法無しの攻撃だと完璧に倒すことは難しいかもしれない」
「それじゃあ、私が時間を作るからその間にユウくんは魔法を使う準備をして」
「いいのか?」
「うん、私を信じて!」
「わかった」
サリナは俺が魔法の準備をする時間を作ってくれると言った。
この強力な相手に対して時間を作るというのは容易なことではない。少しの間、ミノタウロスと一対一で戦うことになるのだから。命の危険は二人で戦っているときの何倍もある。
それでも、信じてと言ってくれた。
その時の表情は任せてくれと言わんばかりの自信に満ち溢れた表情だった。その表情をみたからこそ俺はその提案を即承諾した。
時間を作りさえすれば、俺が何とかしてくれるのだと信じているのだろう。
サリナは剣を構えながらミノタウロスに突っ込んでいく。
キンッ! キンッ! と、何度も剣と斧がぶつかり合う音が響く。
サリナが時間を作っているうちに俺は魔法を準備する。
あまり悩んでいる暇はない。サリナも何とか耐えてはいるが防戦一方のようだった。急がなければ!
まずは、相手は強靭な肉体を持っているから短剣が折れないように強度を上げよう。
「【武器強化】」
そう唱えると、短剣が薄い赤色で光を放ち、短剣の強度が上がった。
だが、それだけで倒せるほどミノタウロスは甘くない。
俺は短剣に魔力をこめ、あとは魔法を唱えるだけで発動できる状態にし、サリナが戦っているミノタウロスのもとへと加速しながら走り出した。
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