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第9話「月が綺麗ですね」
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俺はアリナを連れてショッピングモールの裏の人通りが少ない通路を通って、目的の場所に辿り着いた。
きらきらと光り輝く星と月の下には煌びやかに装飾された家々。
月明かりが照らす住宅街は、夜に離れた場所から見ることで美しい夜景へと変わる。
「ここは……?」
「俺がアリナを連れてきたかったところだよ。どう? もうすぐ12月という事もあって、ほとんどの家がイルミネーションで装飾されているから、煌きらびやかでいいでしょ?」
「うんっ」
アリナは頬を赤らめながらその夜景を眺めていた。
どうやら気に入ってくれたようだ。
瞳もうるうるとしていて、横顔も整っていて月明かりに照らされる彼女の銀髪は艶めいている。
俺は夜景以上に隣に立つアリナの方に目が行ってしまっていた。
「綺麗だ……」
俺は思わず……いや、敢えて今、その言葉を口にした。
「そうだね、こんなに綺麗な夜景を見たのは久しぶりだよ!」
アリナは俺が夜景のことを綺麗だと言ったと思っているようだが、それは違うよ。
俺が綺麗だと言ったのは……
「アリナ、綺麗だよ」
俺はアリナに伝わるように言い直した。
すると、アリナは俺が夜景に対してではなく、自分に言っていたのだと気づいて、先ほどよりも顔を赤くしている。耳まで赤くなっている。
「翔くん?! 急にどうしたんですか?!」
「急にじゃないよ。俺はいつも思っているよ」
「翔くん!?!? 今日はなんだか様子が変ですよ!」
アリナが焦ってあわあわし始めた。
だが、どんなに焦ってもアリナは可愛い。
「俺たちって付き合ってるよね?」
「……え? 当り前じゃないですか!」
「だよね? だけど、こういう事を口に出して伝えたことないなぁと思って……」
まあ、口には出さなくても心の中では四六時中思っているわけだが。
「翔くん……」
「好きだよ、アリナ」
「翔くん?! 私もです!」
焦りながらもちゃんと返してくれるあたり、アリナらしい。
俺は全く恥ずかしさのないような表情で伝えたわけだが、それは表面上だけだ。今も心臓の音がやけにうるさく感じる。
焦っていたアリナが急に冷静さを取り戻し、ある提案をしてくる。
「では、これからは思ったことを必ず口に出して伝えるようにしませんか?」
なんだって……?!
ヤバい。
これは、予想外。俺は、今、気持ちを伝えることができればそれで良かったんだが、思ったことを必ず口にする? それじゃあ、俺は毎日、アリナに「好き好き」言うことになるんだぞ?
これが、形勢逆転ってやつか。
戦っていたわけじゃないけど。
「アリナ……本気?」
「はい! 本気です!」
うん、困った。
アリナ、絶対に意見変えないじゃん。ここは、折れるしかないのか……?
「アリナ、本当にいいのか?」
「……どういう意味ですか?」
「俺、毎日、アリナに好き好き言っちゃうかもよ?」
「ということは、毎日そういう事を考えてくれているんですねっ」
アリナは「むしろ言ってください!」と目で訴えかけてくる。
ここは、もう仕方がない。
俺はアリナに甘すぎるのだから。彼女の笑顔の前には世界中の男は無力になることだろう。
「あはは、アリナには敵わないな。わかったよ。それじゃあ、これからは思ったことは口に出して伝える。これを俺たちのルールにするか」
「はいっ! 恥ずかしいから言わないとかもなしですからねっ」
「うん、わかった」
こうして俺とアリナの間にルールが誕生した。
俺、大丈夫かな? 心臓もつかな?
月明かりが俺たちの立っている場所だけ、周りより強く光が照らされているように感じた。
まるで、月明かりが俺たちにスポットを当てているようだ。
俺がそんなことを考えていると、アリナがじーっと俺の顔を覗き込んでいた。
「……ん? どうした?」
「いえ、何を考えているのかなぁと思って」
「あー。月明かりが俺たちにスポットを当てているみたいだなと思ってな」
「そういう事でしたか! それじゃあ、お月様にも伝えないとですね!」
「何を?」
「私と翔くんが付き合っているということをです」
そう言うと、アリナは俺の手を握り、指を絡ませてきた。恋人つなぎだ。
アリナは俺の顔見て、満面の笑みを浮かべる。
こんな可愛い子が彼女だなんて、俺は世界一の幸せ者だな。
恋人つなぎをしているアリナの手がかなり冷えてきていたので、もうそろそろ帰ったほうが良さそうだ。
「アリナ、寒いでしょ? そろそろ、帰ろっか」
「うんっ」
アリナはやはり、寒かったようで帰宅の提案をした途端、俺にギュッと身体を寄せてきた。
ううぅぅぅっ……! 心臓が飛び出そう。
でも……幸せだ……。
「このまま翔くんにくっ付いたまま帰ってもいいですか?」
「うん、いいよ」
「やった……!」
俺とアリナは家に帰ろうとしたのだが、その場を去る直前にアリナが俺を一度だけ呼び止める。
「……翔くん」
「どうした?」
「私が今、何を考えているかわかりますか?」
「え、なんだろう。わからないなぁ」
そこには少しの間、沈黙が流れ、その後アリナが一言だけある言葉を口にした。
「月が綺麗ですね」
きらきらと光り輝く星と月の下には煌びやかに装飾された家々。
月明かりが照らす住宅街は、夜に離れた場所から見ることで美しい夜景へと変わる。
「ここは……?」
「俺がアリナを連れてきたかったところだよ。どう? もうすぐ12月という事もあって、ほとんどの家がイルミネーションで装飾されているから、煌きらびやかでいいでしょ?」
「うんっ」
アリナは頬を赤らめながらその夜景を眺めていた。
どうやら気に入ってくれたようだ。
瞳もうるうるとしていて、横顔も整っていて月明かりに照らされる彼女の銀髪は艶めいている。
俺は夜景以上に隣に立つアリナの方に目が行ってしまっていた。
「綺麗だ……」
俺は思わず……いや、敢えて今、その言葉を口にした。
「そうだね、こんなに綺麗な夜景を見たのは久しぶりだよ!」
アリナは俺が夜景のことを綺麗だと言ったと思っているようだが、それは違うよ。
俺が綺麗だと言ったのは……
「アリナ、綺麗だよ」
俺はアリナに伝わるように言い直した。
すると、アリナは俺が夜景に対してではなく、自分に言っていたのだと気づいて、先ほどよりも顔を赤くしている。耳まで赤くなっている。
「翔くん?! 急にどうしたんですか?!」
「急にじゃないよ。俺はいつも思っているよ」
「翔くん!?!? 今日はなんだか様子が変ですよ!」
アリナが焦ってあわあわし始めた。
だが、どんなに焦ってもアリナは可愛い。
「俺たちって付き合ってるよね?」
「……え? 当り前じゃないですか!」
「だよね? だけど、こういう事を口に出して伝えたことないなぁと思って……」
まあ、口には出さなくても心の中では四六時中思っているわけだが。
「翔くん……」
「好きだよ、アリナ」
「翔くん?! 私もです!」
焦りながらもちゃんと返してくれるあたり、アリナらしい。
俺は全く恥ずかしさのないような表情で伝えたわけだが、それは表面上だけだ。今も心臓の音がやけにうるさく感じる。
焦っていたアリナが急に冷静さを取り戻し、ある提案をしてくる。
「では、これからは思ったことを必ず口に出して伝えるようにしませんか?」
なんだって……?!
ヤバい。
これは、予想外。俺は、今、気持ちを伝えることができればそれで良かったんだが、思ったことを必ず口にする? それじゃあ、俺は毎日、アリナに「好き好き」言うことになるんだぞ?
これが、形勢逆転ってやつか。
戦っていたわけじゃないけど。
「アリナ……本気?」
「はい! 本気です!」
うん、困った。
アリナ、絶対に意見変えないじゃん。ここは、折れるしかないのか……?
「アリナ、本当にいいのか?」
「……どういう意味ですか?」
「俺、毎日、アリナに好き好き言っちゃうかもよ?」
「ということは、毎日そういう事を考えてくれているんですねっ」
アリナは「むしろ言ってください!」と目で訴えかけてくる。
ここは、もう仕方がない。
俺はアリナに甘すぎるのだから。彼女の笑顔の前には世界中の男は無力になることだろう。
「あはは、アリナには敵わないな。わかったよ。それじゃあ、これからは思ったことは口に出して伝える。これを俺たちのルールにするか」
「はいっ! 恥ずかしいから言わないとかもなしですからねっ」
「うん、わかった」
こうして俺とアリナの間にルールが誕生した。
俺、大丈夫かな? 心臓もつかな?
月明かりが俺たちの立っている場所だけ、周りより強く光が照らされているように感じた。
まるで、月明かりが俺たちにスポットを当てているようだ。
俺がそんなことを考えていると、アリナがじーっと俺の顔を覗き込んでいた。
「……ん? どうした?」
「いえ、何を考えているのかなぁと思って」
「あー。月明かりが俺たちにスポットを当てているみたいだなと思ってな」
「そういう事でしたか! それじゃあ、お月様にも伝えないとですね!」
「何を?」
「私と翔くんが付き合っているということをです」
そう言うと、アリナは俺の手を握り、指を絡ませてきた。恋人つなぎだ。
アリナは俺の顔見て、満面の笑みを浮かべる。
こんな可愛い子が彼女だなんて、俺は世界一の幸せ者だな。
恋人つなぎをしているアリナの手がかなり冷えてきていたので、もうそろそろ帰ったほうが良さそうだ。
「アリナ、寒いでしょ? そろそろ、帰ろっか」
「うんっ」
アリナはやはり、寒かったようで帰宅の提案をした途端、俺にギュッと身体を寄せてきた。
ううぅぅぅっ……! 心臓が飛び出そう。
でも……幸せだ……。
「このまま翔くんにくっ付いたまま帰ってもいいですか?」
「うん、いいよ」
「やった……!」
俺とアリナは家に帰ろうとしたのだが、その場を去る直前にアリナが俺を一度だけ呼び止める。
「……翔くん」
「どうした?」
「私が今、何を考えているかわかりますか?」
「え、なんだろう。わからないなぁ」
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