俺にはロシア人ハーフの許嫁がいるらしい。

夜兎ましろ

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第19話「遅刻」

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 俺は目を覚ますと、壁に掛けられている時計に目を向けた。

「9時30分……?」

 おかしいなぁ。学校には8時までに登校しないといけないはずなんだけど。すでに9時30分だって?
 そう。俺は見事に寝坊したのだった。
 隣を見てみると、アリナも気持ちよさそうに眠っている。二人そろって寝坊してしまったというわけだ。昨日眠りについた時間が遅かったから、仕方ないんだけど。

 俺は気持ちよさそうに眠っているアリナは揺する。

「アリナ、起きて」

「ん……むぅ……あと少しだけ……」

「ダメだって。もう9時30分だから……!」

「ん……9時……30分……?」

 アリナはゆっくりと目を開き、時計に目を向けた。
 時間を確認した途端、アリナは目を見開いて驚いた表情を浮かべる。急に慌てだし、騒ぎ始める。

「ええっ?! 9時30分って、もうとっくに学校始まってるじゃないですか!!!」

「俺たちは寝坊しちゃったみたいだよ。寝た時間が遅かったから、仕方ないかもね」

「翔くんは随分と冷静ですね」

「うーん、寝坊しちゃったものはもうどうしようもないからね」

「確かにそう……ですね」

 俺とアリナはベッドから起き上がると、支度を始めた。いつもよりも急ぎ目で。
 残念ながら今日は朝食を食べている時間はなさそうだ。

 歯を磨いて、顔を洗って、制服に着替える。

 支度を終えた俺とアリナは、家を出る。
 手を繋ぎながら、学校へと向かう。

「先生にどう言い訳したものか……」

「ふふ、言い訳せず、寝坊しましたと伝えたほうがいいんじゃないですか?」

「アリナがそう言うならそうしようか」

「はいっ!」

 *****

 俺とアリナは学校に着き、教室の前で立ち止まる。どうやら、今は二時間目の授業中のようだ。アリナと二人とは言っても、授業中の教室のドアを開けるのは緊張するものだ。
 隣を見てみると、アリナが大きく深呼吸していた。アリナも俺と同じ気持ちなのだろう。

 俺は勇気を出して、教室のドアに手をかける。

「アリナ、それじゃあ行こうか」

「は、はい」

 俺はドアを開ける。

 ドアを開けた瞬間、教室中の視線が俺たちに向いているのがわかった。正直、この瞬間が一番辛い。

 少しの沈黙の後、夏海が最初に声を発した。

「新婚さん、いらっしゃ~い!」

 夏海のその一言に教室中が笑いの渦に包まれた。
 だが、よく見てみると男子たちは笑っているように見えるが、目が笑っていない……というか、怒りと悲しみを抑えたような表情になってしまっている。
 何故だと思い、よく考えてみると、俺はアリナと手を繋いだままだった。夏海の言った「新婚さん、いらっしゃ~い!」っていうのは、手を繋いだまま入ったから言ったのかな。

 また、やってしまった。気を付けているつもりだったが、毎度、手を繋いでいることを忘れてしまう。なんせ、これが俺とアリナの普通なのだから。

「先生、遅れてしまい申し訳ありません」

「ごめんなさい」

 俺とアリナは先生に謝罪の言葉を告げる。
 先生は頭を掻きながら、「なんで遅刻したんだ?」と聞いてくる。

「「寝坊……です……」」

「それなら、わざわざ二人で登校してこなくてもいいんじゃ……って、そうか二人は一緒に暮らしているんだったな」

 ん?
 先生……今、なんて? クラスメイトの前でとんでもない発言しませんでした?

「「「ええええええええええええええええええええええええ!?!?」」」

 クラスメイトたちが一斉に驚きの声を上げた。
 俺とアリナの会話を聞いている人なら、もしかしたら同棲しているのかもと勘づいていたかもしれないが、そういう生徒たちも今まで半信半疑だったようだが、先生の発言のせいで、半信半疑が確信に変わったことだろう。

 というか何故、先生が俺とアリナが同棲していることを知っているんだ!? と思ったが、先生たちは生徒の住所を把握しているんだった。知っていてもおかしくはないということだ

 だからって、ここで言わなくてもいいと思うんだけど……。

 俺とアリナは繋いでいた手を外し、自分の席についた。
 席につくと前の席のカズがからかってくる。

「いやぁ~、災難だったね~」

「本当だよ。思いもしていなかった刺客がいたよ」

「この事実は、すぐに学校中に広まるだろうな。あははっ、見てみろよ男子たちの表情を。今にも泣きそうな顔してるぞ」

「勘弁してほしい」

 カズはやっぱりすごいな。
 ついこの前まではカズも周りの男子たちと同じ表情で俺のことを見ていたはずなのに。ほかの男子たちもカズみたいになってくれないかな。まあ、無理か。カズのメンタルが異常なだけだからな。

 俺はこの日、出来る限り周りの視線を気にしないようにした。
 男子たちからの視線が痛すぎたからな。

 アリナは女子たちから色々聞かれていたようで、たまにアリナの方をチラッと見たりすると、くねくねと照れながら体を揺らしていた。
 一体、何を話していたのだろう。

 次からは、絶対に寝坊しないようにしよう。
 俺は心の中でそう誓ったのだった。
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