ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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六章

奴隷 13

「えっと、何処から聞いて……」

 恐る恐る確認。
 すると、笑みを返された。

「あ、俺はここら辺で」

 不穏な空気を察したのだろう。
 おっちゃんが真っ先に逃げ出す。
 まぁ、責められない。
 当然だ。
 誰だってそうする。
 俺も逃げたいし。
 でも、流石にそれは許されそうに無い。

「いや、冗談ですよ?」
「私は何も言ってませんが、どうしてそう縮こまっておられるのです」
「なら、俺も……」
「ロルフさん、昨日のご夕飯はいかがでしたか?」
「美味しかったです!」
「何でも、ちょっと気になるところがあるご様子で」

 どうしよう。
 ……いや、俺は悪くないし。
 気になっただけ。
 毒だなんて言っていない。
 ちょっと心当たりがあるって話ただけだ。
 別に問題ない。

「ピリッとしたんで、香辛料でも使ってるのかなと」
「なるほど」
「赤字なんじゃないかなって」
「心配せずとも大丈夫ですよ。お客様には美味しいモノを食べて欲しいので」
「……」

 何故だろう。
 言ってる事自体は真っ当なのだが。
 絶妙な嘘臭さを感じる。
 商売なのだ。
 赤字でいいって事はないだろう。
 それにこの返答ねぇ。

 ふと、視線が合う。

「毒は量と言いますからね」
「え?」
「何事も取り過ぎれば毒。多少刺激的でも、量を調整すればスパイスになります」
「それって、結局毒なのでは」
「まぁ、考え方次第ですね」

 目を逸らされた。
 おい!
 まぁ、いいや。

 実際美味しかったし。
 おっちゃんも体調崩した訳じゃないっぽい。
 つまり、言葉通り。
 毒ではなくスパイスとして機能したって事。
 言ってることは正しいからな。
 確かに毒は量だ。
 って言うか、多分これ俺が女将に話したやつだな。
 そんな概念この世界で聞いた事ないし。
 結局俺のせいなのでは?
 この話広げるのはちょっと……
 そもそも。
 別にそこを突っ込みたい訳ではないのだ。

 向こうとしても。
 あまり話を広げられたくは無いのか。
 そそくさと帰ろうとする女将。
 待て。
 俺は獣っ娘の事で話があってきたのだ。
 帰られると困る。
 女将の事を呼び止める。

「あ、待ってください。女将のこと探してたんですよ」
「私の事を?」
「話があって」
「さっきの」
「いや、それは関係ないです」

 首を傾げられた。
 俺の後ろに隠れたままの獣っ娘を前に。
 まぁ、後ろから声かけられたし。
 見えてただろうけど。

「この娘の事で相談が」
「? うちは連れ込み宿ではありませんが。別に、そこまで目くじら立てることは」
「じゃなくて。働かせられないかなって」
「はい?」

 やはりそう見えるらしい。
 懐いてるからだろうな。
 いや、そういう事もするつもりではあるが。
 本題はそちらではない。

「ここの宿で、という事でしょうか?」
「そう」
「……何処で拾ったのか知りませんが、慈善活動などしてもあまり意味は」
「いや、孤児を拾ってきた訳ではなくて」
「では?」
「こいつは奴隷です」
「はぁ……、ロルフ様がお買いに?」
「正解!」
「ますます話が見えてこないのですが」
「女将さんなら想像つくと思うんだけど、俺って人の面倒とか見れないじゃないですか」
「まぁ、そういうお人ではないですね」
「だから、代わりに」
「自分で面倒も見れないのになぜお買いになったのです?」
「可愛かったし。ほら、見て」

 呆れられてしまった。
 いや、まぁ。
 自分でもあまり良くない行動だとは思うけどね。
 でも、しょうがないじゃん。
 機会逃したら。
 一生会えない可能性高いし。

 獣っ娘の脇に手を入れ、持ち上げる。
 女将と目線を合わす形。
 急でびっくりしたのか一瞬びくっと震えた。
 すぐに逸らしてしまう。
 でも、女将のほうはそのまま見つめてる。
 ね、かわいいでしょ。

「……まぁ、確かに可愛らしいとは思いますが」
「でしょ? 2度と会えなくなると思ったらつい」
「自分で面倒を見るべきだと思います」
「まぁまぁ、そう堅いこと言わずに」
「いえ、私は当然のことを言ってるだけなのですけど」

 魅力は理解してくれたらしい。
 相変わらず雇うって話には消極的だけど。
 用意していた奥の手。
 あれ、早々に消えてしまったからね。
 このまま押し切るしかない。

「給料とか要らないからさ。労働力なんて、あるだけいいでしょ?」
「えっと?」
「面倒みてくれるだけで。流石にそれよりは利益出すと思うから」
「それは、まぁ。悪くない話だと思いますが」
「あ、後は俺が泊まりにきた時だけは優先して俺の方に付けてくれると」
「そこは別に問題ないです。しかし、獣人ですか……」
「で、どう?」

 メリットは提示出来るだけ提示した。
 実際、利点は感じてくれてるみたいだし。
 後はもう女将次第。
 女将が膝をつく。
 獣っ娘に視線を合わせた形だ。

「こう言ってるけど、貴女はいいの?」
「……はい」
「本当に?」
「少なくとも、娼館よりはここの方が」
「娼館!? どういう事?」
「実はさっき、娼館の方に……」

 話し合い。
 途中からお互いが小声になった。
 女将に耳打ちしてる。

 なんか、あまり都合の良くない話が聞こえてきた様な。

「ロルフ様?」
「はい」
「娼館なんかに連れて行ってどういうおつもりで」
「いや、面倒みてくれるとこってそこしか思いつかないし」
「だからって……」

 ヤバい。

「はぁ、分かりました。私が面倒を見ます」
「おお」
「ロルフ様に任せる訳には行かなそうですから」

 ……何故だろう。
 上手く行ったはずなのに、全然嬉しくない。
 視線も。
 何処か蔑むような目を向けれらてる気が。
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