ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

文字の大きさ
52 / 276
七章

散策 8

しおりを挟む
 腹ごしらえも終わり、土産屋を一通り物色した。
 お互い温泉街をそこそこ楽しんだところで、宿に帰宅。
 別にそのまま散策を続けても良かったんだけど。
 流石にね。
 一応、港町で面識があるとはいえほぼ初対面なのだ。
 こういうのはあまり長い間一緒にいない方がいい。
 楽しかったな、とか。
 もうちょっと遊びたいな、とか。
 そんな感想が出るぐらいの時間で別れるのがベスト。

 かなり広めの、木造りの部屋。
 そこに俺1人。
 ま、1人で泊まりに来たのだから当然ではあるのだけど。
 さっきまで人と一緒にいたせいか。
 女将に、奴隷に、おっちゃんと。
 なんだかんだ、俺にしては朝から1人の時間が少なめ。
 環境音のみが耳に入る状況に少し新鮮味を感じる。

 ちなみに、奴隷を買ったので本当は1人ではないのだが。
 獣っ娘は女将に連れて行かれたまま行方不明。
 今、どこで何をしてるのかは謎である。
 仕方ないね。
 まぁ、雰囲気的に雇ってくれそうな感じだったから。
 そこは良しとしよう。
 おそらく、早めの新人研修でも受けているのだろうな。

 手を腰の後ろに当て、軽く伸びをする。
 最近凝ってきたような。
 立ってストレッチでもしたい所だけど。
 腰を下ろしてしまうと、なかなか。
 別にすぐ立ち上がれはするんだけど、ちょっと抵抗を感じる。
 結構歩き回ったしね。
 足が休みを欲しているのだ。
 そんなこんなで。
 ぼーっとしてるうちに時が過ぎていく。
 時間を無駄にしてるなって感覚。
 でも、こういう時間こそが宿に泊まった時の醍醐味だろう。

 振り返ると、温泉街に休みに来たにしては充実した1日だった気がする。
 いや、まだ日も高いまま。
 別に1日は終わって無い。
 正確に言えば、充実した半日か。

 朝風呂に入って、
 森の奥まで鉱物の採取に行き、
 スラム街で奴隷を購入。
 獣っ娘を連れて川まで歩き、
 娼館に寄って、
 提案を断られ宿に帰宅。
 その後、おっちゃんと2人で街の散策へ。

 うん、我ながら結構な運動量。
 そりゃ疲れるよね。
 一度座ったら立てなくなるのも頷ける。
 いや、体の方は全然大丈夫なんだけど。
 何たってチートがあるし。
 多分、身体能力的にこの程度の運動量なら延々と続けてても問題ない。
 それよりも精神的な方。
 前世の、チートを手に入れる前の感覚が残ってるからね。
 これだけ動けば頭が疲れたと判断する。
 実に自然な話だ。
 ただでさえ、日頃酒を飲みながらだらけてる訳だし。
 異様に安全マージン多めで設定されているのだ。

 なんの気なしに外へと視線を向ける。
 中庭が日の光に照らされている。
 しっかりと管理された。
 枝は整えられ、少量の落ち葉が地面に彩りを加える。
 何だろうか。
 別に良し悪しとか分かる人間じゃないんだけどね。
 ずっと見ていられる。

 ……

 しかし、どうしたものか。
 いや、こういう時間は醍醐味ではあるし嫌いでは無いんだけど。
 ずっとぼーっとしてるのもどうかと思って。
 温泉に行っても良いんだが。
 今、満腹だからな。
 軽く空かせてからの方がリラックス出来る。
 ま、人それぞれだろうけど。

 もともと、お楽しみの時間にしようと思っていたのだ。
 奴隷を買った時点でね。
 そもそもがそういう目的ではあるし。
 ただ、肝心の獣っ娘が居ない。
 と言うか、いつ帰ってくるのだろうか。
 不明だ。
 夜は返してくれると思いたいが……

 えっ、帰ってくるよね?
 返してくれるよね?
 女将も男が奴隷買う理由ぐらい想像ついてるだろうし。
 うん、多分大丈夫なはず。
しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主』

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。