ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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七章

散策 13

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 にしても、何故そこまでって感じだが。
 奴隷相手だ。
 止められる言われはない。
 ただ、女将の方も手伝う必要はない訳で。
 獣っ娘に頼まれたからってねぇ。

「不思議そうなお顔」
「あ、いや」

 バレてしまった。
 思いっきり顔に出てたらしい。
 そりゃそうだ。
 顔に出ない訳ない。

 だって、その通りだし。

「何故そこまでしてくれるのかなって」
「お世話を任されましたから」
「……え?」
「奴隷のお世話と言ったら、そっち方面もでしょう?」

 当たり前とでも言いたげな。
 そこまで頼んだ覚えはないが。
 そう言ってくれるなら。
 別に、訂正する必要はない。

「と言うのは、流石に建前です」
「?」
「この娘、可愛いですからね」

 女将が獣っ娘の頭をわしゃわしゃと。
 気持ちよさそう。
 ごろごろ喉を鳴らしている。

「頼られてしまっては断れません」

 そう言いながら微笑む。
 獣っ娘を撫でる手はそのまま。
 女将、猫派だったらしい。

 いや、この世界じゃペットを飼ってる人間自体ほぼ見ない。
 危ないし。
 だから、猫派も何もない気がするが。
 それでも人間が社会を築き生活をしているのだ。
 根本的な思考はそう変わらない。
 猫のペットとしての歴史は紀元前まで遡るとか何とか。

 しかも、犬とは違い狩猟には使えない。
 始めから愛玩目的。
 本能に刻まれているのだ。
 可愛いと。
 そして、可愛いは正義。
 これは人類に共通したただ一つの真理なのである。

 話がズレたが。
 つまりはそういう事。
 ただの奴隷。
 されど、断り難し。

 女将もその魅力にやられてしまった訳だ。

「それにしても、ちょっと嫉妬しちゃうわ」
「嫉妬?」
「私には積極的に来なかったのに。この娘には男らしく行くのね」

 視線、俺の下半身の方へと向く。
 改めて格好を思い出した。
 ほぼ、咥えさせてるような状態。
 確かに、無理やり迫ったように見えなくもない。
 と言うか俺が買ったわけだし。
 常識的に考えればそう。

「いや、違って。むしろ俺が襲われたと言いますか」
「え?」
「こいつが突然ズボンに手を掛けてきて」
「あら、そうなの?」

 女将の問いに獣っ娘が頷く。
 頭を少し動かしただけ。
 心なしか恥ずかしそう。
 さっきまで俺のこと追いかけ回してたくせに。
 女心ってやつはよく分からん。

「意外と肉食なのね」

 おっとりと笑っている。
 これは酷い。
 完全に全肯定である。

 というか、まだ撫でられたままだ。
 いつまで撫でてるのだろうか。
 表情が心なしか蕩けてきてるような。

「貴方も、いいもの持ってるのね」
「へ?」
「お風呂で見た事はあったけど、臨戦態勢のは初めて見るから」

 そりゃそうだ。
 なんどか立ちそうになった事はあったけど。
 流石にね。
 マナー違反もいいところだし。

「昨晩断っちゃったのもったいなかったかしら」
「昨晩?」
「あら、忘れちゃった? 背中流すって言ってくれたでしょう」
「あ、あぁ……」
「それとも、冗談だったのかしら?」
「そんな事は」

 あれ?
 この感じ、もしかして。
 ワンチャンある?

 見られるだけかと思ってたけど。
 いや、それでも十分過ぎるほど興奮するんだけど。
 それ以上も。

「年上の女性はお嫌い?」
「いえ!」
「今日はしっかり仕事終わらせてきたわよ」

 そうだ。
 昨晩、仕事があるからって断られたんだ。
 って事は?
 いや、あれはただの断る建前だったのかもしれないけど。
 どちらにしてもだ。
 わざわざ口に出したって事は。
 そういう事と理解してよろしいな?
 言っとくけど、止まれないよ。

「ぜひ!」
「むぅ……」

 痛っ。

 俺が元気よく返事をした瞬間。
 息子に痛みが。
 下を見ると。
 獣っ娘に少し歯を立てられた様子。

「こら、嫉妬させちゃダメですよ。メインはこの娘なんですから」

 そうだそうだとでも言いたげな。
 獣っ娘が頷く。
 いや、今のは女将さんのせいじゃ……

 いえ、何でもないです。
 俺が悪いです。
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