ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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八章

手紙 4

「あ、もしかしてその手紙って」

 咄嗟に口元を押さえたせいで、他がお留守に。
 机に置いていた手紙。
 それが青年の視界にバッチリ。
 一応、伏せてあるから内容は読めないだろうけど。
 宛名と送り主の名前。
 これは、しっかり見られた様子。

 いや、見られてまずいことはないんだが。
 内容はともかく。
 送り主の名前とか。
 そんなの、封筒の外側に書かれる訳で。
 隠すような物でも無いと言うか。
 配達員も見るだろうし。
 まぁ、これはギルド経由だけど。
 それこそ、ここに届くまでに結構な人数が確認したはず。
 じゃないと宛先も分からない。
 だから、それ自体には何の問題もない。
 問題は無いんだけど。

 ただ、個人的に都合が悪いというか。
 このタイミングはあまり良くない気がする。

「これ、噂のAランク冒険者から」
「……」
「ラブレター、ですか?」
「いや、違うからね」
「遠距離になったのに、一途なんですね」
「話聞いてる?」
「俺は潔く身を引きます」

 いやいや……

 何故だろう?
 話が全く通じていない気がする。
 何が潔く身を引きます、だ。
 勘違い。
 とも言い難いんだけど。
 まぁ、もう面倒いしそれでいいや。

 何故こうも男に狙われるのか。
 いや、違うはず。
 狙われてはいない。
 うん。
 少なくとも、彼は純粋な尊敬。
 そのはずだ。

 これは、そう。
 ちょっと揶揄われてるだけ。
 受付嬢の同類である。
 多分。
 そうに違いない。

 ノアの時と違って、尊敬される事への心当たり自体はあるしね。
 何年も前の事を引きずってる訳でもなく。
 理解できない理由で執着されてる訳でもない。
 助けたのは紛れもない事実。
 だから、尊敬される事自体は納得。
 これはその延長線。
 命の恩人へのお礼の延長線上でこれってのも、なかなかに謎ではあるが。

 あれ、やっぱりその片鱗が……
 俺ってそんな雰囲気出てたりするのか?
 いや大丈夫。
 理由付けは可能。
 先輩のためならその覚悟がありますよという。
 そう示しただけ。
 ノアも王都に行ってることだし。
 その代わりに、と。

 見どころのある後輩じゃないか。
 にしては、断られて落ち込んでた気もするが。
 都合の悪いところは無視だ。
 そこを気にするのは、ね。
 俺の精神衛生上よろしくない気がする。

 差別?

 俺にも好みはあるのだ。
 選ぶ権利ぐらいある。
 と言うか、そもそも異性愛者で男は対象外なのだが。
 恋愛対象は女だけ。
 ノアは……
 まぁ、例外は何事にもある。
 美形だし。
 嬢との合わせ技でガードを突破してきたに過ぎない。

 まだ納得してないけどな。
 性的同意だっけ?
 それをした覚えはない。
 あれは明らかに罠にハメられたのだ。
 俺の意思ではない。
 ここを言っても仕方ないが。

 結局流されたんだろって?
 それはそう。
 そう、なんだけど……

 それに、こいつはそもそもどっちだ?
 いや、ね。
 攻めと受けでは難易度が。
 偏見だけど。
 青年の見た目的に、尻の方が危ない気がする。
 どっちでも無しなんだけど。
 入れる方だったとしても。
 ノアと違って別に中性的でもないし。
 ザ、男って感じで。

 ……これ以上はダメだな。
 無駄にリアルな映像を想像してしまって。
 気分が悪い。
 考えない方が幸せなこともあるのだ。

 深く思考を巡らせるべきではない。
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