ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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十章

生徒 5

 このままベッドの上でダラダラとしていたい所だが。
 ホテルだからね。
 いつまでも横になってる訳にもいかない。

 それに、昨日の話受けちゃったし。
 ノアに頼まれた。
 生徒のこと見るってやつ。
 長期間しっかり面倒見るかは置いておいて。
 とりあえず一回。
 最低限やらないとね。
 約束したことぐらいはこなさないとだ。

 学園祭まで、まだしばらく時間が空く。
 その間は王都にいるのだけど。
 後回しはよくない。
 どうせ面倒がるのが目に見えてる。
 今日中に済ませてしまう予定。
 だから、どっちみちそれまでには出ないと。
 ノアにも伝えてある。
 準備の方はしてくれるはず。

 俺から声かけるのは無理だろうからね。
 例のメスガキ。
 彼女は学園の生徒なのだ。
 俺みたいな部外者が、勝手に中に入るの訳にも行かず。
 かと言って、外で待ち構えるのも通報される気がする。
 本人を見つけた所で。
 そもそも嫌われてそうだったし。
 邪険に扱われるのが落ちだ。

 ただ、愛しのノア先生の頼みならどうか?
 それなら向こうも言うことを聞いてくれるだろう。
 渋々かも知れないが。
 それで問題ない。
 俺の話に耳を傾けるかは別として。
 とりあえずノアの望み自体は叶えられるはず。

 それじゃなんの解決にもならない?
 まぁ、その通りだ。
 その通りではあるが、それでいいのだ。
 メスガキ自体はどうでも良いからね。
 俺は一旦見るだけ。
 そこから先に責任は持てない。

 とりあえずノアの気分が軽くなるならそれで十分。
 そもそも、才能があるなんて言ってたが。
 ちょっと怪しい所あるし。
 本腰入れたところで素人がどうこう出来る保証もないのだ。
 本当に才能なんてものがあったとして。
 そんなものがあるなら勝手に伸びる。
 それこそ、ノアの様に。
 ただ、素人が本を適当に纏めただけのノート。
 あいつはそれを信じてAランクにまで成り上がった訳で。
 教え方どうこうの話ではないと思う。

 でも、伸び悩んでるんでしょ?
 あのメスガキ。
 教え方次第で多少改善する可能性こそあれ。
 元々そんなもんなのではなかろうか。
 そんな気がする。

 そりゃ、貴族だしそれなりに魔力はあるのかもしれないが。
 ノアが才能はあるって言ったの。
 あれも単純な魔力量を見ての話だった可能性が高い。
 魔力があれば魔法を使う上で有利ではある。
 でも、魔法はそう単純じゃない。
 いや、正確に言えば単純じゃないらしいって所か。
 俺はチートのおかげで簡単に扱えちゃったから。
 そこら辺結構疎いのだ。
 魔法ってのは個人の感覚による部分が大きいらしく。
 単純に言えば、センスが物を言う世界。
 そこまで体系化もされてないし。
 だから、教えると言っても。
 基礎的な部分、そこを過ぎてしまえば中々難しい代物なのだ。

 この世界じゃ、技術が国を渡らない。
 例えば、ネジひとつとっても。
 国境を跨げばサイズも性能も全く異なってくるし。
 規格はバラバラ。
 当然の様に、互換性などは皆無。
 ネジですらそれなのだ。
 魔法なんてのは国力にも関わってくる部分。
 そして、それだけ重視されるってことは。
 出世競争やら権力闘争にも力を発揮してしまう。
 何ならネジも魔法に比べればまだマシ。
 魔法なんかの話になると。
 国どころか人から人へすら渡らない。
 情報が遅いってのは何度も感じてはいたけど。
 これは特に酷い。
 異世界での弊害の一種だ。

 専門的な知識。
 前世じゃ、理解できるかは別として誰でも調べること自体は出来た。
 この世界じゃそうもいかない。
 情報媒体として一応書物があるけど。
 高価だし、希少だし。
 そもそも本にも全てが書いてある訳でもない。
 弟子入りして、何年も経ってそれで初めて教えてもらえる。
 そんな秘伝のような技術もあるのだ。

 情報が独占され、研鑽されない。
 それどころか。
 定期的に失伝すらしていて。
 そうと気づかぬ再発見が無限に繰り返される。
 こんな状況で発展など望めるはずもなく。
 結果、魔法の知識は停滞気味。
 何年も昔の賢者様。
 彼が張った結界を今なお使い続けてる有様。
 これが切れたら?
 まぁ、劣化品しか張り直せないだろうな。

 前世の世界じゃ、過去の人間に凄さはあったとしても。
 基本的に上回られることはない。
 教科書に載るような偉人。
 彼らが一生かけて知り得た情報を学生のうちに知ることが出来る。
 それ以上の性能の物をなんでもない一般人が量産する事が出来る。
 他の分野でもそうだ。
 野球やサッカーの様なスポーツでも。
 将棋やチェスの様な頭脳競技でも。
 過去の人々の積み重ねがある。
 戦術も、食事も、トレーニング方法も。
 より良いものが確立され。
 過去とは比べられないほどに進歩している。
 条件が違うのだ。
 もし競えば、間違いなく近代の人間の方が圧倒する。

 修行なしで寿司屋を開いたなんて話もあったか。
 賛否をかなり呼んだ気はするが。
 それでも、実際に店を持てていたはず。
 こっちじゃ無理な話だな。
 技術が個人に依存し過ぎているのだ。
 単純に近代の方が技術が進んでるとも言えない。
 だから体系化されずに……

 ……あれ?
 何を言いたかったんだっけか。
 考え込んでるうちに、思考が明後日の方向に。
 まぁ、才能がないと厳しいよねって。
 そういう話だ。
 別にメスガキをどうにかしようって気概もないのだし。
 深く考えるだけ無駄。
 これ、いつもの悪い癖だな。

 言い訳するなら。
 ほら、昨晩はノアに搾り取られちゃったし。
 賢者タイム的な?
 無駄に小難しいことを考えてしまった。

 さて、まだ授業中だろうが。
 そろそろ行くか。
 本当はベッドから離れたくないんだけど。
 チェックアウト時間もあるからね。
 延長料金を払うのもバカらしいし。
 適当に。
 屋台で飲んでれば時間も潰れるでしょ。
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