ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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十一章

学祭 2

 にしても……、そうか。
 割引、か。
 予定通りトーナメントの方は見に行くのだが。
 そのためにわざわざ王都まで来た訳だし。
 ただ、それは別として。
 割引と言われると。
 ちょっと、惹かれるものがある。

 実際、トナメまで少し時間あるんだよな。
 他はどうしよっか。
 それがメインイベントってだけで。
 学園祭自体は結構早めの時間からやってるらしい。
 ノアに聞いた。
 もうそろそろ開始時刻だろうか?

 祭りって雰囲気は好きなんだけど。
 在学中に経験出来なかったし、興味はある。
 でも、学園祭だからなぁ。
 おそらくお酒とかは飲めないだろうし。
 大学とかなら話は別なのだろうが。
 祭りの雰囲気って酒あってこそみたいな所ある。
 まぁ、仕方ないんだけどね。
 メスガキを始め。
 小学校高学年程度の子も結構いるから。

 どちらにしても、時間はあるのだ。
 トーナメント中は酒飲めなくなるのだしここで……
 うん。
 我慢は体に良くないからね。
 昨日も一昨日も飲んではいたのだけど。
 それはそれ、これはこれ。
 俺の様な人間がこの誘惑に耐えられるはずもなく。
 というか耐える気もない。
 なら、初めからこっちきてない訳だし。

「トードーの串をひとつ」
「ん? お前さん、今日も来たのか」
「まぁね」

 すっかり常連客だ。
 王都に来てからひと月も経っていないのだけど。
 屋台のおっちゃんに覚えられてしまった。
 しょっちゅう来てるからね。
 そりゃ、こうなる。

「そういや、ここ数日屋台出してなかったけど何かあったのか?」
「……ちょっと体調崩しちまってね」
「もう大丈夫なのか」
「なんの。少し休めばしっかり元通りよ」
「それは良かった」

 別に毎日来てる訳じゃないが。
 本当よ?
 毎日の様に来ては居たが、毎日来ていた訳ではない。
 って、そんな事はいいのだ。
 これまで休んでるの見たことなかったからね。
 店が出てないのを見た時は結構驚いた。

 1人で切り盛りしてるし。
 悪化して商売できなくなったらそれこそ一大事だからね。
 休めば日銭は入らなくなる訳だが。
 目先のことばかり考えるのも問題だ。
 その判断も当然か。
 俺としてはおっちゃんの串がなくてちょっと寂しかったけどな。
 まぁ、元気そうでなにより。
 完全復活って感じ。
 とても数日前まで体調崩してた様には見えない。

「そういや今日は学園祭だな」
「だな」
「お前さん、本当に行くのか?」
「まだ疑われてたの? ちょっとショックなんだけど」
「やめといた方がいい、捕まっても知らんぞ」
「冗談」

 捕まるって。
 まぁ、いいイメージ持ってない庶民は多いか。
 学園にと言うよりは貴族に。
 身分がしっかりある世界だからね。
 文字通り住む世界が違う。
 普通はあまり気にしないものだが。
 考えても仕方ないしね。
 でも、王都にいると結構目に入るのだろう。
 特に今回見たいのがあると。
 意識はさせられるか。

 にしても、何故ここまで疑われるのか。
 なんとなく察しはつくけど。
 多分、ちょっちゅう飲み歩いてるのが原因なんだろうな。
 とても伝がある様には見えない。
 実際有ってない様なものだしな。
 ノアの勘違いが繋いだものだ。
 本来存在しないもの。
 そういう意味じゃそこまで的外れでもない。

 串をつまみに酒を呷り屋台を回る。

 流石に、少し早めに行っといたほうがいいか。
 なんとなくそう思ってきた。
 外もこれだけ楽しんげな雰囲気なのだし。
 メインイベントに入れるのだ。
 酒が無いとはいえ、その権利を使わないのは損だろう。

 貴族街の方。
 なんだかんだ、こっちは久しぶりだな。
 特に用事もなかったし。

 俺の服装だと浮く。
 少し前、スラムでも浮いたが。
 こっちは別の意味で。
 普通の服着てるんだけどね。
 極端なのだ。

「……招待状のご提示お願いします」

 学園の方に行くと、門の所で止められた。
 招待状の提示を求められる。
 そこにいるのは兵士。
 ガチガチだ。
 本当、学園祭とは思えないな。

 受付とか、生徒がやるものな気もするが。
 場所が場所だからね。
 生徒を守る為に、警備を厳重にしているのだ。
 確認作業を生徒がやるのは。
 確かに、本末転倒もいいところである。

 訝しげな視線。
 出した招待状を繁々と確認している。
 他はそこまで厳しくない。
 サッと見てる程度なのだが。
 服装のせいだろうな。

「身分証を確認してもよろしいでしょうか?」

 明か疑われてますね、これ。
 本物なのだが。
 盗んだものだとでも思われたのだろうか。
 分からんでもない。
 冷静に対応してるし。
 仕事できる人なんだろうけど。

 でも、ちょっと嫌な予感が……

 一応、身分証を出した。
 と言っても、俺の身分を証明するものなんて冒険者カードぐらい。
 しかもDランクの。
 こんな場所で信用に足る訳がないんだよな。
 偽造とかではなく。
 単純に本物を手に入れる難易度すらバカ低いのだから。

 顔が険しくなる。
 雲行きが怪しくなってきた。

 周りもヒソヒソと。
 だんだんと視線が集まってくる。
 普通と違うのは。
 人だかりにはならないって所か。
 むしろ距離を取られる。

 他に出せるものなんて学生証ぐらいしかないが。
 とっくに有効期限切れの。
 しかも卒業生でもないし。
 さらに面倒なことになるのが目に見えている。

「……あっ」

 学園の中から声が聞こえた。
 なんとなく聞き覚えのある声。
 見ると、メスガキ。

 助かっ、……ているのか?
 ふと最後の記憶がフラッシュバックした。
 絶望したかのような表情。
 どうしよう。
 ここで有る事無い事吹き込まれたら。
 まずい。
 そのまま牢屋まで一直線である。
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