ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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十二章

騒動 2

 ふんわりとした印象を受ける。
 女性だ。
 歳は少し下だろうか?
 ゆったりとしたワンピースを着ている。
 そして、何よりも。
 たわわな胸元。
 シルエットの分かりにくい服装なのに。
 それでも主張してくる。
 自然と視線が引き寄せられる。

 親しげに話しかけられはしたが。
 はて、全く心当たりがない。
 こんな女性を俺が忘れるはずないのだけど。
 気まずい。
 しばし沈黙の時間が流れる。

「知り合いなんですか?」

 すっと、ノアが戻って来た。
 今見送った所なのだが。
 俺がこの女性に話しかけられてるのを見て戻って来た様子。

 耳元でそう囁かれた。
 謎の冷や汗が。
 さっきまでの健気な様子はどこへやら。
 ちょっと怖い。
 声のトーンも心なしか低い気がする。
 秘密と浮気は違う。
 そう言いたげな雰囲気。

「い、いや……」

 ジト目。

 本当に知らないんだが?
 隠してたりとか。
 そんなつもりは全くない。

 というか、そもそも浮気じゃ無いけどな。
 付き合ってないし。
 え、付き合っては無いよね?
 勝手にそうなってる可能性。
 ……ちょっとあり得そうで困る。
 思い込み激しいし。
 ノートの事で十年以上引きずってたぐらいだし。

 余計なことは考えない方がいい。
 何も言われて無いし。
 ただなんとなくそんな雰囲気を感じ取っただけ。
 これで変なこと口走って。
 踏まなくてもいい地雷を踏むのは馬鹿らしい。
 心配だから戻ってきた。
 そう言うことで。
 わざわざ藪蛇を刺激する必要は皆無だ。

 しかし、目の前でひそひそと話始めたのに。
 俺の方を見つめたまま。
 柔らかい笑みを浮かべている。
 結構失礼なことしてると思うんだけど。
 特に気分を害しては居ないらしい。

「それで、フィオナ先生。先輩に何か用事ですか?」
「あら、ノアさんいつの間に」

 ……え?

 俺の耳元から離れたノアが、自然に声を掛けた。
 お前は知り合いだったんかい!
 フィオナ先生、ね。
 どうやら学園の関係者らしい。
 講師か、教師か。
 そこはよくわからないけど。
 なんとなく貴族っぽいし教師でもおかしくはない気がする。

 なんで俺に声掛けて来たんだ?
 昔の俺を知ってたり、とか?
 まさか。
 当時の学園で教職についていた人間なんて、もうおばあちゃんと言ってもいい年齢だろう。
 そこまで歳を取ってる様には見えない。
 耳も普通だし。
 エルフって事もなさそうだ。

 それに、俺が学園に通ってたのなんて本当に一瞬だからね。
 20年以上前の、すぐ辞めた生徒なんて。
 そんなの記憶に残るはずもなく。
 多分、あれだ。
 ノアが色々と話たんだろう。
 生徒に話してるみたいに。
 前科があるからな。
 確か、メスガキがそんな様な事を言ってた気がする。

 会った事もないのに声掛けられるレベルとか。
 どれだけ詳細に話してたんだか。

 にしても、ちょっと天然入ってそうな娘だな。
 ノアに声を掛けられて。
 今気づきましたみたいな反応。
 視界には入ってたはずだが。
 俺に気を取られて他のことが見えてなかった様子。
 そんなに興味あります?
 どんな事話たんだ。
 なんか、色々盛られてそうな予感。
 ちょっと恥ずかしいのだが。
 話ほどではないなとか思われていそうな気もする。
 メスガキにも似た様な事言われたし。
 あいつはいいとしても。
 こういうお姉様系の人に貶されると。
 結構なダメージだ。
 子供に言われるのとは話が違うと言いますか。
 勘弁して欲しいのだけど。

 メスガキは貶してくるのがデフォ見たいなとこありますし?
 優しく包み込んでくれるお姉様とは違うのだよ。

「この方が、ノアさんがいつも話してた先輩さんなんですね」

 やっぱり。

「はい。なので、ナンパなら他の人に」

 急に何を口走ってるんだ。
 失礼だろ。
 ナンパって、こんな人がするわけ。
 ……
 いや、逆に?
 おっとりしてる彼女が。
 性に奔放なビッチ。
 生徒と教師を食いまくってるとか。
 あり、だな。

 いやいや、俺の趣向な話ではなく。
 ダメだな。
 そもそもこのセンサーはぶっ壊れてるのだ。
 女なら誰でも性欲強そうに見える不良品。
 全くもって意味を成してない。

「ごめんなさい。そういうつもりではなかったのですが」

 まぁ、ですよね。
 何変な疑いかけて謝らせてるんだ。
 困ってるじゃないか。

 ナンパするにしても、ねぇ。
 そもそも俺に話しかけてくる意味がない。
 この周囲には。
 貴族やら、商人やら。
 ハイスペ男子が大勢いるのだ。
 その中で俺来るかね?
 寝取り癖とかあるならあれだけど。
 いや、ここに来てる男は既婚者だろうし。
 それも無いな。
 って、違うそうじゃ無い。
 思考がそっちよりに流されてしまう。

 ノアのせいだぞ?
 ナンパとか言い出すから。
 思考回路が。

 周りは忙しそうに動いてるのに。
 俺たちだけ何やってるんだか。

「ロルフ君は私のこと覚えてますか?」
「いや、ちょっと。ごめんなさい」
「そうですか……。同じクラスだったのですけど」
「へ?」
「何年ぶりでしょう。元気にしてましたか?」

 ……え、もしかして。
 同級生!?
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