ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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十二章

騒動 3

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 同じクラスって、つまりはそういう事だよな?
 この世界に来てから。
 学校なんて学園以外通ってないし。
 その時のクラスメイト。
 二十年以上は前だ。
 それも、学園に通ってた期間は一年も無かったはず。
 よく俺の事なんて覚えてたものだ。

 ……いや、覚えててもおかしくは無いのか?
 逆に。
 一年も経たずに辞める子とか珍しいだろうし。
 そもそも俺は庶民なのだ。
 初めから目立つ存在ではあった。
 学園の生徒なんて貴族や金持ちばかりだったからね。
 普通な事が。
 そこではある意味特殊っていうおかしな環境。
 そんな存在が、停学くらってそのまま退学か。
 確かに目立つな。
 インパクトとしてはかなりの物だ。

 こう羅列して見れば。
 俺も同級生にこんな奴いたら忘れないかもしれない。
 いや、誰1人覚えてない男の言葉なんて。
 信用皆無かもしれないが。
 実際に覚えていたかは置いておき。
 集団から、明らかに浮いてはいたのだけど。
 そういう変な奴の方が、ね。
 記憶には残る物だ。

 クラスメイトだと理解した上で。
 彼女の事は思い出せないままなのがなんとも……
 ただ、こればっかりはね。
 仕方がない。
 俺から見ればただの同級生でしかないのだ。
 そんなの覚えてる方が異常。
 二十年前に数ヶ月だけ通ってた学校だよ?
 当然の話である。
 だから、忘れてるのは俺のせいではない。

 まぁ、誰なら覚えてられたのかって聞かれると。
 誰も覚えていないのだけど。
 俺並みに目立つ子が居なかったのが悪い。
 居なかったよね?
 全く記憶にないせいで自信はないが。
 覚えないなのだから、おそらく居なかったのだろう。

 俺が特別冷たいとかではなく。
 学校のクラスメイトなんて普通はそんなもんだと思う。
 卒業して数年も経てば大抵の人間を忘れるし。
 10年以上経てば誰1人覚えてないものだ。
 前世でもそんな感じ。
 ……え、これが普通だよね?

「俺はまぁ、そこそこ元気にやってるよ」
「そっか良かったぁ」
「良かったって、当時仲良かったりとかしたっけ?」
「うんん。でも、心配だったから」
「心配?」
「はい、みんなも気にしてましたよ」
「そ、そうか」

 心配ねぇ。

 そう言ってはいるが、実際の所は不明だ。
 いや、彼女は良い人そうだし。
 素直に心配してくれていたのかもしれないけど。
 そうでもないとね。
 いくら記憶に残る生徒だったとはいえ。
 20年前のクラスメイト。
 見かけた所で声を掛けたりはしないだろう。

 ただ、他はどうだろうな。
 庶民って事もありうっすら嫌われてた自覚はある。
 ソロが基本の俺で分かるぐらい。
 つまりは結構な強度で嫌われてたって事だ。

 心配するふり。
 クラスメイトだしね。
 違和感はない。
 例え興味なくても。

「そっちは、学園を卒業して教師か」
「はいそうなんです」

 おっとりしているが、学生時代結構優秀だったのかもな。
 全く記憶にない。
 ってか、短期間しかいなかったし。
 基本単独行動だったし。
 当時の俺もおそらく知らなかった物と思われるが。
 教師なんて相当なエリートコース。
 この若さ。
 しかも女性で。
 卒業した女子は嫁入りして家の事に専念するのが殆どだろうから。
 貴族も商人も。
 学園は伴侶を探す場所でもあるのだ。
 学生時代からすでに突出した才を持っていた物と思われる。

 ちなみに、教師の経歴としては一般的。
 学園の先生なんて相当な教養が必要だからね。
 それを学べるのなんて。
 この国だとほぼほぼ学園ぐらい。
 教師の学歴は殆ど学園卒だろう。
 成績優秀なエリートが送る人生としては。
 年齢から見ても。
 モデルケースのような例に思える。
 ノアの様な。
 他で成功して外部講師として招かれるパターン。
 そっちの方が珍しいのだ。

「そうだ! この後お茶しに行きましょう」
「え?」
「私、ずっと気になってたことがあったんです」
「はぁ……」
「ロルフくんと色々お話ししたいです」

 ずっとゆったりしてたのに。
 突然、名案でも思いついたみたいに声のトーンが上がった。
 お茶へのお誘い。
 唐突で少し不意を突かれてしまった。
 満面の笑みだ。
 別にお茶しに行くことに抵抗なんかはない。
 おっさん騙して壺でも売りつけようという雰囲気でもないし。
 ただ。
 急に声を掛けてきて、飲みに誘うとか。
 言ってるセリフとしては。
 まんまというか。
 これ、やっぱりナンパだったのかもしれない。

 ってのは冗談としても。
 彼女、天然でおっとりしてるだけじゃなくて。
 ちょっと強引なところもあるようだ。
 提案に少し圧を感じなくもない。
 わがまま。
 とまではいかないか。
 久しぶりに再会したクラスメイトだもんな。
 本人曰く心配してくれてたらしいし。

 でも、と。
 周囲に視線を向ける。

「いや、忙しいんじゃないの?」
「大丈夫です」
「え、本当に大丈夫?」
「はい!」
「……」
「それに、せっかく再会出来た事ですし」

 まぁ、俺としては仮にナンパでも断る理由は無い。
 本人がいいと言うならいいのだろう。
 周りは忙しそうにしているが。
 その中で立ち話してるって状況がすでにアレだったのに。
 ここからお茶って……
 そう思わないでもない。
 学園としても色々やることはありそうな物だけど。
 でも、本人がこう言っているのだ。
 俺にそれを否定するようないわれも無いし。
 多分大丈夫なのだろう。

「それじゃあ、」
「ストップ!!」

 彼女の誘いに乗ろうとした所。
 いきなり、横からノアが抱きついてきた。
 ずっと黙ってたのに。
 突然。
 不意の出来事だったからか。
 かなりの衝撃。
 結構びっくりした。

 おい。
 不意打ちは勘弁してくれ。
 心臓に悪い。

「僕も行きます!」

 と思ったら、唐突に宣言。

 あぁ、そういう。
 下心なんてないと思うけどな。

「ノアさんも? まぁ、それは是非」

 ほら、やっぱり。
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