ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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十三章

清算 10

 何やら話がありそうな様子。
 用事もないのに先生の家に来たりしないだろうし。
 いや、メスガキの場合。
 ノア目当てとかそういう線もありえなくもないが。
 それは邪推というものだ。

 接した期間はそれほど長い訳ではないけど。
 結構良い娘だったからね。
 さっきの、間男という発言に言いたい事はありつつも。
 ストーカーとか。
 それこそ。
 本人のいない間に自宅に侵入。
 下着類を物色したりとか。
 少なくとも、そういう事をする人間ではなさそう。

 そもそも、生徒が学校の先生に恋するなんて。
 青春の1ページみたいなものだからね。
 こう言ったら怒るかもしれないが、ありふれた物だ。
 極めて健全であり。
 真っ当な思春期時代を過ごしていると言える。

 このまま、外で話している方が不都合。
 ここだと周囲の視線があるし。
 メスガキ云々以前に、今はあまり話かけられたくないのだ。

 仮に、門で待ち構えてたのがどこかの兵だったりしたらと思うと。
 ちょっと恐ろしくなるレベル。
 ノアも、今は生徒の手前抑えてる様だが。
 声を掛けられた瞬間とか。
 一瞬ではあったが、明らかに魔力が跳ね上がっていた。
 危なっかしくて仕方がない。
 とりあえず、一刻も早く家の中へ。

 家主でもない俺が誘導するのもおかしな気もするけど。
 人命がかかってるのだ。
 多少のマナー違反は見逃してほしい。
 後は、単純に。
 学園の女子生徒と男性講師。
 2人が学園外、それも自宅での密会ってのも外聞が悪いしね。

「外での立ち話も何だし……」
「え、何で先輩が」
「いいから。君も話があって来たんでしょ」
「……ま、まぁ。はい」

 2人から訝しげな視線を受けつつ。
 押し込む。

 ただでさえ視線が冷たかったのに、さらにキツくなったような。
 メスガキからも。
 どちらかといえば、これは驚きの方が強そうだが。
 似た様な視線を向けられる。

 話があって来たってんだ。
 ここが、誰の家かぐらい知ってるだろうし。
 自宅も行き来する仲なのかって事か。
 実態としては違うのだけど。
 別に、勘違いされて困る事もない。

 プラス材料を上げよう。
 実は、メスガキと同じく俺も今日来たのが初めてなんだよね。
 なんて変に希望持たせる意味もないしな。
 勘違いしておいてくれ。

 しかし、貴族街の家なだけある。
 部屋自体が広いのはもちろんだけど。
 内装も。
 これ、家具とかも結構高級そうだな。
 お高めのホテルの様な感じ。

 ……この形容詞。
 俺が使うと、連れ込み宿なんかが連想れる気が。
 一応、褒め言葉のつもりだ。
 実際近くはある。
 でも、何が違うんだろうな?
 明らかに別物。
 下品ではないというか、綺麗に纏まっている。

「実は、ノア先生に報告したいことがあって」
「あ、ちょっと待って貰ってもいい?」
「へ!? は、はい……。分かり、ました?」

 どうした?
 メスガキが何か話し始めたと思ったら。
 ノアが遮った。

 遮られるとは思わなかったのだろう。
 明らかに動揺している。

 まぁ、教師の家に押しかけたのは非常識な気もするけど。
 門の前で待ってただけだ。
 それだけ急用だったってことだろうし。
 今は王都自体が混乱してるからね。
 非常時って物。
 別に話ぐらい聞いてやってもいいんじゃねと思うが。

 ノアの表情を見るに、少し悩んでいるっぽい。
 話を聞くかどうかそれ自体を。
 もしかして、さっきの時点で追い返したかった感じ?

 え、嫌ってはなかったよね。
 むしろ、恋愛感情にこそ気づいてなかった様だけど。
 生徒としては好ましく思ってたはず。
 だから。
 わざわざ俺に指導をお願いしたんだろうし。

 俺が誘導したとはいえ、一旦家に入れたのは。
 まぁ、また面倒ごとになっても敵わんって事だろうか?
 俺の立場だけでなくノアの立場からしても。
 衛兵に声かけられたりとか。
 さっきの、ただでさえ大事になって。
 自体が拗れたのだ。
 ノアとしても繰り返したくはないのだろう。

 それはそれとして、彼女の話もなんか面倒そうと。

 いや、気持ちは分からんでもないが。
 俺が死んだふりしたせいもあって心身ともに疲れてるだろうし。
 早く休みたいのかも。
 とは言え。
 好きな相手にこうも邪気にされるの。
 流石にメスガキがかわいそうな気がしないでもない。

 そんな、自分勝手な妄想を広げつつ。
 観察してたからだろうか。
 メスガキから目を逸らして何やら考え事をしていたタイミングで。
 ふと、目が合った。
 頷く。
 いや、何が?
 アイコンタクト的なものを送ったつもりかもしれないけど。
 全く伝わってないからね?
 
 まぁ、俺が考えてることは筒抜けかもしれないが。
 さっき余計なことを考えて、実行に移す前に捕まったからね。
 この思考も。
 もしかしたらバレてるのかも。
 でも、こっちにも同じ能力を求めるのは勘弁してほしい。

「フィオナ先生」
「はい」
「ちょっとエリスのことお願いしていいですか?」
「……はい?」

 何かと思えば、突然。
 ノアがそんなことを言い出した。
 え、なんのつもり?

「先輩、行きましょうか」

 腕を引かれる。
 どゆこと?

 メスガキの事を放置して、何処に連れてくおつもりで。
 進行方向には扉。
 とりあえず、この部屋から出ようとしてるのは間違いない。
 メスガキを置いて。
 何故だろう、ちょっと嫌な予感がする。

 このドア。
 当然この家に来るのは初めて。
 間取りなど知りようもないのだが。
 見なくてもわかる。
 多分……
 寝室な気がする。

 それに、続きをするとか何とか言ってこの家まで帰ってきた様な。
 え?
 ……マジで!?

 本気で抵抗すれば全然振り払えるんだけど。
 それもちょっと。
 後ろめたいと言いますか。
 助けに来てもらったわけで。
 ついでに死んだと勘違いさせちゃったし。
 色々と借りがあるのだ。
 かといって、メスガキがいるのにそういうことになるのも。
 抵抗あると言いますか。
 結果。
 微妙な反抗をしてズルズル引きずられるという。

 ただ、無意味な反抗では無かった。
 メスガキを突然任されて。
 そのまま、停止していた女教師が再起動。
 ノアに駆け寄る。
 いいぞ!
 この暴走を止めてくれ。

(私だけお預けは酷くないです?)
(……お願い!)
(まぁ、ロルフくんノアさんの彼氏ですもんね)
(ありがとう)
(その代わり、色々と落ち着いたら)
(もちろん分かってますって)

 と思ったら、2人のヒソヒソ話。
 全部ではないが、うっすらとその内容が聞こえてくる。

 話を聞く限り、どうも俺が期待した流れではなさそうな予感。
 止める気はなさそう。
 お前ら……
 すぐ横に生徒がいるのに、なんつう会話してるんだ。
 俺と違って聴力普通だろうし。
 距離あるからほぼ聞こえてないだろうが。

 証拠に、完全にポカンとしている。

 これ、何となく読めてきたぞ。
 俺も溜まってたが。
 どうも、こいつらも結構溜まってたらしい。
 俺以上に。

 まぁ、ノアが続きなんて言い出した時点で察してはいたけどね。
 ノアの性欲の強さは身をもって知ってるのだ。
 若者だし。
 直前でおあずけくらってるし。
 女教師も。
 彼女は淫乱女教師なのだ。
 そりゃ、性欲が強くない訳ないわな。

 俺的にかなり感謝してたんだけど。
 もしかして。
 早くヤリたいから無理してでも助けに来たとか。
 無いよね?
 無いと信じたい、うん。

 ちょっと怪しいところある気がするが。
 いや、だからどうってことないんだけどね。
 ただ……うむ。
 多分、深く考えない方が吉だな。

 しかし、2人の間で合意が取れたとなると。
 抵抗は悪手。
 まぁ、しゃーないか。
 そのまま寝室に引きずり込まれる。

「あのー、ノアさん?」
「何でしょうか?」
「隣の部屋に生徒いる中、一体何をするおつもりで?」
「フィオナ先生に任せたから大丈夫です!」

 ……本当かいな。
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