ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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十三章

清算 12

「先生の事、頼ってくれてありがとね」

 ノアに褒められて嬉しそう。

 にしても、声とかかなり漏れてただろうに。
 幻滅したりとか。
 そういう反応にはならないんだな……

 憧れの人の見たくない面を散々見せられて。
 それでも変わらない恋心。
 綺麗と言えばそうだなんだけど。
 なんというか。
 ……本当に、健気なメスガキである。

 ノアとしても頼られて嬉しいのだろう。
 真面目に講師やってるっぽいしね。
 信頼されてる証拠だ。
 さっきまでその生徒がいる中、最低な行為をしていた気がするが。
 それはそれ。
 本人が気にしていないのだから仕方がない。
 強かな奴である。
 まぁ、常識知らずとも言うかもだけど。

 そして、この話俺としても渡りに船ではあるのだ。
 今回の暴動起こした犯人。
 誰かは知らないが、散々被害被ったからな。

 無駄に疑われて冤罪掛けられたり。
 脱獄しようと色々動いた結果、さらに面倒事が増えて事態が悪化したり。
 最後には初体験まで……
 後ろ2つは自業自得だろって?
 ……ま、まぁ。
 そういう説も無きにしもあらずだが。

 ともかく、そもそもこんな騒動起きなければあの事態も起こりえなかった訳だし。
 原因は犯人にあるのだ。
 つまり、奴らが悪い。
 押し付け。
 いや、きっちりと落とし前をつけなければ。

 普通だったら、こんなの魔眼使って探し出してズドンでいいんだけど。
 今回に限ってはそうも行かない。

 そもそも、元凶を知らないのだ。
 下っ端ですら。
 闘技場の地下で殺した奴以外、ほぼ心当たりがないし。
 どこまで組織立ってやってるのかも不明。

 一応、魔力結晶を持ってるってわかりやすい共通点はあるが。
 結晶化するぐらい魔力が圧縮されてて。
 元が普通じゃ利用できない代物。
 魔力はあまり漏れない。
 例の奴らの技術で活性させて魔法でも打とうとしてる段階ならともかく。
 通常時の物は、魔眼での感知が結構厳しい。

 まぁ、出来ないことはないのだが。
 なんたってチートだし?
 ただ、それを王都全域にやるのは疲れると言いますか。
 莫大な魔力を消費するのだ。
 回復するとはいえ、ちょっと勿体無いかなって。

 そもそも、火の粉飛んで来たから文句つけようって話。
 火の粉消すのにバケツリレーとか。
 あまりやりたくないと言うか。
 そこまでやるのはちょっと本末転倒かなと。
 別にめんどくさいとかじゃないよ。
 うん。
 あまり非効率的な事をやりたくないってだけで。

 他の手がかりと言えば、銀貨のネックレスだろうか。
 まぁ、これは定番のお守りみたいな物だしそもそも本当に共通点になるのかも不明。

 一文無しになった時宿代にはなる、そんな由来からのお守りだ。
 革命なんて言葉に感化されるのとか。
 大抵、貴族ではなく庶民だし。
 弱い立場の人間だ。
 別に今回の騒動関係なく持っていてもおかしくはない。

 頼りにはならないな。
 どっちみちこのネックレスに魔法的な効果は無いし。
 そもそも、魔力結晶以上に探しようもないのだが。

「それで、心当たりって?」
「……」

 え、無視?

 普通にノアとは話してたんじゃん。
 俺とノアは違うと。
 ……まぁ、異論はないけど。

「気づかないんですか?」

 俺に言ってます?
 視線合わないけど。

 多分、俺に言ってるんだろうなぁ。
 気づかないんですかって。
 俺も知ってるって事?
 全く心当たりないが。
 そもそも、俺とメスガキの共通認識なんてほぼないだろ。

「この前、連れて行ってくれた場所」
「?」
「今回の件に関係ありそうじゃないですか?」

 なんか、嫌な予感が……

 メスガキと一緒に行った場所なんて。
 ほぼ、一択なんだが。
 なぜそれが今回の件と関係あるなんて話に。

「あそこ、昔魔術師崩れが作った練習場なんですよね? 学園だけが魔法を学ぶ場所じゃない、地下にあったのは後ろ暗い事情があったからかもって」

 ……そんな事言いましたっけ?

 だが、なるほど。
 確かに筋は通っている。

 今回の事件。
 メスガキがどこまで情報を知ってるかは知らないが。
 王都内で。
 同時多発的な高位魔法の発動。
 ここまでは知ってそう。

 魔力結晶のことは知らないかな?
 となると、相当数の魔術師が動いたと考えるのがベター。
 普通に考えて集められるのは有力貴族ぐらい。
 だけど……
 当然、貴族がそれをする意味がない。

 そんな戦力有してるなら、普通に政治優位に進められるだろうし。
 仮に王国相手にクーデター起こすにしても、杜撰。
 内情を詳しく知っているのだ。
 こんな、雑な使い方はしないはず。

 なら、他国かなんらかの裏組織か?
 それも無い。

 国がやるにはリスクが高いし。
 この使い方じゃ人材が無駄にしかならないって意味だと、貴族と事情は変わらない。
 敵国の首都なんて危険地帯に送り込む必要はない。
 普通に戦争で使う方がよほど有用だ。
 
 だとしたら、裏組織って話になるんだが。
 国家を相手取ってのテロが可能な裏組織なんて。
 そんなもの、陰謀論でしかない。

 しかし、実際に暴動が起きてる以上。
 そんな事言ってる場合じゃない。
 何より、彼女はその目で見ているのだ。
 ミスリルに囲まれた謎の部屋を。

 その建設に一体どれだけの金が掛かることか。
 王族にだってそう簡単に作れない。
 それだけの力があるのなら、国に楯突いたとて。
 まぁ、そこまでの不自然はないかもしれない。

 そもそも、それ以外に心当たりもないのだろう。

 犯人像として間違ってはいない。
 間違ってはいないのだが。
 メスガキの推理にはひとつ致命的な欠陥がある。
 故に、絶対あり得ないと。
 そう言い切れてしまう。
 ……だって、あの部屋を作ったの俺だし。
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