ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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十三章

清算 14

 なんか、メスガキの間男呼びもいつの間にか定着しているし。
 これ、まずくね?
 ノアどころか女教師からも冷めた視線が……
 このままここに居るのはよろしくないと直感が告げている。

「あー、じゃあここは空振りって事で他に」

 別に、逃げるわけではない。
 これは、そう。
 犯人を捕まえないと!

 メスガキの心当たりが空振りだったわけだからね。
 手がかりなしだ。
 国のために早いとこ解決したほうがいいし。
 だから、お国のために働こうって話。

「逃げないでください」

 ただ、ノアにはお見通しだったらしい。
 離れようと動いた瞬間、捕まってしまった。

 我ながらバカだと思う。
 さっき、似たようなことして一瞬でバレたのに。
 咄嗟に同じことをしてしまった。

 声をかけられるぐらいならあれだが。
 ガッツリ腕を掴まれる。
 ここで振り払って行ったらそれこそ逃げたみたいだし。
 俺にそんなつもりはありませんよと。
 力づくで逃げる訳にもいかない。

 ノアとの関係はこれっきりって訳には行かないしね。
 体裁も大切だ。
 ボロボロ?
 ……それでもないよりマシって事で。

「どこ行こうとしてたんですか?」
「いや、彼女の心当たりもハズレだったからさ」
「それで?」
「早めに解決しないとと思って」
「すぐ動こうとしたって事は、先輩は犯人に心当たりがあると?」
「別に、そういう訳じゃないんだけど」
「……ふーん、なるほどなるほど」

 俺にそんな質問をしながら。
 含みのある笑みを浮かべ。
 言外に、なら逃げようとしてたんじゃんと言わんばかり。
 言い訳したい所だが。
 口を開いても、ボロが出る気しかしないので。
 大人しく受け入れるしかない。
 
 どこに隠し持っていたのか。
 懐からロープを取り出す。

 抵抗せず、大人しく捕まってた訳だが。
 それを良い事にゆっくりと腕を後ろに回す形で縛られ。
 ちょうどいいとばかりに。
 体ごと、近くにあった井戸。
 その支柱にくるくると巻きつけられてしまった。

「えっと、何で……」
「先輩はそこで反省しててください」
「……はい」

 俺に発言の権利はないらしい。
 さもありなん。
 縛られたまま放置される。

「ごめんね頑張ってくれたのに」
「あ、いえ」
「馬鹿な先輩のせいで。僕が代わりに責任取るからねぇ」

 メスガキを慰めると見せつつ。
 その内容としては、俺に言いたい放題である。
 まぁ、客観的に見て?
 我ながら酷いなと思わないでもないが。
 ちょっとだけ。

 メスガキがノアの言葉に目を輝かせる。
 ん?
 あぁ、なるほど。
 責任って、多分そういう意味じゃないと思うぞ。

 いや、分かってるとは思うけど。
 そういうお年頃ってやつだ。

「でも、エリスが国のことそこまで大切にしてたなんて。僕ちょっと感動しちゃった」
「……へ?」
「僕みたいな冒険者と違って、流石は貴族様だね」

 多分そういう意図じゃなかったのだろうけど。
 そう解釈されたらしい。
 なるほど、そんな純粋な思いを邪魔した俺は確かに極悪人である。

 違うと思うけどね。
 いや、その思いが無かったと言わないが。
 単純にノアにいいとこ見せたかっただけだと思う。
 表情が物語っている。

「フィオナ先生も、そうですよね?」
「……」

 女教師がすーっと目を逸らす。
 俺と目があった。
 まぁ、あんだけ露骨だったら普通気づくよね。

 特に彼女なんて、恋愛経験豊富だろうし。
 何かを訴えかけるような視線。
 こっちに助けを求めるな。
 今縛られてるんだ。
 むしろ、俺が助けてほしいぐらいてある。

「先輩が言うのには納得いかないけど、早く解決したほうがいいのは間違いないし。僕たちで解決しちゃいましょう!」

 ただ、周りを置き去りにしてノアは盛り上がってしまったらしい。
 メスガキの愛国心、これに感化されたのか。

 一通り慰めてたと思ったら。
 次は先生に標的が移り。
 最後には、そんな事言い出した。

 ノアに英雄願望ってのがあるのかは知らないが。
 酒場で酔っ払いから渡されたノート。
 アレ信じてたぐらいだしな。
 英雄譚とか、好んでてもおかしくはない。

 そもそもAランクなんて普通は辿りつかない領域だ。
 才能はあっても。
 これは、実力につけられたランクではない。
 依頼の達成実績、それを元にギルドが独自に付けている評価である。
 この若さでその地位にいるって事は。
 偉業に相当する何かを達成したってことで。
 相応の危険を犯したって証明。

 なんか、止まりそうに無いな。
 2人を連れそのまま何処かに行かんとばかり。
 あのー。
 せめて縄ほどいてってくれませんかね?

 ……

 ちゃんと反省したんで。
 なんなら、俺もちゃんと協力しますよ?

 ダメもとで提案してみたが。
 先輩連れてくと面倒ごとが起きる気しかしない、との事。
 なるほど、否定は出来ない。
 王都に来てから散々だし。
 何かしようとするたびに失敗してる気がする。

 でも、解決しようなんて。
 口で言うのは簡単だが。
 手がかりなんてあるのだろうか?

 いや、まぁ。
 事情はほぼ把握していないのだが。
 国の方で調査が進んでる可能性もなくは無いし。
 女教師がいればそことも連携効くし。
 戦力はノアがいるのだ。
 一騎当千。
 数はあまり問題にはならない。

 ……あれ?
 もしかして、案外行けるのか?

「先輩、出してください」
「え、何を?」
「手がかりになりそうな証拠品です」

 俺を置いて離れて行ったと思ったら。
 何か思い出したのか。
 不意に戻ってきた。
 そして、手を伸ばしてこんな事を。

 持ってるんでしょと言わんばかりの要求。
 まぁ、持ってるんだけど。
 ただしアイテムボックスの中だ。

 人前で出すのは……
 でも、なんか確信してそうな感じだし。

 隠してもバレる気しかしない。
 精一杯の抵抗。
 服の下に出口を作って。
 あたかも元からそこにありましたよ的な感じに。
 違和感ある気がするが、一応ね。

「ポッケに入ってる」

 魔力結晶の欠片と銀貨のネックレス。

 ネックレスの方は見覚えあるのだろう。
 目を細める。
 何となく、今回の暴動の一部犯人像が思い浮かんでそう。
 まぁ、俺と同じような予想だろう。

 ノアって今でこそAランク冒険者なんてやってるけど。
 生まれは庶民。
 全然、貴族とかじゃないからな。
 苦しみもわかるだろうし、同情もするか。

 結晶の方には首を傾げていた。
 魔力ないからな。
 明らかに不自然。

 そもそも、魔力結晶だと気づいてすらいないかも。
 証拠に、魔力結晶だと言うと目を見開く。
 そして疑惑の視線。
 なぜお前は知ってるんだと言わんばかり。
 やばい。
 余計なこと言わなきゃ良かった。

「どこにいると思います?」
「何が、」
「暴動の首謀者」

 言い方的に、実際に犯行を起こした人間は駒だと。
 そういう判断なのだろう。
 俺もそうだと思う。

 ……探せと?
 口には出していないが、視線がそう言っている。
 まぁ、どちらかと言えば。
 魔力結晶のこと口滑らしたからな。
 なんか知ってそうだと。
 そう疑われているのだろう。

 魔眼のことなんて話した覚えはないし。
 多分、そうだ。

 先輩としての信頼が失われたのに。
 俺の実力に対する信用だけは上がってるのが。
 どうしてこうなったと。

 誤魔化しは許さないとそんな視線を感じる。
 知らないのは嘘じゃない。
 でも、今のノア相手に色々隠すのは悪手だよな。
 流石に学習した。
 ボロ出して。
 知らないけど探せはするって事がバレる。
 そんな気がしてならない。

 本当はやりたくなかったんだが。
 これ以上はな。
 流石に、いろいろと危ない気がする。

 まぁ、多少勿体無いぐらいで魔力は自然回復するのだ。
 本来勿体ぶるものでもない。

 久々に頑張りますか。
 闘技場で魔法を押し流した時、それ以上の魔力を瞳に集中させる。
 魔眼。
 とは言っても、首謀者個人は知りようがない。
 分かりやすく。
 魔力結晶の位置を探す。
 いくつか集まってるような所が王都内に点在している様子。
 それ以上は直接出向くしかない。

 とりあえず、心当たりとして場所を伝える。

 満足してくれたらしく。
 頭を撫でて。
 そのまま2人の元に戻って行った。

 一瞬ドキッとしてしまった。
 これが飴と鞭ってやつか。
 ノアにはDVの素質があるのでは?
 あと、さっきまで慰められてたメスガキ。
 より沼にハマってる予感が……

 それと、縄は縛ったままなのね。
 ついでに解いてくれても良かったんだけど。
 まぁ、これはしゃーなしか。

 尊敬できる先輩だったはずが。
 気がついたら立場が逆転している様な。

 いや、俺への物とは別に嬢へ手紙出してたりと。
 王都来る前からすでに若干の怪しさを帯びていた気もするが。
 こっちで完全に破綻した。
 良かったような。
 ちょっと寂しいような。
 まぁ、変に虚勢張らずに済むと思えば。
 そう悪いものでもない、か。

 成長したな、色んな意味で。
 それに、考えてみれば。
 元から今回の暴動押し付けるつもりではあったし。
 自分でやらなくていいって事になったのだ。
 結果オーライなのでは?

 ……後は、この縄をどうした物か。
 別に特別な物でもない。
 自力で解けるけど。
 このまま待ってるのが吉かな?
 うん。
 ほどいて酒片手に待ってたりしたら。
 また怒られる気がするし。
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