ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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十四章

始末 6

「んっっ、……なんのお話してるんです?」

 俺たちが直ぐ横で話してたせいだろうか。
 起こしてしまったらしい。
 フィオナの声が聞こえた。
 まだ半覚醒って感じ。
 眠気まなこを擦りながら、言葉もどこかふわふわしている。
 元からの天然も合わさってそんなイメージあったが。
 さらに上乗せ。
 女子からは嫌われそうな気もするけど。
 男の俺としては、非常に可愛らしく思える。

 ただ、その感情とは別に。
 声が聞こえた時。
 一瞬、さっきまでの行為が走馬灯のように頭を過った。
 今度こそ死ぬのでは?
 まぁ、様子を見るにその心配はなさそう。
 ノアと同じく、体力使い果たしてそうだし。
 延長戦が始まることはないと一安心。

「さっきの俺を置いて行った後の話を聞いてたんだ。聞きそびれたから」
「あぁ、あの元騎士団長の……」

 え?
 騎士団長?

「あれ、聞いてないんですか?」

 俺が頭にハテナを浮かべてるのに気がついたらしく。
 不思議そうな顔をされてしまった。

 ノアの方に視線を向けるも。
 首を傾げる。
 覚えてないとでも言いたげである。
 はぁ。
 俺も大概だけど。
 こいつも。
 結構、他人に興味ないよね。

「……流石師弟ですね」

 これ、あからさまに馬鹿にされてる気がする。
 呆れられているのか?
 まぁ、別にいいんだけどね。
 俺がそうなのは、フィオナのこと覚えてなかった時点で薄々って感じだったろうし。
 ノアに関しても。
 なんだかんだ、同僚になって数ヶ月は経ってるだろうから。
 心当たりもあったのだろう。
 淫乱女教師に言われてると思うと少々癪だけど。

 話を聞くと、どうも今回の騒動の主犯が元騎士団長の息子だったらしい。
 長男ではなく次男坊。
 ノアにもその時伝えたらしいが……
 何故か気が立ってたらしく、あまり聞いてなかったようだ。
 なんで気が立ってたんでしょうね。
 俺はその直前に何故か井戸に縛り付けられ。
 置いてかれた訳だけど。
 全然心当たりがない。
 果たして敵に向けた殺気だったのか、別の理由か。
 ……まぁ、もう過ぎたことだ。
 あまり細かいことを気にしても仕方がない。
 だから、別にノアの方を見ないようにしてる訳ではなく。
 単に話を真剣に聞いてるだけ。
 うん。
 背後からの視線なんてものは感じていないし、そんなものは存在しない。

 最近まで行方不明だったらしいが。
 まさか、王国を守る騎士団の長の息子がこんな騒動を起こすとは。
 犯人像として。
 ちょっと想像の埒外だった。
 ただ、フィオナが言うには。
 確かに黒幕として予想外ではあったけど。
 納得はしたらしい。
 こんな大それた事が出来るとは思っていなかったってだけで。
 力があればやりかねない人物ではあったと。

 魔力結晶からの魔力の抽出なんて離れ業が可能なぐらいだ。
 昔からその方面の才能があったのだろう。
 幸か不幸か。
 これが普通の家だったら天才で済んだのだが。
 彼が生まれたのは、代々騎士団の要職について来た名家。
 しかも、今代の当主は騎士団長と来た。
 都合よく剣も魔法も天才とはいかず。
 剣より魔法に傾倒する彼は家でも浮き気味だったらしい。
 学園ってのは狭い社会だ。
 入学してくるのは、ほぼ貴族。
 居ても富豪の子供程度。
 これが木端貴族の話ならそこまで影響はなかったのかもしれないが。
 騎士団長って立場の影響力は絶大。
 まぁ、特に父親が何かしたって事もないのだろうけど。
 内情が漏れ。
 その噂は公然の秘密と化した。
 結果学園でも家と同じような状態、完全に孤立したらしい。

 孤立で済んでいれば、ここまで拗らせることも無かったのかも知れない。
 仮にも騎士団長の子供だし。
 周りも対応に困ってただけで、特にいじめられていた訳でもないのだから。
 でも、その後。
 彼の運命を決定付ける出来事が起きた。
 庶民に決闘を仕掛けて返り討ちに。
 ただの貴族でも大恥だが。
 騎士団長の息子が庶民に負けたのだ。
 居場所が完全になくなり。
 学園を退学。
 そのまま逃げるように家を出て、貴族社会から姿を消したって話だ。

 そんな奴のこと、よくこんな詳しく知ってるよな。
 犯人が学生時代の話って事は。
 これ、結構昔の話だろ?
 家を出てそのままってことは、もう勘当されたような物だろうし。
 役立つ機会も皆無。
 いや、今回は偶々役に立ったみたいだけど。
 それにしても、凄い庶民も居たものだ。
 騎士団長の息子を返り討ちねぇ……
 なーんて、他人事な反応をすると。
 本気で言ってますかと、フィオナからジト目が帰ってきた。

 ……いや、流石に察しはついてます。
 はい。
 そんな庶民が学園に何人も通うはずもなく。
 多分、俺ですよね。
 全然覚えてないけど。
 影響与えすぎでは?
 数ヶ月しか通っていなかったのに。

 フィオナがやたら詳しく覚えてたのも。
 単純に、同時期に学園に通ってたからって事なのだろう。
 決闘の相手が俺だとなると。
 同学年ではないだろうが。
 公然の秘密と化した噂、これが他の学年にまで広まってたんだな。
 それを彼女も聞いた事があっただけ。
 その後の騒動についても。
 まぁ、そりゃ噂になるよなって内容だしね。

 あっ、闘技場を使ったのこの時か。
 試験以外に。
 もう一度だけ使った事があったのは覚えていたのだけど。
 てっきり授業かなんかだと思っていたのだが。
 それがこれだったのだ。
 まさか決闘なんて事やってたとは、驚きである。
 いや、多分だが。
 詳細は思い出せない。
 でも、おそらくそうだったのだろう。

 ちなみに、俺に決闘吹っかけた理由までは知らないらしい。
 まぁ、本人が吹聴する訳ないわな。
 俺も思いっきり浮いてたし。
 どっちからも広まらなかったって訳だ。
 俺を退学にしようと冤罪ふっかけてきた奴らのお仲間かとも思ったけど。
 孤立してたってんなら違うんだろうな。
 何となく察しは付くが。
 こいつは学園で浮いていたのだ。
 俺と同じく。
 理由は違えど同類ではあった。
 ただ、その理由が違うってのがよろしくなかったのだろう。
 肩書とのギャップ。
 そこから上で浮いて下で浮いてと、綺麗に別れた結果近づいたのだ。
 だから……
 本来気にする必要もない相手が。
 過剰に気になってしまったのかもしれない。
 おそらく冤罪ふっかけて来た奴らのお仲間ではない。
 でも、決闘ふっかけてきた理由は同じ。

 それに、俺はどうやら一目置かれてたらしいし。
 生徒からではなく。
 担任から。
 生徒1人辞めた如きで自分も退職するんだからよっぽどだ。
 それを目ざとく感じ取ってしまったのだろう。
 大人から煙たがられる自分との差を。
 それで気に食わなかったと、多分そういう事だ。

「本当に覚えてないんですね」
「嬉しそうだな」
「私が印象薄かった訳じゃないって分かったので」
「……そ、そうか」

 それって嬉しいのか?
 微妙な所だが。
 機嫌が良くなるなら、まぁ別にいっか。

 と言うか……、あれ?
 俺が学園を停学になったのって、こいつも一因なのでは。
 これで勝った結果。
 元々目立ってたのが、さらに目立ち。
 反感を買って。
 冤罪ふっかけられるきっかけになった説。
感想 69

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