ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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十四章

始末 9

 チュンチュン、チュンチュン

 うっすらと目を開ける。
 窓の外からは鳥の囀りが聞こえ、柔らかい日差しが部屋に差し込む。
 眩しい。
 ……もう朝か。
 どうやら、すっかり日が昇ってる様子。
 自然と目が覚めた。

 気持ちのいい朝だ。
 このまますぐに起きてしまうのも勿体無い気がして。
 この、言わばモラトリアムな時間。
 それを目一杯楽しもうと。
 意図的に体から力を抜きだらりと全身をベッドに任せる。
 重力を全身で感じるような形だ。
 元々、寝っ転がってるのだから。
 身を完全に預けてる訳だが。
 意図して行うとまた違った心地よさがある。
 朝、起きる時間が決まってるような人間には味わえない。
 最高級の贅沢だと思う。

 そのまま、寝返りでもうとうかと手を横に伸ばすと。
 柔らかなモノが指にふれた。
 あれ?
 毛布とも枕とも違うような手触り。
 ほんのり暖かく、自重で沈み包み込まれるような柔らかさ。
 非常に触り心地のいい物体である。

「ロルフくんの変態」

 声が聞こえた方に視線を向けると。
 山があった。
 そして、その頂には俺の手の平が……
 山と手を遮るものは何もない。
 そりゃ、触り心地も良いはずである。
 思い出した。
 昨日、なんだかんだあって。
 そのまま。
 3人同じベッド寝ていたんだったか。

 にしても、改めてでっかいなぁ。
 いや、昨日散々見たのだが。
 なんなら一目見た時、すでに服の上からでもわかるほど主張していたし。
 それでも。
 明るい室内で、一糸纏わぬ姿を見るとなると。
 別種の。
 感動のような物を覚えずにはいられない。

 フィオナは起きてるんだか寝てるんだか。
 目は閉じたまま。
 口はむにゃむにゃと動いてはいる。
 なんか、一瞬貶されたような気がしないでもないが。
 手を避けられたりもしないし。
 やっぱり、ただの勘違いかもしれない。
 俺の頭も半覚醒らしく。
 理解力が死んでる模様。
 一応、耳には入ってるはずなんだけどね。

「……先輩?」
「ん?」

 俺が、モラトリアムを満喫しつつもそんな感動的な体験をしていると。
 上から声が聞こえた。
 視線を動かすと、ノア。
 先に起きてたらしい。
 一応は部屋着、なのだろうか?
 服を着てこそいるが。
 かなりの薄着。
 少々心許ない。
 まぁ、今更気にするような間柄でもないか。
 そもそも他2人は裸なのだし、防御力が低かろうがそれが何って話だ。

 ベッドの脇に立ってるからだろうか?
 見下されるような視線。
 多分……
 いや、本当に。
 おそらく立ってるからで間違い無いはず。
 ……うん。
 断じて。
 俺が胸を揉んでるせいではないと思う。

「何してるんです?」

 そう都合良くは行かないらしい。
 ジト目が悪化した。
 まぁ、そりゃそうだよね。
 ノア以外は裸だし。
 毛布も、どこかへと旅立ってしまった様子。
 隠すモノがないのだ。
 一目見れば状況が把握出来る。

 いや、少し現状の言い訳をするのなら。
 初めは不慮の事故だったのだ。
 寝返りを打とうとしたら自然に、手がその位置にいってしまって。
 そうなって仕舞えば。
 男として。
 横にこんなモノがあって。
 逆に、揉まねば失礼と言うもの!

 なぜ、山に登るのか?
 そこに山があるからだ。

「んっ、私は別に胸を揉まれるぐらい……」

 フィオナもいつの間にかしっかり起床してたらしい。
 いつ起きたのかは知らないが。
 まぁ、胸を揉まれりゃそら目も覚めるか。
 拒否されなかったのは幸いだ。
 昨日それ以上のことをした仲ではあるが、女性の気分を移ろいやすいからね。
 油断は禁物。
 でも、むしろ押し付けてくるぐらいだし。
 ひとまず急に気分が変わったりはしていない様子。

 ただ、誘いには乗れない。
 非常に惹かれる提案ではあるのだが。
 朝だというのに。
 元気のない息子が答えだ。
 昨日の時点で使い果たしたらしい。
 流石にね。
 そこまでの元気はない。

 それに、ノアにジト目で見られたまま色々と始めるのは。
 ……少々難易度が。
 昨日3人でやることやっておいて、何だが。
 それとは、また別種のプレイな気がしないでもない。
 まだ俺のレベルが足りない説ある。

 いつまでも胸に手を当てているのも気まずくなってきたので。
 自然を装って回収する。
 まぁ、2人からがっつり視線を感じる以上自然も何もないのだけれど。
 ポーズは大切だ。
 そのまま思いっきり伸びをする。
 あくまでこのため、他意はないですよというアピール。
 無駄でしかないような気もするが。
 所詮自己満足だし、バレたところで何か損するわけでもない。

 それとは別に、言い訳の伸びが普通に気持ちいい。
 色々あってぐっすり眠れたからね。
 何と言えば良いのか。
 疲労が取れた後に残る特有の倦怠感?
 伸びをすることで。
 それが腕の先からするすると抜けていくような感覚。

 後、諸々が綺麗に終わってくれたのもデカい。
 あくまで俺の中での話だが。
 体だけじゃなく、心までスッキリだ。

 王都に来て結構経ったか。
 金も使ったし。
 学園祭も終わったし。
 そろそろ、帰らないとな。

 別にやろうと思えばこっちでも稼げるんだが。
 ミスリル関連は無論として。
 冒険者ギルドは王都にもある。
 なんならこっちの方が規模もデカいし。
 依頼数も多いはず。
 しかし、長居をするつもりはない。
 これまでの偏見は消え。
 確かにいいところではあったのだけど。
 でも、ね。
 なんだかんだ、俺にはウーヌの街が合っているのだ。
 多少は思い入れもあるしね。
 暮らすってなるとやはりあそこが一番である。

 嫌な予感がするからとっとと帰りたいとか。
 そういう話はしていない。
 うん。
 なんなら、偏見が消えて嫌な記憶が増えた気もするが。
 運が悪かっただけ。
 流石に、これがデフォルトって事はないだろう。
 そんな国じゃとっくに滅んでるだろうし。

 後は、受付嬢とも会いたいしね。
 会ったら会ったで。
 また、色々とうるさいんだろうけど。
 そのうるさいのも。
 無いのはそれで寂しいらしい。
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