ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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十五章

平常

 店を出ると、高かった日がすっかり傾いていた。
 入る前は閑散としていた通りも、それらしい女性や欲に塗れた男たちでまばらながら。
 人通りも増えて来る。
 あの頃、まだ娼館で働いていた時代なら丸々一晩買っていたのだろうけど。
 彼女も今や一国一城の主。
 本業を放置してって訳にもいかないのだろう。
 それでも予定外に時間を消費したが、お店の開店前に解散となった。

 帰る前にこの辺りでもう一飲み、そう行きたい所ではあるが。
 いかんせん、財布が軽い。
 これまでなんだかんだと浪費して来てはいた。
 しかし、酒屋で土産を買った段階ではまだそれなりに残っていたはず。
 それが何故か。
 別に彼女の体に使った訳ではないのだ。
 偽りなくサービスであったし。
 健全な消費活動の結果。
 ただ、空腹は最高のスパイスと言いますか。
 なるほど、試着だなんだと言って彼女が身に付けてるのを見ると。
 その姿で誘われてしまうと。
 全てが無性に良く見えてしまって。
 進められるがまま、金の許す限り商品を買い続けてしまった。

 気付けば持ち金もすっからかんである。
 流石。
 王都に1人出て来て、女手1人で店やってるだけあるわ。
 商売上手らしい。
 正直、そこらの店で女の子一晩買い切る方が全然安かったとは思う。
 王都の方が相場が上とはいえ。
 だとしても、高いぐらいの買い物をしてしまった。
 ま、後悔はしてないけどね。
 もちろん、進められた商品が良かったってのもそうだけど。
 出来る女。
 これを抱いてたと思うと。
 終わった後。
 軽くなった財布を持ちながらでも十分なまでの充実感を感じる。

 それに、今回の事だけではなく。
 温泉街の店では気に入って何度も指名していたのだ。
 あの記憶が。
 より素晴らしい物になった。

 飲み歩く金も無いし、大人しく帰宅。
 ノアの家に帰るってのも、我ながらどうかと思うけど。
 金がないのだから仕方がない。
 これまで昨日を除いて一応ホテル泊まってたんだけどね。
 ま、拒否られることもないだろうし。
 好意に甘えるとしよう。
 フィオナからのヒモ発言。
 昨日言われた時は、否定も出来ない程度に思っていたが。
 もはや、真に的を得てる気すらして来た。

 家には俺1人。
 ノアもフィオナも多分忙しいのだろう。
 ってか。
 フィオナは普通に自宅帰るか。

 ……明日、王都を出る。
 そう思うとここも中々名残惜しいな。
 散々酷い目にも会ったけど。
 それだけでなく他にも色々あったし。
 総じて、いい思い出だ。

 ~~~~~
 ~~~~~

「……ください。ロルフ先輩、起きてください」
「ん?」
「なんでこんな所で寝てるんですか?」

 目を開けると、ノアの顔がすぐ側にあった。
 いつの間にか眠っていたらしい。
 酒飲んでヤることヤって、そりゃ眠くもなるか。

 寝返りを打とうとして。
 ふと、ベッドがやたら硬い事実に気づく。
 あれ?
 昨日寝た時は、もっと柔らかかった様な。
 などと思案し。
 すぐ側に机の足を発見。

 ここから導き出される答え。
 どうやら、床で眠ってしまっていたらしい。
 危ない危ない。
 俺はもういい歳のおっさんなのだ。
 チートボディーじゃ無かったら。
 この体。
 しばらくは使い物にならなくなってた所。

 眠気まなこを擦りつつ、窓の外に視線を移す。
 かなり暗い。
 数時間程度は寝てたのだろうか?
 かなりの継続ダメージ。
 1週間とか。
 そのぐらいは引きずりかねない。
 もう、大怪我と言っても差し支えないレベルだ。

「ごめんごめん、ちゃんとベッド行くから」
「いや、そんな暇無いですよ」
「へ?」
「フィオナさんがドラゴン便用意してくれてるんで」
「もう?」
「はい。ほら、早く行きましょ」

 早くね?

 明日とか何とか言ってなかったっけ?
 それがその日の夜とか。
 よくもまぁ、そんなスピード感で話を通せたな。
 まだ半日経ったかどうか……
 あぁ、そう言う事。

「ちなみ、聞きたい事あるんだけど」
「どうかしましたか?」
「今って夜だよね」
「分類的には早朝です。ほら、もうすぐ朝日も上りますよ」

 などと言いながら、窓の外を指差すノア。
 外が暗いの、夜が更けて来てるのではなく早朝だかららしい。
 なるほどなるほど。
 まぁ、これまでの疲れもあるし。
 今日。
 じゃなくて昨日か。
 なんだかんだ体力消費したからね。
 寝落ちしてぐっすり、床上で一夜を越してしまったと。

 ドラゴン便がこんな時間なのは。
 無理やり用意してくれたからだろうな。

 ってか、ノアも今帰って来たって事か。
 こんな所で寝てるの見つけたら、ベッドまで移動させてくれそうだし。
 そう言うことだろう。
 多分。
 暴動の件で、諸々あったのだろう。
 表情を見ると。
 確かに、疲れが見える気がする。
 何と言うか、遅くまでお仕事お疲れ様です。

 なんて事を考え、うだうだしてたせいか。
 無理やり抱き起こされてしまった。
 予想だが、あまり時間の余裕もないのだろう。
 無理やり取ってもらった形だしね。
 時間的に、日が落ちる前にねたはずで。
 睡眠時間はバッチリのはずなんだけど。
 暗いせいか。
 どうも、あまり目が覚めないのだ。

「……ん? あの~、ロルフ先輩?」
「はい」
「昨日、僕が忙しくしてる間。何してました?」

 ノアにジト目送られた。
 なぜ急に?
 昨日は、普通に飲み歩いてその後は昔馴染みの相手とよろしく……
 うん。
 口は開かない方がいいな。
 あ、なるほど。
 俺抱き起こすために密着したから、それで気づいたのか。
 ま、床で寝落ちしてたぐらいだもんな。
 そりゃ匂いも残ってるか。

 しかし、言い訳もしない。
 ノープログレム。
 王都に来てから色々迷惑はかけたが、清算したからね。
 釣り合ってるとは思わないけど。
 まぁ、向こうがお仕置きと称してやってくれた訳だし?
 それで一先ず解決。
 無駄に引きずり過ぎて関係ギクシャクするのも。
 それはそれで良く無いかなって。

 弱みがなければ、俺は無敵なのだ。
 俗に言う無敵の人である。
 開き直り?
 無敵の人にそんな正論は通用しない。

「……黙秘で」

 って訳で、これで突き通す。

「ま、先輩ってそういう人ですもんね」
「そゆこと」
「別に褒めてはないですからね!」

 半分引きずられながら、家の外へ。
 馬車が停まっていた。
 そのまま、乗り込む。
 どうやら王都の外まで運んでくれるらしい。
 実に、至れりつくせりである。

 しかし、この馬車貴族用だろうか?
 港町までの間、乗っていた物とは全くの別物。
 椅子が柔らかいのは当然として。
 サスペンションでも取り付けられているのか。
 馬車自体が全く揺れない。
 道が整備されている影響も当然あるだろうが。
 とにかく。
 乗り心地が、同じ乗り物とは思えない。
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