ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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十五章

平常 4

 依頼を受け、ギルドを出てそのまま街の外へ。
 この森に来るのも久方ぶり。
 まぁ、ただの職場だ。
 王都から帰ってきて久しぶりの出勤。
 特に感慨深いなんて感情もなく、むしろ面倒って思いが強い。
 そんな事言っても仕方ないのだが。
 さっさと仕事こなして。
 早々に、今日遊ぶ為の日銭を手に入れたいとこ。

 薬草採取、しばらくやってなかった訳だけど。
 現在の季節は冬。
 残念ながら取らなかったからと言って増えてくれる時期でもない。
 浅いところは取り尽くしたまま。
 とは言え。
 他の時期以上にライバルも皆無だからね。
 討伐依頼ついでに拾ってく中級以上の冒険者とかも。
 ほぼほぼ居ないだろうし。
 増えない割に無くなったりもしないのだが。

 街中と違い、除雪もされず。
 気温的に積もった雪があまり溶けないのだろう。
 雪が深い。
 足を取られ。
 歩く事自体が非常に億劫に感じる。

 森に入る前の、街の周囲に広がっている草原ですら。
 チートなかったら死にかねないレベル。
 街の近くで遭難とか、普通にあるらしいし。
 今の天候だと後ろ振り返れば足跡がしっかり残っていて。
 ここで遭難するのかって感じだけど。
 雪降ったらこの足跡綺麗に全部消えちゃうんだもんな。
 視界も不明瞭になるだろうし。
 そりゃ、冒険者も冬場は活動しなくなるわ。

 魔物も少なくなるとはいえ。
 皆が皆、冬眠してくれる訳でもないからな。
 自殺行為でしかない。
 最低限その日生き残れる程度の金しか稼げなくとも。
 街の中で肉体労働やって。
 扱き使われて稼いだ方がまだ良いか。

 空から見たときは綺麗だったんだけどね。
 地べたに降りてみるとこんなものだ。

 森の中へ、草原より積雪の量が多少マシな気がする。
 枝葉が屋根代わりにでもなっているのか。
 木々も少しは熱を持つのか。
 草原の植物なんて、多少の例外を残して冬場はほぼほぼ枯れちゃうからね。
 薬草はその例外で。
 持ち前の生命力で雪のしたでもしぶとく生き残る訳だが。
 全部刈られちゃってるだろうし。
 そもそも、背も低くて体積も少ないから。
 薬草に限らず。
 仮に、全て枯れずに残ってとしても纏めて雪の下に埋まりそうな予感。
 って言うか、積雪量に関しても。
 少ない気がするってだけ。
 ただの俺の勘違いかもしれないのだが。
 これからの作業。
 別に、楽に感じる分には何の問題もないだろう。

 雪の積もった森の中を無闇に進んでも仕方がない。
 薬草なんて、間違い無く雪の下だろうし。
 目視で見つけるのは不可能だ。
 まぁ、俺的には雪の下に埋まってようが何の問題もないのだけど。
 いつも通り、魔眼を起動。
 これも本来の目的で使うのは久しぶり。
 ……違うな。
 王都での黒幕探すのに使ったのが本来の使用用途な気がする。
 薬草採取に使うの。
 多分、こっちが例外的な用途だろう。

 んな事はどうでもいいのだが。
 ほぼほぼこっちの用途で使っているのだし。
 慣れたものだ。
 後は、魔眼に映った物。
 ここから余計な物を取り除いていく作業。

 まず、薬草が動くはずもないので動いてるのは除外。
 次に、デカいのも除外して。
 最後に一定以下の魔力量のも除外する。
 残った物。
 それが、視界に幾つかの光の点が浮かび上がって見える。
 これが薬草だ。
 後は、近いとこから順に回って。
 それを片っ端から刈り取る。
 多少面倒ではあるが、やはりボロい商売である。

 魔眼を使って改めて思ったのだけど。
 やはり、冬の方がそもそもの魔力の反応が少ない。
 厳選する手間が減るのは良い事だ。
 まぁ、俺が刈ってるせいで。
 森の奥まで入らなきゃならんデメリットはありつつも。
 そこは相殺。
 結果、いつの時期もあまり変わらない。

 1時間かからないぐらいで、十分量を採取。
 依頼時間一刻未満でギルドへ帰宅した。

「相変わらず早いですね」
「まぁな」

 依頼書と薬草の入った麻袋をカウンターに置く。
 雑に突っ込んだせいか。
 採取時に、薬草と一緒に雪も多少紛れ込んでいたらしい。
 ビチョビチョとは言わないが。
 袋がそれなりにしっとりとしている。

 多少嫌な顔をされてしまったけれど、特に文句は言われない。
 流石にね。
 これは仕事上、仕方ない汚れだ。
 気持ちのいい物でもないが、受付嬢もとっくに慣れただろう。

 抵抗あるのはむしろ俺の方って言うか。
 別に潔癖ではないのだけど。
 ほら、前世の世界が無駄に清潔だったから。
 こういうのあまり好きじゃないんだよね。
 最悪手で持つ分にはいいが。
 道中、服とかには付いて欲しくない。

 薬草採取の汚れだから、まだマシな方だけど。
 雪解け水、最悪でも泥水程度。
 これが討伐依頼とかになってくると。
 肉やら内臓やら。
 色々持って帰ってくる羽目になるし。
 仮に、駆除でもその証明のために一部を持参する必要がある。
 匂いがきついの何のって。
 途中まではアイテムボックスでいいが。
 最後、街に入る前には出すことになるだろうし。

 そういう面でも、やっぱ薬草採取以外勝たんわ。

「雪の下に埋まってると思うんですけど」
「うん?」
「いえ、今の時期って大抵の薬草は雪かぶっちゃってますよね」
「だね」
「やっぱり、早すぎません?」
「まぁ。薬草採取一筋、数十年のベテランなんで」
「……もしかして、おじさんって鼻が良かったりします?」
「何故に?」
「こう、四つん這いになってクンクンと」
「俺は動物じゃ無いが!?」
「そんな怒んないでくださいよ、冗談ですって」

 いや、別に怒ってはねぇよ。
 ただ単に。
 勝手に想像して勝手に笑われるの。
 納得いかないってだけで。

 ふと、目があった。
 笑いを堪えてるのか、咄嗟に口を塞ぐ。
 ……こいつ煽ってるだろ。
 まぁ、こういう奴だ。
 しゃーない。

 報酬を受け取り、そのまま横へスライド。
 ギルド併設の酒場へ。
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