ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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十五章

平常 8

 昼間っから散々酒を飲み続け。
 気がつけば、窓の外も段々と薄暗くなってくる時間帯。
 我ながら体力あるな。
 今日王都から帰ってきた所だと言うのに。
 本当、チート能力様様である。

 ただ、そろそろお開き。
 俺が飲んだくれてるだけなら、このままギルドが閉まるまで居座ってもいいのだけど。
 受付嬢とギルド長。
 2人共ここに釘付けになっちゃってるのがね。
 ギルド長は無論。
 受付嬢も、周りの対応から考えるになんだかんだちょっと偉いっぽいし。
 よろしくはない気がする。

 さっきから何やら視線を感じるのだ。
 ギルドの職員達。
 おそらく、関係ない仕事を中心に進めては居たのだろうが。
 良いかげん滞り始めたのか。
 少し前から視線が徐々に増加していってる様な……
 上司相手だからか。
 一旦、言葉にこそしていないけど。
 早く戻ってこいと言わんばかりである。

 まぁ、今日って別に休日でも何でもないからね。
 さもありなん。
 出勤してたってことは仕事があったって事だし。

「わらしのさけがのめっないってんですか」
「何て?」
「きょうら、あさまでのみあすんらしょ!」

 ギルド職員達の視線を尻目に、俺に絡みついてくる受付嬢。
 酔っ払っていて、まったく呂律が回っていない。
 完全に出来上がってしまっている。
 それでも何となく言いたいことは分からないでもないのだが。
 ま、半分勘みたいな物。
 俺の話は通じてないっぽいし。
 コミュニケーションとしてはもう完全に成立していない。

 一つ言っておくとすれば。
 別にお前の酒ではない。

 おばちゃんと目が合う。
 こっちは、多少酔っ払ってこそいるっぽいけど。
 まだ全然正気を保ってる様子。
 受付嬢が俺に絡みついてるのを見て。
 苦笑いを浮かべている。

 あ、ちなみに飛び入り参加して来たギルド長だが。
 初めはハイペースで飲み進めていたけど、少し前に潰れてしまった。
 現在、机に突っ伏して怪しい状態。
 戻してこそいないが、最早時間の問題の気もしている。
 まぁ、自分のギルドだし。
 そこは本人の好きにしてもらって構わないのだけれど。
 酒が好きなくせして、どうやら酒に弱いらしい。

 ぶつぶつと独り言を言いながら。
 たまに起きては、思い出したように酒を飲んでいるので。
 まだ寝てはいないと思う。

「おばちゃん、今日は色々お願いしちゃってごめんね」
「仕事だから良いんだよ、こっちこそ散々ごちそうになっちゃって」
「それこそ、普段から世話になってるからな」
「片付けは私がやっとくから」
「いいのか?」
「ま、普段から酔っ払いの扱いは慣れてるからね」

 ギルドで酒場やってればそうなるか。
 ここはお言葉に甘えて。
 酔っ払ってめんどくさい受付嬢をおばちゃんに押し付け。
 半分眠りかけてるギルド長。
 彼は我慢の限界を迎えた職員に回収されていった。

 半ば強引ではあるが、これにてお開き。
 なかなか楽しい飲み会だった。

 この2人、多分この後叩き起こされて。
 今から仕事なんだろうなぁ。
 果たして、こんな状態で業務をこなせるのか疑問であるけど。
 まぁ、軽率に参加してきたこいつらが悪いのだ。
 自業自得である。
 とりあえず、お仕事頑張ってくれ。

「じゃ、ご馳走さまでした」

 ギルド職員達の、使い物にならない上司への恨み。
 それがこっちへ飛んできても困るので。
 早々に退散。
 酒場のおばちゃんに一言告げてからギルドを出る。

 ひんやりとした風が心地いい。
 普段、歩くのは少し億劫ではあるのだが。
 今だけは。
 延々と歩き続けられるような。
 そんな錯覚に陥る。

 気持ちよく酔っ払ったし。
 このまま帰っても良いんだけど。
 王都で色々あったから。
 精神的な、癒しがほしい。

 大通りから一本外れた裏路地。
 ここにくるのも久々。
 王都の少し下品さすら感じる、豪華なものとは違う。
 飲み屋が何軒か並ぶ。
 アンダーグラウンドな雰囲気の通り。

「いらっしゃいませ」

 見慣れた、宿屋のような外見の建物に入る。
 中には見知った顔の男性店員。
 ……やっぱ違和感あるよな。
 内装も外見も、ここのお店ってただの宿屋なのに。
 男の服装。
 不釣り合いな上質な服を身に纏ってるの。

「いつもの娘、指名出来る?」
「もちろんでございます」
「そんじゃお願い。時間もいつも通り」
「はい、承知いたしました」

 店員から鍵を受け取る。
 鍵に取り付けられたストラップには203の文字。
 2階の中部屋か。
 階段を上がってすぐ。
 203のプレートがかかった部屋が見えた。
 ここだな。

 ベッドに腰掛け、ぼんやりと天井を見つめる。
 このまま横になってしまいたい衝動に襲われつつ。
 今の状況で横になったら。
 多分、すぐにでも寝落ちする気がする。
 流石にそれは勿体無い。
 まぁ、そんな状態ならさっさと家帰れって話なのだが。
 王都での疲れ。
 肉体ではなく精神の。
 それを癒すって言ったら娼館以外ないでしょ。

「お待たせしました~」
「よ、久しぶり」

 少しばかり1人の時間が流れ。
 お目当ての娘が来た。
 定番の胸元が大きく開き、視線を釘付けにする服。
 彼女の正装みたいなものだ。

「……あ、ロルフさん! やっと帰ってきた」

 俺と目が合い、一瞬停止したと思ったら。
 おっと。
 急に突っ込んできて抱きしめられた。

 そんなことすれば。
 当然その豊満な胸も押し付けられる訳で。
 うん、悪くない。
 いいや、非常にい良い。

「ずっと来てくれなくて、少し寂しかった」
「王都行ってたの知ってたろ?」
「でも、こんな長いと思わなかったから」

 受付嬢にも似たような事言われたな。
 娼館にも、同じ様なルーティーンで来てるし。
 そりゃ、こういう反応にもなる。
 本当に寂しかったのか。
 固定の稼ぎが減って懐が寂しかったのか。
 ま、こうやって甘えられるの結構嬉しいから。
 どっちでも良いっちゃ良いんだけどね。

 そのまま、俺の胸に顔を押し付けクンクンと。
 分かりやすく鼻を鳴らす。
 何のつもりか匂いを嗅いでるらしい。
 ちょっと恥ずい。
 王都から帰ってきて、その流れで薬草採取行って。
 さっきまで酒飲んでたから。
 少なくとも、いい匂って事はないだろうに。

「くちゃい……」
「ならさっさと離れろ」
「離さない」

 しばらくして。
 やっと、匂いに満足したのか。
 解放された。

「そう言えば、ノアちゃん元気にしてた?」

 そして、何でもないように話を変える。
 ただ、流石に恥ずかしかったのか。
 少し頬が赤い。
 いくら嬢とは言え、どう考えても特殊なプレイだもんな。
 何の気まぐれかは知らないが。
 ご馳走様。
 快楽とは違うが、非常に心地良かった。

 にしても、お前らほんと仲良いよな。
 妹分とか言ってたっけ。
 Aランク冒険者が妹分とか、とんでもない嬢が居たものだ。

 元気にしてたか、ね。
 そりゃ、とんでもなく元気にしてたよ。
 具体的に言うと。
 搾り取られて、危うく干からびるところだった。
 お前の妹分。
 いつの間にか淫魔になってるんですが。
 どうなってるんですか?

「王都で元気にやってたよ」
「良かった」
「むしろ体力が有り余ってたぐらいで、俺の方が逆に」
「……?」
「あ、いやこれはこっちの話」

 危ない危ない、口が滑りそうだった。
 有り余っていて悪いことなんて基本ないからね。
 嬢が頭にハテナを浮かべる。
 ノアと繋がってるから。
 余計なこと言うと全部筒抜けである。

「あ、そうだ。する前に、お土産買ってきたんよ」
「え? 私にお土産?」
「そうそう。王都で買ってきたんだけどね」
「うわぁすごい……」

 ボディーアクセサリーと、ランジェリー。
 セットで渡す。
 お土産と聞いて、少しテンションの上がった嬢が。
 物を確認して分かりやすく声色を変える。

「……ふーん、これを私に着てほしいんだ?」
「お願い!」
「もう、ロルフさんのエッチ」
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