ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

文字の大きさ
181 / 277
蛇足

春風 11

 流石に、そろそろ時間だろう。
 日も暮れてきたし。
 解散かな?
 あまり拘束するのも悪い。

 こういうのは先輩側が言い出さないと、向こうも帰りにくいしな。

「おばちゃん、お会計」
「お、あんたが払うんかい?」
「俺を何だと思ってるんだ!」
「そりゃ、ねぇ……」

 胡散臭い物を見るかの様な視線を向けられる。
 何故?
 後輩にちょっと飲み代を奢るって言っただけでこの扱い。
 一応抗議してみたものの。
 効果無し。
 それどころか若干含みのある言葉が返ってきた。

 色々と言いたい事はありつつも。
 ま、長い付き合いだからね。
 受付嬢がギルドに就職する以前からの関係である。
 こうもなるか。

 俺が飲み代足りなくてノアから酒代巻き上げてたのとか。
 ほら、例のノートを売ったやつ。
 他にも心当たりがちらほらと。
 個別の事例を覚えてるかどうかは別として。
 見てはいるのだ。
 それは、こんなイメージにもなる。

「後輩の昇級の前祝いだからね」
「へぇー、成長したってこったな」
「……どっちが?」
「さぁね。どっちだろうか」

 そんなこんなで、多少不本意な扱いを受けるも。
 無事会計を済ませた。

「ロルフさん、ご馳走様です!」
「そんなのいいって」

 んな、お礼言われるほどの金額でも無いしな。

 ちなみに、パティーメンバーは自分の分は払ってったらしい。
 急に巻き込まれたのに……
 しっかりしてやがる。
 全然奢るつもりだったんだけどね。
 本当、俺はちょっと話しただけだけどいい仲間だと思う。

 信頼出来るかって大切だからね。
 冒険者のパーティーは強けりゃいいってもんじゃない。
 少人数。
 命懸けで共通の依頼に挑むのだ。
 完全に背中を預けられるかって結構重要。

 まぁ、強さに関しても。
 Bランク目前まで来てる訳だからな。
 そこは折り紙つきなのだろうが。

「次会うのは、多分依頼から帰ってきた後かな」
「頑張ります!」
「あぁ、上手くやれよ」
「はい!!」

 やる気十分と言ったところか。
 ちょっとでもプラスになったのなら良かった。
 絶対成功してくれとは言わないが。
 今日、一緒に飲んで。
 多少なりとも情が湧いてしまったらしい。
 あまり死んでほしくはないな。

 これは、口には出さないけどね。
 彼としてはBランクに上がる気満々だろうし。
 そもそもとして。
 仲間見捨てて逃げれるやつでも無いのだ。

 仲間じゃなかったとしても。
 確かこの依頼、村近くでのオーガの目撃情報があってどうこうって内容だったはず。
 仮に、村が襲われてたら。
 放っておけずにきっと助けに入ってしまう。
 そんなやつだ。
 だから、生きて英雄になってくれ。

 ……

 もう少し飲みたい様な気もするが。
 今から飲み直すのもな。
 それに、俺もそろそろ時間か。

「あ、おじさん帰るんですか?」

 青年を見送って一息。
 ギルドを出ようと席を立ったところで、受付嬢に声を掛けられた。

 いや、早くね?
 普段から帰る前に一言二言話すことも多いのだが。
 今日は。
 特に早かった気がする。

 俺の事をずっと監視してた訳じゃなかろうな。

 仕事中だったし、そんな訳ないのだけど。
 少し前からだ。
 今日ほどじゃ無いにしても。
 ギルド内での行動を大方把握されてる様な気が。

「何でそんな目で見るんですか?」
「やけに早いなと」
「おじさんが彼と話してたから……、って言わせないでくださいよ!」

 口には出していなかったのだけど。
 視線でバレたらしい。

 つまる所、嫉妬か。
 それだけ聞けば実に可愛らしい物なのだが。
 その内容よ。
 俺、後輩の冒険者と飲んでただけだぞ?
 これに嫉妬は。
 流石にいかがなものかと。

「何を勘違いしてるか知らないが、俺は男には興味無いからな」
「ノアさんとああなったのに勘違いだと?」
「あれは例外」
「私にその区別はつかないです!」

 勘違いだと訂正を試みたものの。
 逆に怒らせてしまった。
 確かに、この区別は俺以外にはつかないか。

 頬を膨らませて。
 分かりやすく怒ってますとアピールする受付嬢。

 俺に他にも相手がいることは知ってるし。
 これに関して、あまり怒ったりはしないのだが。
 言い訳が良くなかったらしい。

 ……ごめんって。
感想 69

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。