ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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蛇足②

旅路 3

 適当に、温泉街へ行くであろう馬車を当たる。
 バスなどに付いてる様な。
 行き先表示器なんて便利な物、この世界にあるはずもなく。
 直接聞かないと分からない不親切設計。

「あのー、すいません。この馬車ってどこ行きの……」
「ん? 温泉街行きだけんど」

 事前に予約もしてないし。
 この場に、温泉街行きの馬車が一台も無いなんて可能性もあったが。
 流石は観光地。
 港町よりウーヌから距離あるとは言っても。
 需要もそれなりに高いのだろう。

 探し回る必要なく、初回でヒット。
 しかも、飛び込みで乗せて欲しいって話も。
 すんなり受け入れてくれた。

 ラッキー。
 断られる前提で、それなりの人数への声がけを覚悟してただけに。
 これは嬉しい誤算だ。

 ……いや?

 商人にこの馬車の料金説明を受けつつ。
 ちらっと車内が見えたのだが。
 これ、もしかして。
 あんまりお客さん乗ってなかったりする?

 話を聞く限りじゃ、出発までそんな時間があるって訳でもなさそうだし。
 遅れれば容赦なく置いていかれるのに。
 事前に払ってた分など結構な損失が確定するのだ。
 余裕を持って集まるのが普通。
 予定が出来てドタキャンもあるにはあるけど。
 そこまで金のある人間が多いほどこの街は裕福だっただろうか……

 あぁ、なるほど。

 もしかして、予約してる人間自体が少なかったとかか?
 少し前まで雪残ってた訳だからな。
 事前の予定にはない馬車。
 そりゃ、急遽決まったとなれば元から予約してる人間もいないだろうさ。

 この乗り場に馬車が少ないのも、そのせい説。
 早朝の馬車が出てるにしたって人も馬車も少ない気はしたのだ。

 天気の予測とか、前世に比べりゃ正確じゃないし。
 雪が解ける正確な時期なんて直前にでもならないと判断できない。
 実際に解けたって情報も。
 街は分かっても街道の方はタイムラグがあるのだろう。
 馬車を引く馬にしたって。
 すぐに動かせる状態まで持ってけるのか不明。

 その諸々の事情を鑑みた上で。
 ちょうどの時期に事前の予定を立てるのは困難を極めるか。

 勝手な、素人のおっさんの予想ではあるが。
 まぁ、そんな諸々合わさり。
 馬車の席が空いてたのではなかろうか。

 俺としては万々歳である。
 乗れたのも勿論。
 馬車なんてすいてる方が良いに決まってるのだ。
 満員馬車とか。
 不快なのは当然として、社畜時代を思い出すので遠慮したい。
 そこまでぎゅうぎゅうな馬車なんて。
 見た事ないけどね。

 改めて馬車を見るに、装備に特殊な物も見られない。
 一般的な馬車だ。
 雪の中進むって感じでもなさそうだし。
 解けたから動かし始めたってパターンなのは容易に想像が付く。

 そんなんで、採算取れるのかって感じだが。
 普通の乗り合い馬車に比べて荷物の比率が多めだろうか。
 行商人も兼ねてる。
 ってか、そっちがメインなのだろう。
 人を運ぶ方がついで説。

 乗り心地は多少心配ではありつつも。
 ま、純粋な乗り合い馬車だと今から予約取り始めてって感じだろうし。
 ここにはいない気がする。
 数日は掛かりそう。
 最低限、利益が出るラインに届かないとね。
 ボランティアじゃないのだ。

 あ、これだと雪が解けるまで馬車はないみたいな言い草だが。
 別に冬場も馬車がない訳じゃない。
 普段の何倍も高額だし。
 同上の理由で採算ラインまで予約入るまで動かないから、便は不定期。
 追加で金を払うならその限りじゃないけど。

 雪の影響が不明なので、長旅前提。
 しかも、到着時期も未定だし。
 当然の様にその道中は命懸けとなる。

 今日の俺の様に。
 気分だからとか言って、気軽な気持ちで乗り込んで良い物では無い。

「じゃ、よろしくお願いします」
「まいど」

 一通り、説明を受けた。
 商人に金を払い、馬車に乗り込む。

 野営前提の馬車だからね。
 その日のうちに着くものとは違う。
 食事の話とか。
 寝具の話とか、諸々。

 ちなみに金の問題はない。
 学園祭見に王都行ったのでほぼほぼ使い果たしてはいるが。
 帰ってきてから。
 真面目に薬草採取やってるからね。
 馬車の料金も、向こう着いた後の宿代も。
 バカたかいなんて事はないし。

 日で割れば、娼館と大差ないぐらいだろうか。
 指名入れて朝まで拘束してるのと比べればむしろ安いぐらい。
 無理なく楽しめる範囲だ。

 前回温泉街行った時はかなり使った気もするけど。
 あれは、獣っ娘買ったせいで。
 女将さんに怒られちゃったからね。
 もう買うつもりは無い。
 流石に、増やしたらキレられるの想像に難くないしね。

 馬車の中には数人。
 外から、ちらっと見えた通りだ。
 ギチギチって感じでは無い。

 軽く会釈する。
 パッと見る限り、観光には見えないが。
 商人か。
 もしくは、冒険者かな?

 俺には縁のない話だけど。
 Cランクぐらいになると指名依頼とかも増えてくるらしく。
 そうなれば、遠出する機会もあるからね。

 んなことを考えてる内に、時間になったのだろう。
 馬車がゆっくりと動き出した。
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