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蛇足③
親子 3
うーん、間違いなく知り合いだとは思うのだけど……
俺の残念なおつむの仕様と言いますか。
そもそも女将さん以外。
宿のスタッフ、まともに覚えていないんだよね。
どうにか思い出せないかと、彼女の事をまじまじ観察して見るのだが。
まぁ、そもそも記憶していないのだ。
いくら頭を捻ったところで無意味に終わる可能性が高い。
「……あの。ロルフ様、で合ってますよね?」
「ん? そうだけど」
「で、ですよね。良かったぁ」
俺が、返事もせずにうんうんと唸っていたせいだろう。
要らぬ不安を与えてしまったらしい。
すまんな。
別にそんなつもりは無かったのだけれど。
改めて肯定すれば。
少々、ほっとした様子の娘。
人違いって気まずいからな。
特に、お客さん相手に間違えるのとかはかなり来る物がある。
道端で間違って声かけるのとは違うと言うか。
間違えました。
じゃさよなら。
って、そう簡単にもいかないしね。
向こうは客としてきてるのだから。
普通に仕事が残っているのだ。
一度ミスった後の接客、普通に心的疲労がエグい。
前世で、バイトやってた頃だったか。
似たシチュがあった。
俺の場合はこうなるのが怖くて気づかないふりを選択したのだけど。
我ながら懸命な選択だったとは思う。
ま、その繰り返しで人間関係が希薄になっていった気もするが。
それはそれだ。
こんな話はどうでもよくて。
うむ。
改めて、スタッフの娘に視線を戻す。
「?」
目が合い、こてんと首を傾げる。
自分の記憶になんて端っから期待も何もしていないのだ。
思い出せなかったところで。
でしょうね以外の感想も出てこない。
ただ、妙なデジャブを感じるんだよな。
前回来た時も似た様な事あった気がしないでもない。
掃除してた娘。
確かこの前も同じ様な状況に……
……って、あ!
思い出した。
この娘、例の新人ちゃんか。
前来た時も、同じように玄関前の清掃をしてて。
そう思って見てみると。
うん、間違いない。
確か、その時も見覚えないとかなんとか言って。
去年はいなかった。
つまり今年雇われたのだろう、とか。
そんな、見当違いな推理をしていた気がする。
後になって、そもそも女将さん以外まともに覚えてなかったという。
自分的には衝撃の事実に気づいたんだっけか。
いや、懐かしいな。
にしても、ちゃんと覚えていたらしい。
俺の残念な脳みそにしては上々の結果である。
忘れかけてたって?
最終的に出てきたから良いのだ。
名前は、ちょっと思い出せそうに無いが。
いや、元々聞いてないかもしれない。
言い訳とかじゃなくって。
ほら俺って人の事覚えるの苦手じゃん?
だから、ね。
自分からあまり名前を尋ねないのだ。
名前聞いた後忘れると気まずいしね。
そのほうが健全である。
「この時期にいらっしゃるなんて、珍しいですよね?」
箒を壁に立てかけつつ、そんな事を尋ねられる。
掃除は中断。
どうやら接客優先してくれるつもりらしい。
この世界にお客様は神様なんて概念はないが。
商売なんて、基本的に客いないと成り立たないからね。
周囲との差別化の意味でも。
この宿じゃ接客の優先度は高めに設定されてるっぽい。
でも、そうか。
驚いた理由はそれか。
個人的な知り合いでもなんでもない。
客として知ってる相手。
それが来たにしては反応が過剰だなとは思っていたのだ。
確かに俺がこの宿に来るのは冬ばかり。
それ以外の時期に来たのなんて、それこそ温泉街を見つけた当初ぐらいか?
10年以上は前だ。
冷静になるとかなりの珍事ではある。
でも、珍しいって……
あれ?
俺はてっきり最近働き始めた物だと思っていたのだが。
新人ちゃんってここ結構長い?
普段から冬しか来ないのは間違いないけど。
それを判断できるほど長く働いていると。
去年、その相手を綺麗さっぱり忘れていたのだとしたら。
これは酷い。
やはり俺の頭の出来は残念だと再認識させられた。
「それ分かるって事は、ここで働いて結構長いの?」
「いえ、女将さんに聞いていたので」
……あ、そういう。
そりゃそうだよな……
普通に働いてれば、コミュニケーションの過程で常連の話題ぐらい出るよな。
俺が基本ソロ行動なばっかりに。
何話してんだろ?
まぁ、知らない方が吉か。
なんか怖いし。
いや、女将さんは陰口とかいう人じゃないと思うけど。
でもなぁ。
去年は獣っ娘の事丸投げしたり散々迷惑かけたからな。
やっぱり怪しいかもしれない。
ただの常連ならよし。
閑散期に来る上客って評価なら嬉しい。
それ以外だと、悪評しか思いつかん。
新人ちゃんの表情を窺ってみるも。
自然な、人好きのする笑顔を浮かべている。
営業スマイルだ。
教育が行き届いていらっしゃる。
そのせいで真意が読めそうに無い。
さっきは、一瞬剥がれかけていた訳だが。
それもすぐに取り繕われ。
ま、そもそも人の表情から真意を読み取れるほど人間関係得意でもないのだが。
「今日は宿泊でのご利用ですか?」
「そ、お願い」
「部屋の空き状況確認してまいりますので少々お待ちください」
去年は掃除専門で、こういう手続は誰かを呼びに行ってた気がする。
この数ヶ月で成長してるらしい。
ってか、完全に停滞してるのなんて俺ぐらいだわな。
受付嬢やらノアみたいな。
誰が見ても分かりやすくって物では無かったとしても。
人間生きてれば。
基本的には前進していくものなのだ。
……ん?
確か、この前ここの宿泊まりに来た時って。
お掃除してた新人ちゃんが別のスタッフの事呼びに行って。
その子が俺に気づき。
それで、なら去年も居たんだなと。
こんな感じの論理展開じゃ無かったっけ?
あれ?
新人ちゃんってやっぱり前回は初対面だったのでは?
見覚えのない掃除してるスタッフを見て、新入りなんだろうなとか勝手な感想を抱き。
呼ばれたもう1人の方も記憶になくて。
でも、向こうが俺のこと把握してた上に去年から居たって話になり。
それで……
あ、俺常連の癖して実は女将さんしか覚えてなかったわと。
そんな結論になった気がする。
そんなだった、そんなだった。
うん。
相変わらず、記憶は曖昧なままだけど。
なんか、しっくり来る。
じゃ無かったら、そもそも新人じゃないしな。
冷静に。
やはり俺の脳みそはボロボロである。
と言うか、変な勘違いしたのもだ。
他スタッフに頼ってた新人ちゃんが一人前になったせい説。
それで変なところで重なってしまったのだ。
……そう思うとちょっと感動モノかもしれない。
俺の残念なおつむの仕様と言いますか。
そもそも女将さん以外。
宿のスタッフ、まともに覚えていないんだよね。
どうにか思い出せないかと、彼女の事をまじまじ観察して見るのだが。
まぁ、そもそも記憶していないのだ。
いくら頭を捻ったところで無意味に終わる可能性が高い。
「……あの。ロルフ様、で合ってますよね?」
「ん? そうだけど」
「で、ですよね。良かったぁ」
俺が、返事もせずにうんうんと唸っていたせいだろう。
要らぬ不安を与えてしまったらしい。
すまんな。
別にそんなつもりは無かったのだけれど。
改めて肯定すれば。
少々、ほっとした様子の娘。
人違いって気まずいからな。
特に、お客さん相手に間違えるのとかはかなり来る物がある。
道端で間違って声かけるのとは違うと言うか。
間違えました。
じゃさよなら。
って、そう簡単にもいかないしね。
向こうは客としてきてるのだから。
普通に仕事が残っているのだ。
一度ミスった後の接客、普通に心的疲労がエグい。
前世で、バイトやってた頃だったか。
似たシチュがあった。
俺の場合はこうなるのが怖くて気づかないふりを選択したのだけど。
我ながら懸命な選択だったとは思う。
ま、その繰り返しで人間関係が希薄になっていった気もするが。
それはそれだ。
こんな話はどうでもよくて。
うむ。
改めて、スタッフの娘に視線を戻す。
「?」
目が合い、こてんと首を傾げる。
自分の記憶になんて端っから期待も何もしていないのだ。
思い出せなかったところで。
でしょうね以外の感想も出てこない。
ただ、妙なデジャブを感じるんだよな。
前回来た時も似た様な事あった気がしないでもない。
掃除してた娘。
確かこの前も同じ様な状況に……
……って、あ!
思い出した。
この娘、例の新人ちゃんか。
前来た時も、同じように玄関前の清掃をしてて。
そう思って見てみると。
うん、間違いない。
確か、その時も見覚えないとかなんとか言って。
去年はいなかった。
つまり今年雇われたのだろう、とか。
そんな、見当違いな推理をしていた気がする。
後になって、そもそも女将さん以外まともに覚えてなかったという。
自分的には衝撃の事実に気づいたんだっけか。
いや、懐かしいな。
にしても、ちゃんと覚えていたらしい。
俺の残念な脳みそにしては上々の結果である。
忘れかけてたって?
最終的に出てきたから良いのだ。
名前は、ちょっと思い出せそうに無いが。
いや、元々聞いてないかもしれない。
言い訳とかじゃなくって。
ほら俺って人の事覚えるの苦手じゃん?
だから、ね。
自分からあまり名前を尋ねないのだ。
名前聞いた後忘れると気まずいしね。
そのほうが健全である。
「この時期にいらっしゃるなんて、珍しいですよね?」
箒を壁に立てかけつつ、そんな事を尋ねられる。
掃除は中断。
どうやら接客優先してくれるつもりらしい。
この世界にお客様は神様なんて概念はないが。
商売なんて、基本的に客いないと成り立たないからね。
周囲との差別化の意味でも。
この宿じゃ接客の優先度は高めに設定されてるっぽい。
でも、そうか。
驚いた理由はそれか。
個人的な知り合いでもなんでもない。
客として知ってる相手。
それが来たにしては反応が過剰だなとは思っていたのだ。
確かに俺がこの宿に来るのは冬ばかり。
それ以外の時期に来たのなんて、それこそ温泉街を見つけた当初ぐらいか?
10年以上は前だ。
冷静になるとかなりの珍事ではある。
でも、珍しいって……
あれ?
俺はてっきり最近働き始めた物だと思っていたのだが。
新人ちゃんってここ結構長い?
普段から冬しか来ないのは間違いないけど。
それを判断できるほど長く働いていると。
去年、その相手を綺麗さっぱり忘れていたのだとしたら。
これは酷い。
やはり俺の頭の出来は残念だと再認識させられた。
「それ分かるって事は、ここで働いて結構長いの?」
「いえ、女将さんに聞いていたので」
……あ、そういう。
そりゃそうだよな……
普通に働いてれば、コミュニケーションの過程で常連の話題ぐらい出るよな。
俺が基本ソロ行動なばっかりに。
何話してんだろ?
まぁ、知らない方が吉か。
なんか怖いし。
いや、女将さんは陰口とかいう人じゃないと思うけど。
でもなぁ。
去年は獣っ娘の事丸投げしたり散々迷惑かけたからな。
やっぱり怪しいかもしれない。
ただの常連ならよし。
閑散期に来る上客って評価なら嬉しい。
それ以外だと、悪評しか思いつかん。
新人ちゃんの表情を窺ってみるも。
自然な、人好きのする笑顔を浮かべている。
営業スマイルだ。
教育が行き届いていらっしゃる。
そのせいで真意が読めそうに無い。
さっきは、一瞬剥がれかけていた訳だが。
それもすぐに取り繕われ。
ま、そもそも人の表情から真意を読み取れるほど人間関係得意でもないのだが。
「今日は宿泊でのご利用ですか?」
「そ、お願い」
「部屋の空き状況確認してまいりますので少々お待ちください」
去年は掃除専門で、こういう手続は誰かを呼びに行ってた気がする。
この数ヶ月で成長してるらしい。
ってか、完全に停滞してるのなんて俺ぐらいだわな。
受付嬢やらノアみたいな。
誰が見ても分かりやすくって物では無かったとしても。
人間生きてれば。
基本的には前進していくものなのだ。
……ん?
確か、この前ここの宿泊まりに来た時って。
お掃除してた新人ちゃんが別のスタッフの事呼びに行って。
その子が俺に気づき。
それで、なら去年も居たんだなと。
こんな感じの論理展開じゃ無かったっけ?
あれ?
新人ちゃんってやっぱり前回は初対面だったのでは?
見覚えのない掃除してるスタッフを見て、新入りなんだろうなとか勝手な感想を抱き。
呼ばれたもう1人の方も記憶になくて。
でも、向こうが俺のこと把握してた上に去年から居たって話になり。
それで……
あ、俺常連の癖して実は女将さんしか覚えてなかったわと。
そんな結論になった気がする。
そんなだった、そんなだった。
うん。
相変わらず、記憶は曖昧なままだけど。
なんか、しっくり来る。
じゃ無かったら、そもそも新人じゃないしな。
冷静に。
やはり俺の脳みそはボロボロである。
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