ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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蛇足③

親子 14

 獣っ娘を連れて宿を出る。
 普段とは違う顔色を見せる街並みに、多少後ろ髪を引かれつつも。
 また次の機会に。

 わざわざ温泉街まで来て。
 別に、日帰りするって訳でも無いのだし。

 初めての狩にテンションが上がってるのだろう。
 俺の手を引いてスキップ。
 見るからにウキウキしてるからね。
 流石に、ここで前言撤回するほど鬼では無い。

「ご主人様?」
「ん?」
「何でもないでーす」

 ……楽しそうだ。

 そうか、そんなに狩しに行きたかったのか。
 こればっかりは女将さんやらスタッフの娘に頼むわけにもいかないもんな。
 獣っ娘って結構いい子だし。
 あまり迷惑はかけたくないのだろう。
 今回だって、俺が冒険者だと知ってたからこそ頼めたって所かね。

 そのまま大通りを抜ける。
 街の外へ。

 狩猟と言ったら森が王道よな。
 街道の方にも魔物やら動物やら出てこない訳ではないけど。
 ちょっと数が少ない。

 暖かくなってきて、冬は冬眠してるようなのも動き出してるだろうし。
 絶好の時期。
 その分、強力な魔物なんかも出るかもしれないが。
 そこは俺が気をつけるとしよう、魔眼使って見張ればまず問題はない。

 街道沿いに少し進むと川が目に入った。

 雪もほぼ溶け、暖かくなって来たとはいえまだまだ春先。
 普段より少ないが湯気がのぼっている。

 ぴくっと反応する獣っ娘。
 確かに目を引く光景ではあるが……、はて?
 興味ある様子。

 てっきり、森で動物相手に狩猟したいのかと思っていたのだけど。
 魚でも獲りたいのか?
 それならそれで別に構わないが。
 春先ではありつつ。
 湯気がのぼってる所からわかるように、この川は源泉が流れ込んでいて結構温かいのだ。

「どうした、ちょっと入ってみるか?」
「……」

 俺の言葉に、ジトッとした目を向けられる。

 え、何故?
 責められるような事を言ったつもりはないのだけれど。

 それに獣っ娘の頬がうっすら色づいてる様な。
 あ、そういえば!
 奴隷商から彼女のこと買った後。
 連れてく前に、体綺麗にしないとって連れて来たんだっけ?

 確かあの時は……
 汚れていたのはもちろん、服もボロボロで。
 川に流されちゃって、

「エッチです!」

 当時の光景を思い出していた所。
 げしっと、太ももの辺りを蹴られてしまった。

 いや、ごめんて。
 どうも俺の考えは獣っ娘相手にも筒抜けらしい。
 そういうつもりで言った訳じゃないから、ね?
 謝るから許して欲しい。

 それ以上の事をした仲なのだし。
 別にいいじゃんと思わないでもないのだが。
 そういう事ではないのだろう。

 獣っ娘の機嫌をとりつつ、森の中へ。

 この森、転移の行き先に設定していたり。
 硫黄もどきを取りに行ったり。
 温泉街に来るたび普段からちょくちょく入っているのだけど。
 いつもとは景色がまるっきり違うな。
 街中でも感じたが、それ以上にガラリと変わってる印象がある。

「もう、行っていいですか?」
「もちろん」

 獣っ娘がくんくんと鼻を動かし。
 我慢出来ないとばかりに、俺に聞いて来る。

 ここで待てをする理由もないしな。
 好きに狩ってくれ。
 しかし、嗅覚頼りにみつけようとしてるらしいが。
 それでいけるのだろうか?

「……こっち!」

 しばらく獣っ娘の事を見守っていると。
 何やら感じたらしい。
 迷いなく、森の奥へと駆け出した。

 へぇ、やるな。

 ここは温泉街で、森の中にもいくつもの源泉がある。
 近くを流れる川にも。
 水が温水になるぐらいには流れ込んでるし。
 温泉地特有の、クセの強い匂いが漂ってると思うのだけど。
 よく嗅ぎ分けられたものだ。

 奴隷時代から合わせれば、それなりの期間ありそうだし。
 この匂いに慣れたってとこなのだろうか?

 そんな事を考えつつ。
 獣っ娘の後を追う。
 こちらを気にする様子もなく全力疾走である。

 この感じ、昔の事を思い出すな。
 前世の話だ。
 確か、年は10歳ほど離れていた気がする。
 仲のいい従姉妹が居た。

 目を離すと危ないからね。
 それに、一緒に遊んでいて楽しかったから。
 元気よく走る彼女。
 その後ろを散々走らされたっけ?

 毎回へとへとにこそなったが。
 いい思い出だ。

 まぁ、俺はブラック企業に入って。
 盆も正月も実家に帰らなくなっちゃったからね。
 それっきりなのだけど。

 懐かしいな、もう結婚でもしてる頃かね。

「ご主人様。みてみて」

 これは、ネズミだろうか?
 突然走り出した獣っ娘の事を追いかけつつ、少しばかり過去に思いを馳せていた所。
 いつの間にやらその類の小動物を手に持っていた。

「おぉ、すごいな」
「でしょー?」

 俺に獲物を見せて、ニッコニコである。
 見るからにテンションが高い。

 初めての狩が成功したのと。
 後は、今までお預けくらっていた獣人としての本能が満たされたののダブルパンチだろうか?
 ご満悦らしい。
 これ以上ないぐらいのドヤ顔。

 実際、凄いと思う。

 初めての狩で成功したのだ。
 当然向こうも捕まったら終わりだから、死ぬ気で逃げるわけで。
 自然界に忖度は無い。
 真正面からやり合っての勝利である。
 よくやった。

「ばっちいからな、咥えたりしちゃダメだぞ」
「はーい」
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