兵器な少女

哀上

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26話 お義父様

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26話 お義父様
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 ヴィーナに連れられ、職員室まで来た。
 私の真っ赤な顔、もしかしなくても学校中に見られちゃってたよね。
 あぁ、もうどうしよう。

 変な噂とか立ったりしないよね?
 いや、そもそも手を繋いで歩いてる時点で手遅れ?
 でも、女の子同士だし別にそれぐらいなら普通だよね?

 うん、大丈夫なはず。
 余計な事は考えない。
 たぶん、楽しくいきるためのコツだ。

「ヴィーナさん、リーリアさん、こちらです」

 職員室に着くと担任ともう1人、初対面の教師が私たちの事を待っていた。
 もう1人の教師は担任とは違い結構歳が行ってる。
 教師に連れられ、私たちは別の部屋に案内される。

 ……応接間?

 職員室で話さないって事は、やっぱりそういう事なのかな?
 他の先生に聞かれるわけにもいかないもんね。
 担任は中に入らないらしく、もう1人の教師に続くように私たちは中に入った。

 コンコン

「失礼します」

「「失礼しまーす」」

 部屋には、見知らぬ男性がいた。
 高そうなスーツをきっちりと着こなしている。
 教師がぺこぺこしているし、お偉いさんなのかもしれない。

 学校にいるお偉いさん、校長先生とか?

「先生、本日はようこそおいでくださいました」

「先生はやめてください。あなたにそう言われると、どうも変な気分になる」

「そう言うものでしょうか?」

「卒業して何年経っても、先生は先生なんですよ。それに今日の私はただ保護者としてきただけなので、校長が下手に出る必要はないかと」

「そう言っていただけると、教師冥利に尽きます。ですが……」

 違った。
 初対面の教師の方が校長だった。
 確かに、結構おじいちゃんだなとは思っていたけど。

 この男性は学園のOB?ってやつらしい。
 しかも、校長がぺこぺこするぐらい偉い人。
 この学校、結構権威ありそうな学校なんだけどな。

 何者なんだろう?

 ヴィーナの顔を伺うと、驚いたような表情をしていた。
 え?
 知り合いなの?

 ヴィーナの知り合いで、偉い人って、

「……パパ?」

 そう誰にも聞こえないぐらいのこえでつぶやいた。
 やっぱり?
 そうか、この人ヴィーナのお父さんか。

 なぜに学園に。
 昨日のあれ関連って事で良いのかな?
 でも……

 いや、政治家だし関係はあるんだろうけどさ。
 と言うか、主に動いてくれたのはこの人のはずだ。
 博士の話を聞いた感じの想像でしかないけど。

 確か、反戦争派閥の人で私を学園に通えるようにしてくれた人。
 そんでもって、私の勝手な行動で結構な不利益を受けた人だ。
 でも、わざわざ直接来る事じゃないよね。

 理由がわからない。
 確かに迷惑はかけたが、謝罪を求めに来るほど暇じゃないでしょ?
 求められれば素直にあやまるけどさ。

 しかも、かなりのお偉いさんなんでしょ?
 それが私の前に来るって。
 私が政敵の実験の産物だって知ってて、怖くはないのかな?

 私にそんなつもりは微塵もないけど、もしかしたら殺されるかもとか。
 昨日警察に銃火器の類はすっからかんにされたけど、別にそんなものが無くても人を殺せる。
 それこそこの恵まれた身体能力を活かすだけで、逃げる間もなく瞬殺だろう。

 あ、もしかして?
 こっちじゃないかもしれないのか。
 なるほど。

 わざわざヴィーナが一緒に呼ばれて、その親がここにいる。
 しかも、やけに校長がぺこぺこしてる。
 昨日、ヴィーナが襲われた方の話かな?

 私の事は内々で処理したとして、ヴィーナが襲われたのはしっかり問題として残ってるもんね。
 むしろ手を出しにくい私の問題よりも学園からしたら重要だ。
 早急に解決する必要があるだろう。

 生徒が学園付近の店で襲われた。
 自分のことが大変すぎて忘れていたが、かなりの重大事件だ。
 そして、勝手に私の件と同一視しちゃってたけど、これ全く別の問題だよね。

 この事件自体は表沙汰になるって事なのかな?
 それ考えたら、別に警察の件の言い訳とかいらないか。
 勝手に勘違いしてくれる。

 銃を持った生徒が不審者に襲われたのだ。
 警察が来ることは全くおかしくない。
 そしてここは、被害者の親と学園の話し合いの場って事か。

 え?
 私は?

「ヴィーナは昨日の電話ぶりだな。そして、君がリーリア君だね?」

「あ、はい」

 校長との話がひと段落ついたのか、ヴィーナのお父さんがこっちに挨拶して来た。
 私の名前知ってるんだ。
 いや、存在自体は当然知ってるだろうけど個体になんて興味ないと思っていたから。

 政治家のお偉いさんか。
 随分とイメージと違う。
 もっと冷たい目をしてるイメージがあった。

「昨日はありがとう。君がいなかったら娘はどうなっていたことか」

 そう言って頭を下げられた。
 なんか新鮮だ。
 思い返してみれば、こうやってお礼を言われた経験はあんまりないな。

 軍では、作戦は遂行して当然だった。
 出来なくて怒られる事はあっても、成功したからといって何もない。
 特に私は特殊だったから。

 だから新鮮だし、気分が悪いものじゃない。

「いえ、お礼を言われるほどの事は……」

 でも、お礼を言われるほどの事じゃない。
 むしろ私がお礼を言わなきゃいけないレベルだ。

 昨日の件はもちろんだし、そもそもこの学園に来たのもこの人のおかげだ。
 ヴィーナと出会えたのは全てこの人のおかげ。
 と言うか、ヴィーナがこの世に生まれたのもこの人のおかげだ。

 あれ、もしかして神様?

 しかも、わざわざ私みたいなのに律儀にお礼って。
 軍の人と同じく、私の事情は知っているはずだ。
 ……そうか、平和主義者なんだっけ。

 私のことも人に見えてるって事なのかな?

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