世界を越えてもその手は

犬派だんぜん

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5章 新しい街の建設

5-3. 帰らない決意 *

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「ユウくんは、もうアルさんと結婚しちゃえば?」
「そうすればアルさんにちょっかい出す人もいないだろ」

 この世界には貴族以外は戸籍もないので、結婚は教会で宣言するだけだ。庶民には手続きもないし、種族も性別も関係ない。
 そういう意味では、ドガイの中央教会で、神様であるブランの前でアルは僕に誓ってくれている。

「僕は迷子になって、家に帰りたいけど帰り道が分からないんだ。でも諦めきれなくて。だけど、もし帰れたら、アルとは別れなきゃいけなくて」
「そのウルフでも帰れない?」
「うん」
「アルさんは知ってるの?」
「知ってる。だからアルは僕には何も求めない。ただ僕の欲しいものを与えてくれるだけで」
「ユウくんは、それが不安なんだね。アルさんの元カノはきっかけでしかなくて」
「そう、だね。帰れないって、ホントは分かってるけど、もう一度、家族に会いたい」
「諦めきれないんだな」

 結局僕は、そこから進めないでいる。
 どうすればいいのかなんて、本当は分かっている。僕の覚悟だけの話だ。

 分かるよ。 スリナザルくんが、僕の目をまっすぐに見て言った。

「俺の両親はさ、魔物に殺されたんだけど、俺は子どもだったから最後の姿も見せてもらえなくて、朝別れたまま帰ってこなくて。だから、いつか帰ってくるって諦められなかったから、ユウくんの気持ちわかるよ」
「辛いこと思い出させてごめん」
「コーチェロの家で育ててもらったから不幸じゃなかったよ。ユウくん、いまアルさんが死んじゃったら後悔しない?アルさん、ダンジョン攻略中らしいけど、モンスターにやられて帰ってこないかもしれないよ」
「スリナザル!」
「その時にユウくん後悔しないの?目の前にいる人が明日もいるとは限らないって、ユウくんも知ってるだろう?」

 僕は、自分がアルの前からいなくなることばかり考えていたけど、命が軽いこの世界ではアルが僕の前からいなくなる可能性がある。そのことが頭から完全に抜けていた。


 シリウスの3人と一緒に、ゾヤラの街に戻ってきた。
 この街をひとりで出る前に、アルと泊まっていた宿へ行くと、アルはまだ部屋を使っていて、ダンジョン攻略でずっと不在にしていた。
 僕が戻ってきたら部屋を使っていいとアルが伝言を残してくれていたので、僕はその部屋に入り、シリウスの3人のために別の部屋をとった。アルが戻ってくるまで一緒にいてくれるので、だったら同じ宿のほうがいい。
 アルが戻ってきたらブランが分かるというので、僕の部屋で4人で他愛ない話をする。ダンジョンに潜った日から考えて、そろそろ攻略して戻ってきてもいいころだ。
 そわそわして落ち着かないのをシリウスの3人に宥められ、やっぱりダンジョンの前まで行こうとするのをブランに止められ、数日たったころに、ブランが「戻ってきた」と教えてくれた。

 すぐにダンジョンまで行こうと言っても、シリウスの3人はブランのスピードについてこれないのだから待っていろと、ブランは動いてくれない。
 じゃあ門まで行くと出ようとしたら、注目されるからとシリウスの3人に止められる。
 それでも行こうとする僕に、ブランとシリウスが折れて、街に帰ったらまず攻略報告に来るギルドに来て、アルを待っている。
 馬車で宿まで移動したために街にいることを知られていなかったので、アルと喧嘩をして街を出て行ったと噂の僕が現れたことにギルド内が騒然となったが、アルを迎えに来たのだと要件を伝えたら、待つ間は会議室を使ってくださいと通された。迷惑かけてごめんなさい。

 それでもじっとしていられなくて会議室内をうろうろしていたら、見かねたブランに、もふもふした毛に抱き込まれた。
 ブランの毛を撫でまわしたり、尻尾を三つ編みにしてみたり、なんとか気を紛らわしていたら、アルが到着したとブランが教えてくれたので、会議室を飛び出す。

「アル!」

 アルを見たら止まらなくて、そのまま飛びついた。怪我もなさそうで、よかった。

「おかえり」
「ただいま。ごめんね。無事でよかった。アルもおかえり」
「ああ。ただいま」

 ぴったりと抱き着いて、久しぶりのアルを堪能する。アルが髪や頬にキスしてくれる。僕も返したいけど、今は抱き着くのに忙しい。

「おふたりさん、盛り上がるのは分かるが、まずは移動しような。ここ邪魔だからな」

 アルの隣にいる冒険者に言われて周りを見ると、ギルド中が僕たちを見ていた。恥ずかしい。
 でもアルから離れられなくて、だけど首に抱き着いているので僕の足は浮いていて歩けない。悔しい。
 仕方なく一度腕を解いて、腰に抱き着きなおす。はいはい、歩いた歩いた、と追い立てられて、会議室に戻った。

 アルと同行したパーティーのダンジョン攻略報告を、アルに抱き着いたまま聞いている。シリウスの3人も、いてもいいなら聞きたいとの希望をギルドも攻略したパーティーも許可したので、一緒に聞いている。
 アルと一緒に攻略したのは、ここゾヤラを中心に活動するAランクのパーティー「ポポタム」で、近くSランクに昇格するだろうと期待されているパーティだ。

 攻略済みのダンジョンなので、簡単な聞き取り調査に答えた後、そのまま会議室を借りて、ドロップ品を精査する。
 アルのマジックバッグに全部入れているので、何を引き取って何を買い取りに出すかは、これからだ。アルが会議室にドロップ品を出していく。シリウスも買取担当の職員も興味深々で見ている。

 マジックバッグがドロップしていた。ギルドの職員の鑑定によると、容量は小で時間遅延や停止はない、マジックバッグとしては一番性能が低いものだ。先にブランに聞いていたけど結果は同じだ。ポポタムが引き取りを希望したが、アルも希望し、ポポタムにカークトゥルスの容量中を代わりに出すからと、譲ってもらった。
 さっきアルにこっそりシリウスに渡したマジックバッグと、残っているものを確認されたのはこのためだったようだけど、なんで容量小がほしいんだろう?

「ユウを連れて帰ってくれた礼だ。使ってくれ。助かった、ありがとう」

 そう言って、アルがマジックバッグをシリウスに渡した。
 受け取れません、というシリウスの3人に、アルが小声で何かを伝えている。なんだろう?ブランに聞こえたか聞いたら「容量大のマジックバッグの偽装用だ」と教えてくれた。なるほど。
 シリウスは、だいぶ断っていたけど、結局押し切られて受け取っていた。

 ドロップ品は、ポポタムの欲しいものを引き取って残りは買い取りに出し、ポポタムが引き取る分も含めた買取金額の半分をアルがもらうことになった。
 容量中のマジックバッグ1つはポポタムに小の差額で売って、残りのマジックバッグから、いくつか僕たち用のものを除いて、ギルドの買取に出した。「え?容量特大?時間遅延?え??」と買取担当の職員が鑑定結果に混乱している。
 カークトゥルスで2つ出たうちの1つはアルがもっていて、もう1つシリウスにと思ってたんだけど、断られちゃったので買い取りに出した。
 ここでは買取金額が払えない、おそらく国が買い取るので決まってから渡してほしい、可能であれば王都ニザナに持っていってほしい、と震える手でマジックバッグを返された。
 ポポタムも、容量中を出してもらえて申し訳ないって思ってたけど、あれ見ると容量中ぐらいならいいよなって思えるな、俺たち超ラッキー、と話している。
 そんな大事なの、これ。商人が使うかな?と思っていたのに。

「ユウくん、自分がアイテムボックス持ってるから分かってないみたいだけど、容量小と中でもだいぶ違うんだよ、特大に時間遅延なんて、国しか買えないよ」
「そうなんだ」
「うん、そうなんだよ。容量小でも時間停止だったらSランクか貴族が買うくらいだよ。もうちょっと常識を学ぼうね?」

 何故かコーチェロくんに諭された。


 シリウスのみんなとは、5日後からブロキオンに一緒に攻略に行くことを約束して、部屋の前で別れた。

「ユウ、セレナにはユウとのことを伝えて、帰ってもらった」
「うん」
「ユウがいなくて寂しかった」
「うん」
「顔を見せて」

 アルにのめり込むくらい抱き着いていたら、両手で頬を持って上を向かされた。身長差が悔しい。
 額、瞼、鼻の頭と順にキスして、最後に唇だった。そのまま口づけが深くなる。
 唇を離すと、愛おしいという表情で僕を見るアルと、視線があった。

「アル、僕は帰る方法が見つかっても帰らないって決めたから。帰る方法が見つかったら、きっとその時は泣くけど」
「ユウ……」
「ずっと、僕がアルの前からいなくなるって思ってたけど、アルが僕の前からいなくなるかもしれないと思ったら、それはダメだって。いつか帰れるかもしれない日のために、アルと今離れるのは嫌だ」

 僕は帰らない、とアルに決意を伝える。ブランとアルと一緒にこの世界で生きていくと、決めた。
 そう思うだけで涙が出てくるけど、もう一度家族に会いたいけど、でも家族に会うことを諦められないせいでアルを失うことは耐えられない。
 帰る方法が見つかったらその時は、きっとこの決断を後悔するんだろう。
 だからこの手を離さないで、抱きしめていてほしい。

 部屋に夕食が届くまで、そうして抱き合っていた。


「ユウ、今日はダメだ。優しくできない」
「いいよ。お願い、アルを感じたい。アルの好きにしていいから」
「ダメだ、明日は起き上がれないぞ」
「それでもいいから」

 アルはため息をついて、嫌だと言ってもやめないからな、と言った後、僕を押し倒した。そして、いつもよりも乱暴に服を脱がされ、性急に身体を暴かれた。
 その先は、嵐の中で翻弄され、泣き叫んだ気がする。

「ほら、スタミナポーションだ」
「んぅ、はぁ、はぁ、ぁっ……ぁぁっ」

 もうどれくらいアルを受け入れているのか、分からない。なんど気を失って、アルに起こされたんだろう。
 いつも僕に甘いアルが、もう無理だと泣いても、そうか、と言うだけでまた動き出すので、僕はただただ喘いでいる。もはやアルにしがみつく手の力もないし、声もあまり出ない。叫ぶのにも体力がいるのだと初めて知った。
 身体はアルから与えらえる快感を受け止めて、アルをより奥へ受け入れようとビクッビクッと僕の意志に関係なくアルを締め付ける。

「ユウ、ふっ、中が気持ちいいな」
「……ぁ……ぁん…………ぁっ……」

 僕のものはとっくに出すものも無くなって、力を失くしているのに、快感は止まらない。
 強すぎる快感に泣いても、ここが気持ちいいんだなと、さらにそこを責められ続け、もうずっと気持ちいい以外何も考えられない。

「ユウ」
「ん……あ、る…………ぁっ」
「最後に、奥で俺を受け入れろ」
「…………ぉ、く……?」

 これ以上奥なんてない。もうアルに触られてないところなんてないと思っていたけど、違った。
 アルは僕の足を持って、自分の肩にかけ、一気に体重を乗せて、貫いた。

「っああああーーーーーーーっ!!!」

 待って待って待って、怖い、気持ちいいけど怖い、気持ち良すぎて怖い、やだ、待って!
 身体が勝手に跳ねてアルから逃げようとするけれど、押さえられているので逃げられない。

「っああっあっ、やあっ、ああああーーーーーーーっ!!!」
「くっ、逃げるなっ」
「やあぁっ、だめっ、あああっ、あっあぁっ、あああっ」
「出すぞっ」
「ああっ、んあっ、ああああああああああーーーーーーーーーーーっ!!!」

 今まで感じたことないいお腹のかなり奥深くでアルの魔力を感じた、と思ったところで、僕の意識はプツンと切れた。


 翌日の昼もだいぶ過ぎてから目が覚めたが、身体が怠くて動かせない。
 熱が出ているから大人しくしておけ、とブランが尻尾で優しくなでてくれる。ブランのひんやりした毛が気持ちいい。
 水を飲もうとベッドサイドに置いてあったコップを持ったつもりが、手が滑ってコップが落ちて割れてしまった。その音を聞きつけて、アルが寝室に入ってきた。

「ユウ、大丈夫か?」
「お水飲みたい」

 アルが僕を起こして背中を支え、水を飲ませてくれる。はあ、冷たい水が身体に染み渡るなあ。
 ベッドに戻ってブランに擦り寄る僕の頭を、アルが撫でてくれる。

「ブランがもふもふアイスノンだ。ふふっ」
「ご機嫌だな。大丈夫か?」
「大丈夫じゃない。身体が痛い」
「だからダメだと言っただろう」

 それでアルが満足してくれたならいい。
 今まで全く本気じゃなかったんだと、僕が怖がらないように自分の欲望を抑えて優しく手加減をしてくれていたのだと、思い知らされた。過ぎた快楽に怯えて泣いても、懇願しても、やめてくれなかった。
 でも、僕にむき出しの感情をぶつけてくれることが嬉しかった。自分の欲をさらけ出してくれることが嬉しかった。

 隣の部屋に食事が届いているらしいが、今は食べたくない。ポーションを飲むか聞かれたけど、やめておく。こんなことで飲むのはちょっと違う気がする。
 アルがベッド脇に座って、僕の手を握り、手の甲にキスをしてくれる。

「もう少し眠れ」
「紳士なアルもかっこいいけど、強引なアルもかっこよかった」
「そういうことを言うとまた襲うぞ」

 今は無理かなあ。
 つないだ手と、優しく頭を撫でてくれる手に安心して、眠った。
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