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世界を越えてもその手は 続6章 災禍の中の希望 6
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◆ゾヤラの冒険者ギルド(21. もふもふの代償)
「ティグリスも現場か。心強いな」
「あいつらはここでテイマーの警護だそうだ」
「警護ならシリウスがいるぞ? 交代か?」
「一緒にやるらしい」
「ここから出ないのに、そんなに必要か?」
「きっと尻尾要員だ」
「獣道の分の補充か」
◆ゾヤラの冒険者ギルド(21. もふもふの代償)
「ブラン、ティグ君に挨拶して。ほら」
『フン』
「そんないじわるするなら、お肉あげない。ティグ君、お肉何がいい?」
『(それは俺のだ!)』
「だったら、ちゃんとティグ君に挨拶」
『(……ティグリス、久しぶりだ)』
「ゴロニャン」
『(これでいいだろう? 肉をよこせ)』
「まずはティグ君から。お客様より先に食べるなんて、お行儀が悪いよ」
((いやいや、テイマー、マーナガルム様にそんな))
((巻き込まれたティグリスが、小っちゃくなって、かわいそう))
◆ゾヤラの冒険者ギルド(21. もふもふの代償)
「どけ! テイマーに会わせろ」
「ここはお貴族様が来るようなところじゃないんですよ」
「私の邪魔をするのか? この危機的な状況も分からぬ、腕っ節しか取り柄のないやつらのくせに」
「あんた、どこの領の貴族だ?」
「タカビシャ領だ。分かったら、通せ」
「あふれの対応を行う冒険者の邪魔をするってことは、タカビシャ領のあふれには冒険者の助けは必要ないってことだな。おいみんな、聞いたか?」
「聞いた聞いた。知り合いにも言っとく」
「くっ。覚えていろ!」
「冒険者は腕っぷしが自慢なんで、細かいことは覚えてられないんですよ。おととい来やがれ!」
「ギルドの外で警戒している引退した冒険者が強すぎて、ギルド職員の出番がないですー」
「貴族を追い返すのは、俺たちティガーの役目のはずなんだが、そもそもギルド内に貴族が入ってこない」
「お前らの仕事は、ティグリスにテイマーの相手をさせることだろう」
「いや、ギルドから貴族の警戒と言われているんだ」
「そんなの建前に決まってる」
「テイマーの機嫌とってこいよ。あいつがいなくなったら、前線のポーションが不足する。ってことは、そのティグリスが生命線なんだ」
「このあふれを乗り切れるかどうかは、ティグリスにかかっている」
「そうだぞ、ティグリス。責任重大だぞ」
「ぎゃん」
((本気なのか、場を和ますためにふざけているのか、分からない))
◆あふれた上級ダンジョン「キリヌス」前(21. もふもふの代償)
「聞いたか? ゾヤラにモンスターが飛んでいったらしい」
「街は無事なのか!?」
「ああ。神獣様がド派手な魔法で撃退したらしいぞ」
「なんとお優しい」
「なあ剣士、神獣様はゾヤラにいるテイマーを守りに行ったって本当か?」
「……」
「違うのか?」
「アレックスに聞くな。神獣様のお気持ちは、神獣様にしか分からない」
「なんか気になるものでもあったんだろ」
「これでテイマーを守るために行ったのなら、契約者は誰だって話だよなあ」
「ここで戦っている剣士のことも、ほったらかしだもんなあ」
「テイマーだけ助けたんじゃ、剣士の立場がないよなあ」
「やっぱり、甘いもの説が正解か? お気に入りの店でもあったんかな」
「……」
「アレックス、元気を出せ」
◆ゾヤラの冒険者ギルド(22. あふれの終わり)
「ブラン、宴会に出すためのお肉とってきて」
『(断る)』
「頑張ったみんなのために、美味しい魔物を狩ってきてくれたっていいじゃない」
『(なぜ他人の肉のために労力を割かねばならないんだ)』
「けち」
(ユウくんって、ウルフのこと、便利な何でも屋だと思ってるよな)
◆ゾヤラの冒険者ギルド(24. 寝坊)
「アレックス、朝から悪いな」
「起きていたから気にするな。それで、テオ、なんの用だ?」
「貴族が押しかける前にと思ってな。テイマー殿は?」
「寝ている。ここのところ眠れていなかったようだから、寝させてやってほしい」
「構わないよ。連絡もなく来たのはこちらだ」
「遅くなってすみません」
「ユウ、起きたか。髪がはねてるぞ」
「あ、うん。起こしてよ」
「疲れているだろう。しばらく寝ていてよかったのに」
「僕よりアルのほうが疲れてるのに、ごめん。身体は大丈夫?」
「ユウが横にいてくれたおかげで、ぐっすり寝られたから、もう平気だ」
((イチャイチャは後でやれ))
◆ゾヤラの冒険者ギルド(25. お菓子品評会)
『モンスターも減っちゃったから、つまんない。ダンジョン、もう行ける?』
「まだだ。あふれたダンジョンに一度潜る」
『ん? ダンジョンに行くんだよね?』
「そうだが、隅々まですべてのモンスターを倒して回る。リネには退屈だろうから、もうしばらく遊んでいてくれ」
『じゃあ、全部オレが倒してくるよ。だから、準備してて』
「待て、リネ! ダンジョンを壊すなよ! リネ!」
「神獣様、いってらっしゃーい!」
「よろしくお願いしまーす!」
「ダンジョン壊すなって言ったの、聞こえてたと思う? 大丈夫かなあ?」
「……」
(おい、掃討戦大丈夫か? 入ったらダンジョンの順路が変わってるとかないよな?)
(あの神獣様なら、全部燃やして、草も生えてないかもな)
(いきなり大穴空いてたりして)
(地図を作り直すくらいの気持ちでいく必要がありそうだな)
「剣士と獣道は、ブロキオンに向かってくれ。確認はアルムーザを中心に行う」
「ギルドマスター、必要なら国軍も派遣しよう」
「別行動なら、魔剣を返す。テイマー、助かったよ」
「いえ、まだ持っていてください。リネが見逃したモンスターがいるかもしれませんから」
「神獣様が、そのようなこと……」
(言ったら不敬だけど、ありそう)
(ぼろぼろ見落としてそう)
(『ごめーん、気づかなかったー』って言いそう)
(『ダンジョン間違えちゃった』ってのは、さすがにないと信じたい)
(ない。それはない。ない、よな?)
((あるかも……))
「まだ借りておけ。用心に越したことはない」
「そ、そうだな」
◆ゾヤラの冒険者ギルド(25. お菓子品評会)
「王子、まともな奴だったな」
「俺、ファンになっちゃった」
「王族ってふんぞり返っているのかと思ってた」
「そんなのを氷花に近寄らせないだろ。出ていかれたらこの国が終わるぞ」
「あー、一回やらかしてるもんな」
「王族も必死か」
「魔剣と、売りに出したマジックバッグを返せって言われたら、まじでこの国終わるな」
◆ゾヤラの冒険者ギルド(25. お菓子品評会)
「殿下、魔剣の献上をなぜ断られたのですか。殿下から兵士に貸し出すという手もありましたのに」
「私の人気取りのために使えと?」
「魔剣ならば、兵士たちの忠誠心を集める格好のネタになりましたでしょう」
「そういうことにアレックスを巻き込みたくない、というのもあるが、そもそも提案された状況がな……」
「と言いますと?」
「余っているから使わないか、と言われたので、聞かなかったことにした」
「魔剣が余っている……」
「あいつらにはその程度のものなんだろう。だから今回も、持ち逃げされてもおかしくないのに、貸し出した」
「自分の中での魔剣の価値が揺らぎますね」
◆ ゾヤラの冒険者ギルド(26. ブロキオンの準備)
「ギルドマスター、掃討戦にマジックバッグも貸しましょうか?」
「助かるが、いいのか?」
「はい。食料やポーションを入れるのに使ってください。時間停止がいいと思いますけど、いくつ必要ですか? あ、ドロップ品を持って帰るのに普通のも必要ですね」
「あ、ああ。ありがとう。ちなみに容量は?」
「大です。時間遅延の特大はアルが使っているので、ごめんなさい」
「いやいや、大で十分だ。一つでもあれば、かなりありがたい。って、なにやってるんだ。ちょっと待て。そんなにいっぱい並べるんじゃない!」
「こっちが上級ダンジョン用で、こっちが中級用。食料と、ポーションと、水は、時間停止の大を一つずつ。ドロップ品は普通が二、三個あれば足りるかな? あ、テントも入れたいですよね。他に持っていくものってあったっけ?」
「おい、ルフェオ。テイマーはいつもあんな感じなのか?」
「ああ。魔剣もマジックバッグも、ユウにとってはただの便利な道具だ」
「あれだけあったら、いったいいくらになるんだ……」
「人の命よりも価値のあるものなどない、というのが、ユウの信念だからな」
「だが、アレックス、持ち逃げされそうになってから慎重になってるんじゃなかったのか?」
「このメンバーなら必要ないと判断したんだろう」
「そういうところ、ほんとユウは甘いねえ。そこがユウのいいところだけど」
「ティグリスも現場か。心強いな」
「あいつらはここでテイマーの警護だそうだ」
「警護ならシリウスがいるぞ? 交代か?」
「一緒にやるらしい」
「ここから出ないのに、そんなに必要か?」
「きっと尻尾要員だ」
「獣道の分の補充か」
◆ゾヤラの冒険者ギルド(21. もふもふの代償)
「ブラン、ティグ君に挨拶して。ほら」
『フン』
「そんないじわるするなら、お肉あげない。ティグ君、お肉何がいい?」
『(それは俺のだ!)』
「だったら、ちゃんとティグ君に挨拶」
『(……ティグリス、久しぶりだ)』
「ゴロニャン」
『(これでいいだろう? 肉をよこせ)』
「まずはティグ君から。お客様より先に食べるなんて、お行儀が悪いよ」
((いやいや、テイマー、マーナガルム様にそんな))
((巻き込まれたティグリスが、小っちゃくなって、かわいそう))
◆ゾヤラの冒険者ギルド(21. もふもふの代償)
「どけ! テイマーに会わせろ」
「ここはお貴族様が来るようなところじゃないんですよ」
「私の邪魔をするのか? この危機的な状況も分からぬ、腕っ節しか取り柄のないやつらのくせに」
「あんた、どこの領の貴族だ?」
「タカビシャ領だ。分かったら、通せ」
「あふれの対応を行う冒険者の邪魔をするってことは、タカビシャ領のあふれには冒険者の助けは必要ないってことだな。おいみんな、聞いたか?」
「聞いた聞いた。知り合いにも言っとく」
「くっ。覚えていろ!」
「冒険者は腕っぷしが自慢なんで、細かいことは覚えてられないんですよ。おととい来やがれ!」
「ギルドの外で警戒している引退した冒険者が強すぎて、ギルド職員の出番がないですー」
「貴族を追い返すのは、俺たちティガーの役目のはずなんだが、そもそもギルド内に貴族が入ってこない」
「お前らの仕事は、ティグリスにテイマーの相手をさせることだろう」
「いや、ギルドから貴族の警戒と言われているんだ」
「そんなの建前に決まってる」
「テイマーの機嫌とってこいよ。あいつがいなくなったら、前線のポーションが不足する。ってことは、そのティグリスが生命線なんだ」
「このあふれを乗り切れるかどうかは、ティグリスにかかっている」
「そうだぞ、ティグリス。責任重大だぞ」
「ぎゃん」
((本気なのか、場を和ますためにふざけているのか、分からない))
◆あふれた上級ダンジョン「キリヌス」前(21. もふもふの代償)
「聞いたか? ゾヤラにモンスターが飛んでいったらしい」
「街は無事なのか!?」
「ああ。神獣様がド派手な魔法で撃退したらしいぞ」
「なんとお優しい」
「なあ剣士、神獣様はゾヤラにいるテイマーを守りに行ったって本当か?」
「……」
「違うのか?」
「アレックスに聞くな。神獣様のお気持ちは、神獣様にしか分からない」
「なんか気になるものでもあったんだろ」
「これでテイマーを守るために行ったのなら、契約者は誰だって話だよなあ」
「ここで戦っている剣士のことも、ほったらかしだもんなあ」
「テイマーだけ助けたんじゃ、剣士の立場がないよなあ」
「やっぱり、甘いもの説が正解か? お気に入りの店でもあったんかな」
「……」
「アレックス、元気を出せ」
◆ゾヤラの冒険者ギルド(22. あふれの終わり)
「ブラン、宴会に出すためのお肉とってきて」
『(断る)』
「頑張ったみんなのために、美味しい魔物を狩ってきてくれたっていいじゃない」
『(なぜ他人の肉のために労力を割かねばならないんだ)』
「けち」
(ユウくんって、ウルフのこと、便利な何でも屋だと思ってるよな)
◆ゾヤラの冒険者ギルド(24. 寝坊)
「アレックス、朝から悪いな」
「起きていたから気にするな。それで、テオ、なんの用だ?」
「貴族が押しかける前にと思ってな。テイマー殿は?」
「寝ている。ここのところ眠れていなかったようだから、寝させてやってほしい」
「構わないよ。連絡もなく来たのはこちらだ」
「遅くなってすみません」
「ユウ、起きたか。髪がはねてるぞ」
「あ、うん。起こしてよ」
「疲れているだろう。しばらく寝ていてよかったのに」
「僕よりアルのほうが疲れてるのに、ごめん。身体は大丈夫?」
「ユウが横にいてくれたおかげで、ぐっすり寝られたから、もう平気だ」
((イチャイチャは後でやれ))
◆ゾヤラの冒険者ギルド(25. お菓子品評会)
『モンスターも減っちゃったから、つまんない。ダンジョン、もう行ける?』
「まだだ。あふれたダンジョンに一度潜る」
『ん? ダンジョンに行くんだよね?』
「そうだが、隅々まですべてのモンスターを倒して回る。リネには退屈だろうから、もうしばらく遊んでいてくれ」
『じゃあ、全部オレが倒してくるよ。だから、準備してて』
「待て、リネ! ダンジョンを壊すなよ! リネ!」
「神獣様、いってらっしゃーい!」
「よろしくお願いしまーす!」
「ダンジョン壊すなって言ったの、聞こえてたと思う? 大丈夫かなあ?」
「……」
(おい、掃討戦大丈夫か? 入ったらダンジョンの順路が変わってるとかないよな?)
(あの神獣様なら、全部燃やして、草も生えてないかもな)
(いきなり大穴空いてたりして)
(地図を作り直すくらいの気持ちでいく必要がありそうだな)
「剣士と獣道は、ブロキオンに向かってくれ。確認はアルムーザを中心に行う」
「ギルドマスター、必要なら国軍も派遣しよう」
「別行動なら、魔剣を返す。テイマー、助かったよ」
「いえ、まだ持っていてください。リネが見逃したモンスターがいるかもしれませんから」
「神獣様が、そのようなこと……」
(言ったら不敬だけど、ありそう)
(ぼろぼろ見落としてそう)
(『ごめーん、気づかなかったー』って言いそう)
(『ダンジョン間違えちゃった』ってのは、さすがにないと信じたい)
(ない。それはない。ない、よな?)
((あるかも……))
「まだ借りておけ。用心に越したことはない」
「そ、そうだな」
◆ゾヤラの冒険者ギルド(25. お菓子品評会)
「王子、まともな奴だったな」
「俺、ファンになっちゃった」
「王族ってふんぞり返っているのかと思ってた」
「そんなのを氷花に近寄らせないだろ。出ていかれたらこの国が終わるぞ」
「あー、一回やらかしてるもんな」
「王族も必死か」
「魔剣と、売りに出したマジックバッグを返せって言われたら、まじでこの国終わるな」
◆ゾヤラの冒険者ギルド(25. お菓子品評会)
「殿下、魔剣の献上をなぜ断られたのですか。殿下から兵士に貸し出すという手もありましたのに」
「私の人気取りのために使えと?」
「魔剣ならば、兵士たちの忠誠心を集める格好のネタになりましたでしょう」
「そういうことにアレックスを巻き込みたくない、というのもあるが、そもそも提案された状況がな……」
「と言いますと?」
「余っているから使わないか、と言われたので、聞かなかったことにした」
「魔剣が余っている……」
「あいつらにはその程度のものなんだろう。だから今回も、持ち逃げされてもおかしくないのに、貸し出した」
「自分の中での魔剣の価値が揺らぎますね」
◆ ゾヤラの冒険者ギルド(26. ブロキオンの準備)
「ギルドマスター、掃討戦にマジックバッグも貸しましょうか?」
「助かるが、いいのか?」
「はい。食料やポーションを入れるのに使ってください。時間停止がいいと思いますけど、いくつ必要ですか? あ、ドロップ品を持って帰るのに普通のも必要ですね」
「あ、ああ。ありがとう。ちなみに容量は?」
「大です。時間遅延の特大はアルが使っているので、ごめんなさい」
「いやいや、大で十分だ。一つでもあれば、かなりありがたい。って、なにやってるんだ。ちょっと待て。そんなにいっぱい並べるんじゃない!」
「こっちが上級ダンジョン用で、こっちが中級用。食料と、ポーションと、水は、時間停止の大を一つずつ。ドロップ品は普通が二、三個あれば足りるかな? あ、テントも入れたいですよね。他に持っていくものってあったっけ?」
「おい、ルフェオ。テイマーはいつもあんな感じなのか?」
「ああ。魔剣もマジックバッグも、ユウにとってはただの便利な道具だ」
「あれだけあったら、いったいいくらになるんだ……」
「人の命よりも価値のあるものなどない、というのが、ユウの信念だからな」
「だが、アレックス、持ち逃げされそうになってから慎重になってるんじゃなかったのか?」
「このメンバーなら必要ないと判断したんだろう」
「そういうところ、ほんとユウは甘いねえ。そこがユウのいいところだけど」
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