世界を越えてもその手は 裏話

犬派だんぜん

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世界を越えてもその手は 続1章 神なる存在 2

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◆モクリーク中央教会(6. 付き合い方)

「ねえ、ブラン、アルが大変そうなんだけど」
『何がだ』
「リネと上手に付き合っていく方法って何かないの?」
『手がかかるのはユウで慣れているだろう』
「僕はあんなに気まぐれじゃないよ!」


◆モクリーク王都ニザナのダンジョン(6. 付き合い方)

「なあ、神獣様見たか? 見てみたいけど会えないんだよなあ」
「俺は見た。あれは……遠くから眺めて拝むのがいいと思う」
「どういうことだ?」
「話しかけたヤツが消し炭にされたって聞いたが」
「いや、髪の毛だけ燃やされたらしいぜ」
「神だけに髪ってか?」
「「「……」」」
「お前ら、反応してくれないと俺の心が傷つくだろう!」
「はいはい。おもしろかったよ」
「で、なんで遠くから眺めるのがいいんだ」
「あの神獣様、ものすごーく自由だ。それはもう、剣士が手を焼くほどに」
「剣士は面倒見がいいだろう? 上手にテイマーの面倒見てるじゃないか」
「本当に詳しく聞きたいのか? 神獣様に対する夢が壊れるぞ?」
「教えてくれよ」
「まあいいが。俺は同じセーフティーエリアにいたんだけどな、おそらく教会のお抱え料理人が用意したんだろう豪華な料理を目の前にしながら、隣のパーティーのやつの携帯食に興味をもった神獣様が……」
「神獣様が……?」
「『それなにー? 美味しいの?』っていきなり飛んで、噛り付いた」
「「「は?」」」
「で、まずいって吐き出してだな、慌てて剣士が回収した」
「「「……」」」
「獣道が神獣様のされたことだからってフォローしてたが、セーフティーエリア中が微妙な空気になったぞ」
「剣士はテイマーの子守だけじゃなく、神獣様のお守りもしなきゃいけないのか」
「剣士、がんばれよ」


◆モクリーク中央教会(7. 王家の事情)

「ユウの世界には王はいなかったのか?」
「いる国もあったよ。僕の国は、うーん、王様に当たる人はいたんだけど、実権はないというか」
「ギルドの運営方法のようだと言ってなかったか?」
「そうだよ。形だけ王様がいる、みたいな?」
「なぜ形だけ?」
(象徴天皇制と立憲君主制ってどうやって説明すればいいの? テストに出るよって言われて言葉しか覚えてないんだけど。異世界トリップで一番チート出来るのって社会科の先生だったりしない?)


◆モクリーク中央教会(8. 懐かしい人との再会)

「ドガイの方々、神獣様は天真爛漫でいらっしゃいます。私への第一声は、その宝石いいな、でした」
「大聖堂に飾ってある宝石ですね。契約の対価は魔剣だと伺いましたが」
「神獣様によりますと、『キラキラしていてカッコいい』そうです。魔剣ではなく装飾品としてお気に召されたようです」
「チルダム司教様が最初にお会いになられたと伺いましたが」
「私もご降臨は拝見しておりませんが、ユウさんに聞いた話では、マーナガルム様がヴィゾーヴニル様を咥えていらっしゃったそうです。その後にお二方が言い合いをされているところから見ておりましたが、ユウさんのためにアレックス様との契約を勧めるマーナガルム様と、調度品にしかご興味のないヴィゾーヴニル様で、ちょっとした言い合いをされて……」
「部屋にいなかった我々は何が起きているのか分からず、マーナガルム様のお怒りで国が亡びるのではないかとみな怯えておりました。これはモクリークでも私と、その場にいたチルダム司教、ツェルト助祭しか知らないことですので、ご内密に」
「かしこまりました。今回もそういうことが起きてもいいように、心の準備をしておかなければ、悲鳴をあげそうですね」


◆モクリーク中央教会(8. 懐かしい人との再会)

「料理棟の前に、ブラックバイソンが一頭が置いてあるのですが、ご存じでしょうか」
『俺への捧げものだろう』
「え? まさかブラン、狩って来たの? っていうかどうやって運んだの?!」
『何のことだ』
「まさか、大きくなって咥えてきたんじゃないよね? 見た人が驚くからやめてよね?!」
((そういう話ではないと思います……))
「ど、どのような料理をご所望でしょうか」
『あの宿のシチューだ』
「確かにすごく美味しかったけど、オリシュカさんはお客様だよ。お願いなんて……」
『あのシチューで釣れば、ヴィゾーヴニルも戻ってくるだろう』
「オリシュカさんにお願いしてください! みなさん、リネに会いたいでしょうし。ね」
((ユウさんも食べたいんですね))


◆モクリーク中央教会の厨房(8. 懐かしい人との再会)

「ここにあるものは全て使ってもらって構わん。その代わりにレシピを教えてほしい」
「レシピなんて、そんな大層な料理じゃありませんよ。ただの庶民の煮込みですよ」
「だがあのウルフが気に入っているんだ。旨いに違いない」
「嬉しいですね。うーん、隠し味がよかったんですかね。分量も適当なんで、まあ見ててください」


◆モクリーク中央教会の客間(9. 水の魔石)

「ウィズくん、もっと近くにおいでよ」
「ホホッ」
「遠慮しなくて大丈夫だって」
「ホッホッ」
「背中に乗ってみたら? ウルフに乗るオウルってかっこいいよね!」
「ホーッ!」
((ユウさん、フォレストオウルが畏れ多さに逃げようとしていますよ))
『オウル、問題ない。ユウが楽しんでいるんだ。付き合ってやれ』
「キュルゥ」
((フォレストオウル、頑張って!))
(ユウがウィズをブランの背中に乗せる)
「オウル、オン、ウルフ。いいねえ」
「ピ……」
「ユウ、ほどほどにな」
「アル、こうするとウィズくんとブラン、両方一緒に撫でられるよ。天国~」


◆モクリーク中央教会(10. 思い出のシチュー)

「私たち、場違いではありませんか?」
「大丈夫です。マーナガルム様の加護を持つ従魔に、マーナガルム様お気に入りのシチューです。胸を張ってください」
「いや、そんな大層なものじゃないんですけど」
「ユウさんはずっと、お二人に会いにソントに行きたいと言っていましたよ」

「あんた、思い出の味だって。嬉しいねえ。ぐすっ」
「ああ、宿をやっていて、本当によかったな」

『オウル、お前いいもの食べてんな』
「ホッホッ」
『マーナガルムがあげてなかったらオレの加護あげるのに』
「ホー」

『今度旨いもの食べに行ってもいいか?』
「もちろんです。お越しの際は腕によりをかけて料理を作りましょう」
「お、おい。そんなこと言っていいのか?」
「きっと庶民の料理がお珍しいんだろうよ。最初だけさ」
(オリシュカは俺より度胸あるな)


◆モクリークの中央教会(11. 友との会話)

「ヴィゾーヴニル様、ドガイより、こちらの首飾りを献上いたします」
『どれどれ。これいいね! 気に入ったよ』
「あ、ありがとうございます……っ!」
『ねえ、つけて』
「それはドガイの大司教様より、大司教様?」
「申し訳ございません、大司教はただいま神獣様にお声をおかけいただいたことで感激しており、動けませんので、なにとぞモクリークの大司教様にお願いしたく存じます」
「では、私が」
『どう? 似合う?』
「ええ、お似合いですよ、グァリネ様」
『あんた、ありがとな。アルに自慢してくるー』
(バタン)
「だ、大司教様!」
「ドガイの大司教様がお倒れにっ」


◆モクリークのダンジョン(12. 神獣の力)

「何か来るぞ!」
『よけてー』
「すまない!」
「「「……」」」
「今のって……」
「神獣様だな」
「ダンジョン内を飛んでいったのか」
「神獣様に乗って飛んでるのか」
「うらやましい」
「飛んでみたい」
「なあ、テイマーってどうやったらなれるんだ?」
「そもそも人が乗れるような魔鳥っていたか?」


◆モクリークのダンジョン(12. 神獣の力)

『やっと開いた。行こー』
「すまない、先に行かせてほしい」
「あ、も、もちろんです」
「一緒に入るか?」
「いいのですか?」((神獣様の戦い、見てみたい))

「フロアボスが出てくるぞ」
『邪魔! アル、乗って。下に行くよ』
「ドロップ品は好きにしてくれ」
「あ、えっと、俺たちは何も……。あっという間に行ってしまった」
「ていうか、今、何が起きたんだ?」
「フロアボスが出てきた瞬間にやられた?」
「分からん。神獣様の魔法だろう、多分」
「それで、このドロップ品はもらっていいんだろうか。俺たち何もしてないけど」
「……買い取ってもらって教会に寄付するか」
「そうだな。それで、神獣様と一緒にフロアボスを倒したって自慢しようぜ!」
「それがいいな。寄付したら、堂々と自慢できるな」
「俺たち、神獣様と共闘したんだ!」
「あれが共闘なのかは謎だが、一緒にフロアボス部屋に入ったもんな」


◆モクリーク中央教会(13. 神の存在)

「この世界は、神様が実体化してるから、神様が身近なのかな」
「身近ではないだろう。神獣も数百年に一度くらいで目撃の噂が流れるが、人が神獣だと言っているだけで、本当にそうかは確かめようがないし」
「え、ブランって自称神様?」
『ユウ、これからは我のこの偉大なる毛に触らせてやらんぞ』
「ごめんなさい。許してください。神様、仏様、ブラン様!」
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