トビラひらき

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守りたいもの 前編

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 昔から、ヒーローになりたいと思っていた。
ピンチの時にあらわれる、絶対頼れるそんな男に‥‥僕は憧れたんだ。

だから、女の子が、どこぞの変態ロリコン野郎、まぁ変質者に湿ったシャツを無理矢理着させられそうになってた時だって、警察に通報する事も忘れて、当時小学生5年生の俺は1人立ち向かっていった。
‥‥誰だ今、警察に通報するのが先とか言ったやつ!

今思えばそれは無謀で危険な行為だった。それでも、大切な人を守りたい、その気持ちと勇気は本物だ。

だから僕は、思った以上にヘタレだった変質者を追い払った後に彼女に言ったんだ。

「俺は困ってる人がいたら、絶対に誰よりも早く駆けつける!だから泣かないで!俺が涙を止めるから!」

今思えば恥ずかしいセリフ。だけど俺の正直な気持ちだ。

それから僕は、人を守れる仕事、警察官になった。


あの時の女の子は今や俺の大切な人だ。
彼女も市民もみんな俺が守る。

昔、憧れたスーパーヒーローのように‥‥

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「コルァァァ!死ネェェェェェイ!」
「ヒャーハッハー!」

 俺の目の前で、人がまた死んだ。人は親指程度の鉛に当たれば死ぬ。さっきまで、お巡りさん助けて!と必死に俺を頼ってくれた、少女も。街中で普通に歩いていた、無数の人々も今やただの肉塊だ。
今のご時世、どこぞからアサルトライフルを奪ってむやみやたらに発砲する快楽殺人犯がこんな下町にあらわれるなんて。

こういう時って、スーパーヒーローの出番だ。人々のピンチを涙を止めるために
立ち向かう‥‥‥

なのに!俺は足がまるで動かない!

目の前で助けを求めた少女が撃ち殺された時に、悟った。

無理だ!あの時の変質者とはわけが違う!音速を超える鉄塊を正義感だけで受け止められるものか。

このまま、助けを待つしか‥‥

助け?
待つってなんだよ!
こういう時に助けになるのが警察官じゃないのかよ!
みんなを守るために俺は警察官になったんじゃないのか!

憧れの理想を理想のままにしてたまるかよ!
こんな木陰に隠れてる場合か!

俺は震える体を無理矢理起こす。そして、快楽殺人犯のもとへ‥‥

「祐くん!」

彼女の声がした、どうやら俺の勤め先に会いに来てくれていたらしい。そして、巻き込まれたようだ。彼女は俺を呼び止める。

「祐くん?今1人で突っ込もうとしてたでしょ?‥‥‥ばか!いつぞやのロリコンとは違うんだよ!もうすぐ、警察が本格的に動き出すはず。町の駐在さんの出る幕じゃないの!」

「それでも!警察が来る前に何人死んだと思ってる!今、みんなを守れるのは俺だけなんだ!」

「あんたが死んだら元も子もないでしょうが!このスカポンタン!‥‥祐くんのそういうところ、好きだよ。でも、好きだからこそ!そんな無謀なことはやめて!
涙を止めるスーパーヒーローがヒロインを泣かすなんてありえないんだから!」

「‥‥‥正直、こんなデンジャラスな状況で言われるなんて‥‥それでも嬉しいよ。だけど!ここで何もしないわけにはいかない、とりあえずお前は交番に来い!とりあえず、ここから離れて隠れるぞ!」


交番なら、案外安全だ。中から警察の人々が来るまで、状況を連絡できる。下町の駐在さんでも、それくらいはできるはずだ!

と思ったんだが‥‥見つかってしまった。
交番の前にて、快楽殺人犯に。

案の定俺の大切な人は、人質に取られてしまった。

助けたくば撃たれて死ネェェェェェイ!だそうだ。

考える事から、成すことまで。狂ったまさに快楽殺人犯。

俺が死ななきゃ彼女は死ぬそうだ。こんな、クソ野郎に彼女を、奪われる自分が憎い。

こういう時どうする?

①彼女を犠牲にする。
そんなこと、俺の信念にかけて許さん!

②俺が犠牲になる
快楽殺人犯の事だから、話が通じる相手ではない。俺が死んだ後に彼女も殺すかもしれない。そんな結末断固拒否だ。
万が一彼女が助かったとしても彼女は俺を悲しんでくれるだろう。
涙を流させてしまう!
そんなのダメだ!

③刺し違えてでも、相手のアサルトライフルとは天と地の差のピストルで快楽殺人犯を、撃ち抜く!

外せば彼女に当たるかもしれない。ていうか刺し違えてたら、俺も死ぬ。結局バットendだ!

なら方法は1つ!

④快楽殺人犯より先に、このピストルで撃ち抜く。
もちろん殺しはしない。狙うは腹だな‥‥それしかない。

そんなのできるかじゃなく、俺の信念に乗っ取って成功させる。
涙を流させず、大切な人を守る可能性にかけて!

④に決まりだ!
絶対助ける!

「祐くん!」

彼女が俺の名を呼ぶ!それはそうだろう!いくらなんでもと思うだろう‥‥‥

だって俺は、彼女を見捨ててそのまま交番の中に逃げ込んだのだから

恐怖に負けてしまった、俺は①という、最悪の選択をしたのだ。

体が勝手にとは、まさにこの事だ!頭でダメだと思っても。心が恐怖に勝てなかった。
いや、無意識なんで関係ない。だって、それはどんな言い訳をしても俺が選んだ事なんだから。

扉を閉める前に彼女の顔が見えた。俺が助かったと、賢明な判断だと。大切な人が生き残る道を選んでくれて安堵しているような落ち着き。
なんて優しいのだろう、だが‥扉が閉まるその時に彼女が涙を流している事に気がついた。

扉はそれでも閉まる。

何がヒーローだ!大切な人も守れずに!俺はなんて、クソ野郎!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「俺は‥‥最低だ。クソ野郎!クソ野郎!この!クソ野郎!」

俺は交番の中でうずくまる。これからどうすればいいんだよ!俺はどうすればよかったんだ!

部屋に漂うコーヒーの香り、俺はその香りで落ち着きを取り戻すのだが。

この部屋にコーヒーなんてものは確か無かったはずだ。というか‥‥ここはどこだ?
扉の中には、いつもの交番ではなく、小洒落たワンルームがあったその中心には円卓があり部屋は円形になって、360度無数の扉がある。
俺が入ってきた扉の対には、1人の男が立っていた。

「いらっしゃいませ‥どんな未来をお買い求めに?私、この店の支配人ドーアと申します。」

「はぁ?あんた一体なんなんだ?ここはなんなんだよ?」

「貴方の未来のターニングポイントと言ったところですかね?貴方が選んだ扉がその答えですが。」

「何わけわかんねえ事言ってんだ!ていうかお前は何もんだよ?」

「まあまあ!細かい事はいいではないですか!細かい事を省かせてもらう代わりに、貴方に素敵な未来をプレゼントしましょう。どうです?」

「何が素敵な未来だ!俺に素敵な未来だと?大切な人を守る力もなく、挙げ句の果てには見捨てた俺に素敵な未来だと?んなもん、あるかよ!」

「そう、しかしそれはあなたの望む未来ではない。だから、私が提供して差し上げますよ。あなたの望む未来を。
もう一度扉を開けてごらんなさい。そこには、大切な人を守る力を持つ自分がいますよ。
まぁ、簡単に言うとパラレルワールドに貴方を送るみたいな感じです。
その世界には、貴方はどんな悪にも屈しない力と正義感を持っています。勿論、それ故に未来も変わりますよ。
もう、今のような思いをすることはない。
守れなかった未来もなかったことになります。」

「そんな、うまい話ある訳‥‥」

「あるんですよ!勿論タダではありませんがね。」

「胡散臭いな。それに俺の何を取るつもりだよ。」

「それは、貴方が1番わかってるはずですよ?もう、支払い済みですしね。」

「‥‥‥‥‥本当に、俺は守れるのか?力が手に入るのか?」

「嘘はいいません。きっと貴方は理解するはずですよ。守るとは何かを。」

罪悪感、劣等感、惨めさ
俺は冷静さを欠いていたのだ。
こんな訳の分からん状況を信じてしまうなんて。

でも‥‥‥本当に。
本当に守る力があるのなら。



俺は扉を開く。

「ふふ、貴方に良い未来があることを願って。」



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