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幕間

Vol.2 戦う理由

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ディー「やっほー、ディーだよ」
ハートの女王「は、ハートの女王です」
ディー「これがアリスちゃんとダムの言ってた例の場所かぁ」
ハートの女王「テーブルの上の紙を読めばいいらしいですけど……」
ディー「これだね、なになに?『今回のテーマ:戦う理由』だってさ」
ハートの女王「理由、ですか」
ディー「まぁ正直誰かに任せときゃいいとは誰かしら思ってるだろうし、終わりも見えないしなんで戦ってるんだろうね」
手毬糸「それについては私が答えよう」
ディー「おっ、代表さんだ。ホログラムなんだねー」
ハートの女王「久しぶりに見た気がします」
手毬糸「加入する時に説明もあっただろうが改めて説明する。大まかなこととしては、この世界を裏から維持することだ」
ディー「この前アリスちゃんにも説明したね」
手毬糸「悪感情を放置していれば、世界に歪みが生じる。精神作用という形でな」
ハートの女王「犯罪とかが増えるってことですか?」
手毬糸「その通りだ、ハートの女王。悪感情が溜まりすぎると、表世界、つまり現実世界に流れ、人の精神を蝕む」
ディー「結果、犯罪率上昇……ってことね」
手毬糸「戦いに終わりはない。残念ながらな」
ハートの女王「辛い……ですね」
手毬糸「何を言う。人知れず世界を裏から救っている……最近の文学にはよくあることだろう。君達はその役割を持っているのだよ」
ディー「そう言われれば聞こえはいいんですけどねー」
手毬糸「私も昔『狩人』のアバターとして戦っていた身だ。気持ちは分からないでもない。この役職についてからは一層そう思ったがな」
ディー「ストレス発散にもなるしいいんですけどね」
ハートの女王「それに……理解ある人が多いですし、居心地はいいですよ」
手毬糸「それは何よりだ。話を戻すが、悪感情は日々溜まっていく。思想の違いにもよるが、童話には勧善懲悪なものが多い。それ故、確実に悪感情を抱くだろう」
ディー「確かに、ハートの女王は嫌われちゃうよね」
ハートの女王「……それ、私の前で言います?」
ディー「やだなー、童話の中の登場人物の『ハートの女王』と、今ここに居るアバターとしての『ハートの女王』は別物でしょ?」
手毬糸「それでもデリカシーに欠ける物言いだ。慎め」
ディー「はーい」
手毬糸「で、だ。そもそもなぜ一般市民を戦わせるかというのも疑問に思うだろうな」
ディー「そう、一体何をすればこんなことさせられるんだって最初は聞きたかったんだよ代表さんに」
ハートの女王「私は特に……さっきディーさんが言っていたように、ストレス発散になりますから」
手毬糸「普通に考えれば、軍隊にそれをやらせればいいだろうが……それではあまりにも効率が悪い。軍もただではない、ならば一般市民から選別をしよう……というわけだ」
ディー「誰かが死んだらスペアを持ってこればいいですもんね。『アリス』みたいに」
手毬糸「……すまないとは思っている。だが、後任を決める権限は私にはない。全てはこの世界のシステムがやっていることだ。私達はそのシステムに従うだけ……」
ハートの女王「言い分も分かります、毎度人為的に選んでいたらそれこそ精神持ちませんし……それとして許せはしませんけど」
手毬糸「元々は義勇軍から始まった組織だ、恨むなら昔の奴らを恨め……それではディー、今回の総括を」
ディー「あっ、逃げた。まぁいいけど……『僕達が戦う理由は世界のため、やらないと世界の秩序が崩壊してしまう』ってとこ?」
ハートの女王「追加で、『戦いたくないのは分かるけど恨むなら昔の人を恨みなさい』もお願いします」
手毬糸「……少々重くなってしまったな、申し訳ない。『お菓子の家の魔女』に要請をしておく。ではな」
ディー「まぁ許してあげますよ」
ハートの女王「はい」
ディー「……で、終わったわけだけど。なんでこんなこと始めたんだろうね?」
ハートの女王「多分……お偉いさんのご機嫌取りじゃないでしょうか」
ディー「まぁ、仮にもこんな組織に出資しているところもあるらしいし。いいように使われてるのはなんかやだけどね」
ハートの女王「まぁまぁ……それより、魔女さんのお菓子食べに行きましょうか」
ディー「そうだね、気分転換気分転換」
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