あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

sae

文字の大きさ
98 / 145
続編/燈子過去編

君のすべてを抱きしめる(高宮)―1

しおりを挟む
 待ってるなんてカッコよく言ってみたものの、ハッキリ言って精神的にやられそうなほどのストレスが襲ってきている。


(吐きそう……)


 自分が弱くて情けないのは彼女と付き合い出してから気付かされているけれど、ここまでヘタレだとは思わなかった。


(織田さん何を言うんだろう。どう考えても昔のことの謝罪とやり直したいて話しか考えられない。わざわざ会って話すなんかそれしかないよな……えー、もうマジいやだー、胃に穴あきそー、死にそー)


 話を聞きたいと言ったのは自分なのに真実を目前にするとめちゃくちゃ後悔もあって、会わせたことを今更悔いていたりする。彼女が自分を好いていることは自惚れでもなく自信はある、けれど織田さんを前にしてお前に行くわけねーだろ、と全然強気に言えないのが猛烈に情けない。


(いや、織田さんだし。あの人の欠点てなに?数回しか会ってないけど、マジで見つからん)


 そこに昔結婚の約束までするほど好きだった相手、二人で話してたら気持ちが戻るのも全然考えられた。


(俺ってやっぱり、好きな子とはマジで結ばれない運命なのかも……)


 血でも吐きそうなほど胃が痛くなってきた頃、玄関の鍵が開く音がして犬のように反応してしまった。玄関まで主人を出迎えに行く忠犬……になりそうなところを必死で堪えてリビングで待つ。


「ただいま、遅くなってごめんね」
「ううん、おかえり……話せた?」
 今日ほど外面の良さと笑顔の処世術に感謝した事はない。とんでもないストレスを抱いて待っていたなんて微塵も感じさせないような声で返事した自分を心底褒めたい。


「うん……手、洗ってくる」
 そのまま洗面所に消えた彼女。表情と声色では全く見当がつかない。そもそも頭の中に良いイメージが出来てないから普通な態度だとしても勘ぐって怪しんでいる。


(どうしよう。とてつもない恐怖感……俺、人生でこんなにビビった経験ないぞ)


 どんなことも大体ストレスなく淡々とこなしてきた方だ。大学受験で落ちた時、あの時もショックを受けたけど逆に悔しさのが勝って一年本気で遊ばず勉強したら志望校がワンランク上がった。
 自分の力でなんとか出来るならする。悔しさや欲望さえあればそれを形にできる、そう思っていたけれど、人の気持ちまでは出来ない、それだけは一度も叶えられたことがない。


(やばい……やっぱ血吐くかも……)


 血でも吐けば母性本能全開の彼女なら心配してそばを離れないかもしれない……そんなふざけた思考で現実逃避を始めた脳を彼女の声が呼び戻した。


「駿くん」
「――はい」
「あのね……話、してもいいかな。織田さんと話してきたこと……聞いてくれる?」
「――はい」

 ハッキリ言ってカッコつける余裕ゼロ。馬鹿みたいに「はい」しか言えない俺がいた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

処理中です...