あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

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続編/高宮過去編

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 小さい頃から憧れでしかなかった兄は自分の期待をなにひとつ裏切らず社会を生きていた。
 外ではそんなパーフェクトな人なのに、家にいるときは蓋をしたように静かで何も言わない。何もかもわかったような顔をして家族の誰とも心を通わせようとしない。
 自分がいなくなることを誰もが望んでいるとそんな風に思っている気がしてそれをどうにかしたかったが、幼かった俺にそれをうまく伝えられる術がなかった。


 俺は嫌われていると思っていたから。兄にとって俺は目の上のたんこぶで、きっとうっとおしいんだろうと。だから余計距離を詰めるのが怖かった、嫌いだと直接言われたくなかった。
 はやく発作を治して、兄が出来ることを出来るようになりたい、ただそれだけを思って生きていた気がする。そしてその気持ちをいつも母さんにだけは伝えていた。


「颯がそんな風に駿を憧れてるの、お母さんはとっても嬉しいわ。駿もね、颯のこと大好きなのよ、ただお母さんが小さい頃に駿にいろんなことを我慢させてしまったからあの子をあんな風に大人にしてしまったの」
 兄のことを話す母はいつも悲しそうだった、自分ばかり責めて母もまた兄との距離のはかり方に悩んでいた。
 俺と母は似ていたのだ、兄への気持ちが大きすぎてそれを受け止めてもらえないと怖がっていた。拒絶されるならと自ら距離を保ってしまったのだ。


 大学受験に失敗した兄はそれから本当に勉強漬けの日々。ほとんど顔を合わせることもない。失敗した大学は有名私立大学でストレートで受かっていたら当然すごい、だから落ちたところでそんなにショックを受けなくても……そう言えるほどのランクのところ。でも一浪した兄はさらに学力を上げてそこよりもレベルの高い大学に合格してしまうから、正直家族中で絶句した。


「駿が春には家を出るわ……京都だから気軽には会えない場所ね」

 合格を手放しで喜べず、落ち込む両親。それでも兄の希望を尊重したいと何も文句など言えず、言えるわけもない。母はもう何も気持ちを言わないつもりなのだろうか、どれほど兄を心配して懺悔したい気持ちを持っているかということを。なにより伝えなくていいのか、離れる前に自分が誰よりも兄を大切に思っているのかを。

 なんとかして言わせたい、そして誰よりも兄に知らせたい。

 兄は知ってて知らないふりをし続けているんだろう、もういいじゃないか、いい加減許してやってほしい、嫌われているならと思い切って声をかけて撃沈した。


 ――もう構わないでくれ、放っておいてくれ


 その言葉が悲しかった、その言葉に涙が出た。
 それでも出ていく兄を引きとめられなくて、泣いた母を救ってやることも出来なかった。


 それから十三年、一度も会っていない――は、嘘だ。俺は実は定期的に兄に会いに行っている、どれも一方的に隠れてだけど。京都までも行ったし職場も行ったことがある。声なんかもちろんかけないけれど、遠目で見てその度に思っていた。
 心配で、は建前だ。単純に兄に会いたかった、年月が過ぎていくほど今の兄を知っていたい、その気持ちだけが募る俺はブラコンも度を越えている、マジでストーカー。


(めっちゃかっこいい、何あの人―――)


 顔はもう文句なしにかっこいいのに雰囲気か?子どもの時からもそうだけど、無駄に色気があってとにかく甘い。ふわっとした優しい印象が警戒心を緩めてくれるせいか兄の周りには基本人がいた。
 でも一人でいる時のふとした寂しそうな顔が無駄にまた色気を誘って男で弟の俺でもドキドキした。そんな兄が放っておかれるわけがない、そばには大抵綺麗な女性がいた、会いに行くたび一緒にいる女性は違うけど。


(なんか……クズっぽい気もするけどモテるから仕方ないのかな……しかし相手がとっかえひっかえな気がする)


 そして俺はその結婚する相手、美山さんももちろん知っている。母には当たり前に知らないそぶりを見せたけれど。

 しばらく彼女が切れていたっぽい兄のそばに現われたその人は今までと随分雰囲気が違う人。言葉は悪いけど、地味。でもあきらかに雰囲気が違うのはその彼女どうこうじゃない、兄がもう違う。兄が今までと全然違う。相手を見つめる瞳から信頼みたいな感情を感じた。


 二人を包む空気が今まで感じなかった独特の柔らかさを放っていて単純に目を奪われた。
 その人といる兄は今まで見たことがないほど幸せそうだったからだ。

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