夢の中にいさせて~今日からイケメンと添い寝生活始めます!~

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第22話、告げられる白鹿さんの悩み

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 口を挟んだ私を快く受け入れるような白鹿さんは笑顔で小首を傾げる。

「なに?」

 言い淀む私に白鹿さんがニコッと微笑んで優しい声で問いかけてくる。

「聞かせてほしいな。斑鳩さんの気持ち、なんでも」
「……お話を聞く限り……それは本当に私にだけしかメリットがないように思えます。私の為だけに白鹿さんを拘束することになります。そこまでしていただく理由がありません」

 ソフレになって私を寝かせてストーカー対策で彼氏のフリ? なぜそこまで……。その思いを白鹿さんは汲み取って指を軽やかに鳴らした。

「そう。ここからは俺のメリットの話になる」
「は?」
「その前に、俺の悩みになるんだけれど……」
「悩み……?」

 白鹿さんの口からこぼれた予想外の言葉に素直に反応した私。聞き返した私に白鹿さんは少し困ったような表情を浮かべて小さく頷く。
 
「HSPなんだ」

 (HSP?)

 って、なに? そんな私の気持ちを表情で汲み取ってくれたようで、白鹿さんはその悩みを丁寧に説明してくた。
 
「感覚刺激に敏感でね、昔から嗅覚過敏で悩まされている。日常的にストレスを蓄積しやすくて子供の頃はそれでパニック障害を引き起こしていた。この悩みはなかなか人には理解してもらえなくてね。大げさだな、とかそこまで? みたいな……それこそ家族にもわかってもらえずにいた。だから幼い頃は自分が過剰でおかしいんだろうって。分かってもらえない、じゃなくてみんなそれなりにそうでこれが普通のことなのかと無理矢理でも納得しようとしていた」
「感覚刺激……? それは嗅覚だけなんですか?」
「音とか光も割と苦手。でも嗅覚が一番のストレスかな。絶対的な許容量が少ないんだろうなぁ……過剰な感覚刺激によるストレスが蓄積されると五感が常に緊張状態になるらしくて、自律神経も乱れやすくなるんだ。外部刺激に振り回されてこう見えて俺も慢性的な不安状態を抱えている」
「そ、それはお辛いですね……」

 普段の白鹿さんを見かけていて、そんな心身状態とはとても思えなかったから単純に驚いている。

「病気……になればまた違うんだろうけどね。病気になりやすい繊細な素地ってだけ。HSPは人の感受性の強さの傾向を指す言葉なだけだから。医学的な診断書や治療が必要というよりは、生まれつきの五感や感情アンテナが鋭い性質ってだけの話。だからうまく付き合っていくしかない」
「そうなんですね……」

 薬や治療方法がないのは確かに辛い。持って生まれた特異的な体質なのならそれは個性と言うのか。でもそれがただのストレスと直結するだけならあまり喜ばしいことでもなさそうである。
 
「だから君の蓄積されるストレスの負担はそれなりに分かってあげられると思う。理由は違っても、悩んでいる人間とそうじゃない人間では理解の溝があるよね」

 白鹿さんのその言葉には素直に頷けた。理解しようと思っても結局抱えていたり、経験した人間にしかわからないことは多い。そんなことを思いつつ悩みを吐露してくれた白鹿さんに同情と若干の共感を得だしていた私に白鹿さんは穏やかな声で言った。

「嗅覚が過敏なせいで、日常の大半がストレスだった俺にとって、とても自然に心地よく受け入れられた匂いがあった。それが君の汗の匂い」

 (ん?)

「あの日、君を抱えた時は意識的に呼吸をコントロールして抱き上げていた。人と接触するときに無駄に嗅覚を刺激しないように生きるのは慣れてるからその癖と感覚で。でも抱きつかれたまま離してくれない。さすがに時間がかさむとどうしたって息を吸う行為は避けられない。至近距離……君の香りに直面した」
「そ、それは本当に申し訳ありません……」
「そしてその時思ったんだ。君から放たれる香りには不快感がないなと」
「は?」

 また何を言うのか。先ほどから白鹿さんはいたって真面目な顔でさらりととてつもない言葉を吐くではないか。やはりついていけない。

「だから俺にも十分メリットはある」
「……な、ないでしょう?」
「話聞いてた?」

 (聞いてたけど! 聞いてるけどぉ!)

「あのあの……か、勘違いでは!? そんな長年悩まされてることでたまたまですよ!」
「そうかな」
「そうです!」
「そうか。ならここでもう一度確かめさせて」

 (えー!)

 そう言って結局また壁ドン!

「今ここで君の香りを確かめてストレスを感じるか……確認しよう」

 離れたはずの白鹿さんの腕がまた壁につかれて私は白鹿さんの両腕に囲われることになった。

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