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目標のある幸せ ー卒業ー 第十六話
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未来にはそういったものの、一緒に仕事ができるようになりたいと思ってお見舞いに行ったのに、結果としてはいなくなってしまうこととなったことが、すべて自分のせいのように思えてならない。
ただ、私にはその人が自分の中できちんと考えて最後に決めたことを止めることもできない。
「私は、いらないことをしたのでしょうか?」
村雨部長に未来の気持ちを伝えたあと、自分の中ではどうしようもなくて聞いてみた。
「そんなことはない。服部が自分で決めたことだ。むしろ相羽がいたから、自分の体調を整えてきちんと卒業するということができるんだろ。そうじゃなかったら外に出てこられないまま卒業だってあり得たぞ」
「それでも、私は余計なことをしたような気がします」
「仕方がない奴だな。相羽、それは違うと思う。大体みんないつかは卒業するんだ。自分で卒業のことをきちんと決められただけでも、服部は幸せかもしれないって思うし、病気で仕方なくなんて残念だし嫌だろう。むしろこれから卒業まで服部のために、今してやれることを考えるのが相羽じゃないのか?」
「そう。そうですね。未来が自分で決めたのなら、未来を助けてあげないと」
「服部が話をしてきたら、俺もまた考えるからな」
村雨部長はそう言ってから相羽も頑張れよ、と会議室から出ていくのを見送ると、今まで未来がいた場面の記憶がよみがえってきていた。
「来月いっぱいで、卒業することになりました。いろいろとご迷惑をおかけするかもしれませんが、それまで頑張りますのでよろしくお願いします」
未来が仕事に復帰してから、みんなに卒業を決めたことを明るく報告すると、涙もろい朋子はせっかく復帰したのにと泣いていた。
そこにいた一期生の人たちは、卒業してしまうことよりも、元気になったこと自体が本当に良かったという感じだったが、三期生はさみしいですと言って未来に群がっていた。やはり一期生は未来の心の葛藤もわかるし、卒業について自分たちも身近なものとなってきているので、思うところが違うのだろう。
私がそんなことを考えながら見ていると、さなえがちょっとと言って私を呼ぶのでついていく。
「どうするのかって言うと? さぁちゃんは何が言いたいのですか?」
「未来が卒業するけどファンの人とかには握手会の時だけだよね」
「そうですね」
「何かしてあげたいんだけど、そういうの私は苦手だから紗良なら何かあるかと思って」
「ライブとかあれば挨拶とかもできるのでしょうけど、ちょうど何もない期間ですからね」
「だから、紗良が未来を送り出す何かを考えてよ」
「だからというのはよくわかりませんけど、考えようとはしているのですが、そういうのは私も苦手なんです。でも、もう少し考えてみます」
しばらく考えたことを頭の中でシミュレーションして、まとめたものを村雨部長に出しておいたところスケジュールの合間に村雨部長に呼ばれていつもの会議室に入れられた。
「無理じゃないか?」
「無理ですか?」
「俺はメンバーじゃないから、実際のところはわからないけど、お前たちのステージは綿密なリハーサルがあって成り立つものだろうに」
「サプライズにリハーサルはありません」
「だから無理だって言っているんだよ。全然関係ないところでリハーサルして、突然合わせられるわけがないと思うが。納得のいくように揃うのか? そりゃこっちも考えるとは言ったもののまだ何も出てないから人のことを言える状況じゃないが」
「この楽曲なら振付自体は全員が頭に入っているので、動線を間違えなければ可能なはずです。振付の先生にも確認してきました。私がきちんと位置を決めていればそこを目印にして揃えられるだろうとのことです」
「うそっ? これ、書いただけじゃなかったのか。やる気満々じゃないか」
「参加者を確認してから位置決めをして番号表を配布します」
「あっそう。もう止まりそうもないな。それで、あとは何をすればいいわけ?」
「場所の確保と配信の準備をお願いします。そこはやっぱり先立つものも必要になりますので。あと来てくれるメンバーのスケジュール調整も水面下で」
村雨部長が肺活量の検査をしているのではないか? というくらい長い溜息をついていた。
いろいろ考えた結果。私は未来の卒業の日に合わせて、超々ミニライブを配信したいと企画書を提出していた。正直なところ人を喜ばせるということが苦手なので、私と未来の中では思い出のあの曲とグループの代表的な曲を一曲ずつだけやって最後に挨拶をしてもらおうと考えたものだ。代表的な曲の時には来てくれるメンバーに入ってもらって未来に最後のセンターをしてもらう。
ただ、問題は本人を入れてのリハーサルはできないので、突然だと本人が戸惑はないかということだった。
「まあ、未来もプロですし、あとは私が何とかするということで」
未来と私の思い出の曲と言えば、あとは遥さんだ。
「紗良は本当にあの楽曲が好きだね」
「未来との思い出といえばあの曲以外ないと思いまして。記憶を取り戻した曲でもありますし」
「まあそうねぇ。じゃあ私が卒業する時も唄ってくれるの?」
「望まれるなら。唄わせてもらいます」
「ふふっ。楽しみにしよっと。でもそのあとの流れが恐ろしいんだけど。サプライズってこんなのドッキリでしょ。大丈夫なの?」
「できるだけ本人の動きは最小にして、たとえ止まってもおかしな感じにならないようにします。多分ですが……」
「さすがの紗良も、自分以外の動きは制御しきれないか」
村雨部長から場所の確保ができたとの連絡があり、未来に場所の許可をもらいましたので配信でファンの人にもお別れ会をしましょうと言って、最後の配信に向けて段取りの確認と練習を行うことにして、遥さんと三人で集まった。
「なんでこの曲で私がセンターなの?」
「なんでって、未来が主役ですし、最後なのですから思いっきり唄ってください」
「紗良が送り出してくれる唄が聞きたいのに」
「これは、未来のためでもありますが、未来のファンの人のために、未来が贈るものでもあると思うのですよ。だから配信にしてもらいましたし、最後に未来がここにいたっていう形を残したいのです。ネットで流れますからほぼ永遠に残りますが嫌ですか?」
「ううん。紗良が考えてくれたことなら私はうれしいし、ファンの人にも最後に挨拶できるならそれもすごくうれしい。ありがとう。遥さんもありがとうございます」
「私だって未来のことが心配だったし、こうやって最後に一緒にできてうれしいよ」
三人だけだから結構やりやすいよね、などと言いながら、代表曲の振付けも練習していたが、私がもう少しこの辺とか、ここでこういう感じなどと細かいことを言うので、三人しかいないのにそんなところで曲がる必要なんかないじゃない? と未来が突っ込んでくる。私は、会場があまり広くないみたいなので、そこに壁らしきものがあるって聞いているんですよ、と適当に答えた。
「壁って。最後だからどこかの小さいスタジオを借りてくれたんだね。メンバーを呼んでもいいかな」
「そうですね。でも場所は未来には内緒なので、私が呼んでおきますから呼びたい人を言ってください。来られるかどうか確認します」
「えー。サプライズなの? 飾り付けとかしちゃったり?」
「サプライズをそんなに聞いてはダメですよ。サプライズではなくなってしまいますから」
「だよね」
グループでサプライズを完全に隠ぺいするのは無理だと思う。スケジュールを見たりすればメンバーの動きは大体わかるし、私ほど気になることはなんでも知ろうと思うメンバーはいないと思うが、本人が他の話の中で聞いたときに矛盾を感じることもあると思うからだ。
そこでサプライズはあるということは隠さずに、本当は何をするかということを隠しておくことにした。まあ、結果的にどう思うかは本人次第なのだけれど。
当日の配信はできるだけ時間があれば見てもらえる人が多いように、少し遅いが十九時からにした。中学生メンバーもギリギリ出られるし、大人メンバーも仕事がひと段落ついている可能性も高い、未来の本当の最後という感じでもあるので良いだろうとの村雨部長の判断もあった。
詳細を聞いて、こんなに会場などに費用をかけてもいいのだろうかとも思ったが、特殊効果があるわけでもなく短い時間だし、配信は市場調査の一つだと思っているから問題ないといわれた。
マネージャーの真帆ちゃんと遥さんとで未来を迎えに行き、配信を行う会場に向かいながら、今日の配信の段取りについて確認をしていると、未来がスタジオってどこなのかと言っているうちに会場についた。
「えっと……。今日の配信って、ここでやるの?」
「……そうです。ここを借りてもらいました」
「大丈夫なの? 本当に? スタジオでもないし思ってた大きさとちょっと違うけど」
「大丈夫か? って聞かれると私もよくわからないのですが、村雨部長がここって言っていたので大丈夫なんだろうと思います」
私もこんなに大きなところは必要ないと思ったが、いろいろあってここしかなかったと村雨部長は言っていた。機材とかメンバーのいるところも確保できるし、大きい分にはいいだろうとのことだが、そういうところは適当なんだなと、普段の気配りの細かさとの境目はどこなんだろうと思う。
とにかくイベントでよく使用されているホールを使用しての配信が始まろうとしていた。
特別に作られたステージに来ると、軽く流れを確認しましょうということで、あらかじめ用意した半分本当のことが書かれていない台本を見ながら、打ち合わせを行った。
「紗良、この後ろの布は何?」
「あっそれはですね会場が広すぎて仕方なく覆うことにしたのです」
「そんなこと言って、ほんとはみんなが隠れているんでしょ。ちょっと見ちゃお」
「…あっダメです」
未来が見てしまうように、少し時間を空けてダメだと言った。
「チラっ……て、もう見ちゃったよ。本当に何にもない」
向こう側には配線の準備をしているスタッフの人がいるだけで、突然見られて二人であわてて挨拶をしていた。
「やった」そう思いながら私は未来を温かい目で見守っていた。
自分で確認したのなら何もない向こう側を何度も意識することはないだろう。未来が最後に呼びたいと言っていたメンバーや、見送りたいメンバーはバスで乗り合わせてくるということにしているだけで、実際には裏で準備をしている。
まだ到着していないような感じにしているだけだ。後ろを自分で見ないようなら見るように仕向けることも考えていた。
「もうすぐ配信の時間なのにみんな来てくれないのかな?」
「いえ、バスはもう出ているということですが、こんな時間に工事で渋滞しているみたいです。配信は始める時間が決まっていますから、最悪楽曲には来られなくても、最後の挨拶には間に合うはずとのことです。みんな間に合わなかったら楽曲は配信を見るっていっていました」
「さみしいけど、来てくれるんだし配信を見てくれるファンの人もいるんだから、頑張る」
「そうよ。メンバーとは頑張れば会えるけど、ファンの人達とはこれで最後かもしれないんだから頑張りましょ」
「そうですよ。遥さんの言う通りです。私も全力で頑張りますので、よろしくお願いします」
ついに配信の時間が来て、私が今日でグループ最後の未来の姿を目に焼き付けてほしいと伝えて楽曲が始まった。
今回は未来がソロパートを歌うのだが、グループを卒業するのがなぜかわからないくらい素敵な歌声だった。
私は未来と唄いながら、「未来のその優しさや、人への気配り、賢さすべてが人としてもパーフェクトだと思っていたのですよ。これからもそのままでいてください」という気持ちを込めて唄っていた。
未来と遥さんの歌声は本当に素晴らしいと思う。もちろん絵里奈の歌声も素敵だが、それとはまた違う澄んだ空気のような気持ちよさがある。二人に囲まれて唄っていると、森の中にぽっかりと開いた草原で鳥と一緒に唄っているようだな。そんな風に考えて気持ち良く唄っていると、すぐに終わりの時間が来てしまった。
「いけない。次のことを考えないと」
余韻に浸る間もなく未来をセンターの位置に立たせ私たちは二人で挟むようにシンメトリーの位置で、次の楽曲の準備をする。
私と遥さんは未来から後ろが見えないように両脇少し後ろに立ち、そして手を挙げた。
その瞬間仕切りを静かに落として、後ろに立っている全員が姿を見せる。
私は未来にそっとささやきながら離れた。
「これから何があっても、全力で楽しんでください」
そう言って、未来が「えっ?」と言うか言わないかのうちに、私と遥さんは自分の決められた位置にズレる。それと同時に後ろにいた恵美さんたちがサッと前に出た。
すぐに、ほぼ全員のフォーメーションで楽曲が始まった。
本当は初めに二期生を近くのフロントに配置したいと思ったが、さなえと真由美以外は未来が驚いて予測できない動きになった時に、きちんと対応しきれない可能性もあるので、基本的には今日来られる一期生にお願いした。
「いいよ。二期生の子たちには先に前に出て申し訳ないけど、私は大丈夫。なんといっても事故がないのが一番だからね。途中からフォーメーションを変えればいいよ。紗良は先に前に出るんでしょ」
恵美さんはそう言って快く引き受けてくれた。
「前に出るというか、きれいに見せるために遥さんとシンメトリーに移動します。位置決めをきちんとしたいので。私は先に一緒に唄うので本当は端でいいのですが」
「紗良は端が好きだよねぇ。それでいて、どこにいても目立つのがすごいわ。ところで私が卒業する時も何かしてくれるんでしょ?」
「恵美さんにですか? いえ、特に何も考えていませんが」
「なんでよ」
「恵美さんはご自身の卒業ライブで送られると思いますので、私が特別何かする必要はないのではないかと考えます。もちろんその時は全力で頑張りますし、心からおめでとうございますというのはします」
「なんという合理主義。何かしなさいよ。絶対に紗良に唄わせてやる」
楽曲が進み、恵美さんの言っていたように、フォーメーションを変えて二期生が前に出た。
私は前に居たので交代して後ろに下がったのだが、その時に横目で朋子を見たらいつものように号泣していた。よくそれで後ろにいたときに鼻をすすらなかったなと妙なところに感心する。
楽曲が終わり、全員が静止したところで最後の挨拶をしてもらおうと近づこうとすると、笑顔だった未来が突然座って泣き出した。
私は訳が分からなかった。
「えっ? なんで?」
「なんでじゃないわよ。紗良のせいでしょ。早く行って」
さなえに私のせいだと言われ、なお意味が分からないと思いながらも、後ろの誰かに背中を押されたので、駆け足で近寄り、腰を折った状態で泣いている未来を斜めに覗き込んだ。
「これから最後の挨拶なのですが、何かありました?」
横の方で「そんな聞き方あるか」というさなえの小さい突っ込みが聞こえたが、さっきまで笑顔で嬉しそうにしていたのに、こんなに泣かれるとは訳が分からないと思いながら、顔を上げて、こういう時はどうするんですか? という目で華さんを見ると、頭をなでなでするんだというジェスチャーをされた。
教えられた通りに、未来の頭をなでながらハンカチを渡して「一旦下がります?」と聞くともう大丈夫だからと言って立ち上がった。
「皆さん、ありがとうございました」
未来が一旦振り返り、メンバーに向かってお辞儀をすると、私に最後の挨拶をするねと言ってカメラの方を向いた。
「最後にこんな素敵なセンターをさせてもらって、メンバーみんなのやさしさに泣いてしまいました。皆さんにびっくりさせてしまっていたらごめんなさい」
もう一度小さくお辞儀をする。
「私ヴァルコスマイルの服部未来は今日でいなくなります。今まで、つらいことも楽しいこともいっぱいあって、でもすべてが私の中に生きていて、皆さんにお返しがしたくて、頑張ってもどうしようもなかったこともあったりして。それでもやっぱり頑張りたくて体調を崩したりしましたが、メンバーに支えてもらって、今は元気になりました。元気になったなら続けたらいいのにといわれるかもしれませんが、元気になったからこそ、私は新たな一歩が踏み出せるような気がしたんです。明日からは一人の服部未来になりますが、仲間がいなくなるわけではありません。これからは助けてもらうだけじゃなくて、私も誰かを助けられるように、新たな目標に向かって強くなりたいと思っています。ファンの皆さんとはこれでお別れになってしまいますが、ヴァルコスマイルを今までと同じように好きでいてください。そして今まで私がいたことで誰かを勇気づけられていたらうれしいです。本当にありがとうございました」
挨拶が終わりメンバーのみんなから拍手が上がると未来は笑顔で最後のお辞儀をした。
配信終了の時間になったので、締めの挨拶をしようと思ったのだが、未来が先ほど泣き崩れたことで来られなかったメンバーの手紙を渡す段取りを飛ばしていたことを思い出した。
「時間がなくてすみません。今日来られなかったメンバーからはここに手紙を預かっていますので、後で読んでください。この手紙で今日は全員参加です。今まで本当によく頑張りましたね」
そう言って愛おしい気持ちを込めて微笑むと、未来が紗良にそんな風に微笑まれて、そんなこと言われたらまた泣いちゃうと言って、号泣したところで配信が終了した。
配信終了後。めちゃくちゃ泣いている未来に三期生が今までありがとうございましたと群がっていたところで、恵美さんからひと言言われた。
「紗良は、どれだけ未来を泣かせば気が済むのよ」
「私が泣かせているのではなくて、ご自身で泣いているのですが」
何を言っているんだ? とみんなからは突っ込まれた。
でも最後に未来から「本当にうれしかった。一生の思い出にする。ありがとう」と言われたので、あれでよかったのだろうと思う。
未来はつらいことも楽しいこともいっぱいあったが、すべてが自分の中に生きていて、みんなに返したいと言っていた。私もライブできてくれているファンの人たちから声援をうければ、やる気が出てくるし、もっと喜んでもらいたいって思う。
「そうか、やっぱりそうだよな」
私は心の中でそう思った。
ただ、私にはその人が自分の中できちんと考えて最後に決めたことを止めることもできない。
「私は、いらないことをしたのでしょうか?」
村雨部長に未来の気持ちを伝えたあと、自分の中ではどうしようもなくて聞いてみた。
「そんなことはない。服部が自分で決めたことだ。むしろ相羽がいたから、自分の体調を整えてきちんと卒業するということができるんだろ。そうじゃなかったら外に出てこられないまま卒業だってあり得たぞ」
「それでも、私は余計なことをしたような気がします」
「仕方がない奴だな。相羽、それは違うと思う。大体みんないつかは卒業するんだ。自分で卒業のことをきちんと決められただけでも、服部は幸せかもしれないって思うし、病気で仕方なくなんて残念だし嫌だろう。むしろこれから卒業まで服部のために、今してやれることを考えるのが相羽じゃないのか?」
「そう。そうですね。未来が自分で決めたのなら、未来を助けてあげないと」
「服部が話をしてきたら、俺もまた考えるからな」
村雨部長はそう言ってから相羽も頑張れよ、と会議室から出ていくのを見送ると、今まで未来がいた場面の記憶がよみがえってきていた。
「来月いっぱいで、卒業することになりました。いろいろとご迷惑をおかけするかもしれませんが、それまで頑張りますのでよろしくお願いします」
未来が仕事に復帰してから、みんなに卒業を決めたことを明るく報告すると、涙もろい朋子はせっかく復帰したのにと泣いていた。
そこにいた一期生の人たちは、卒業してしまうことよりも、元気になったこと自体が本当に良かったという感じだったが、三期生はさみしいですと言って未来に群がっていた。やはり一期生は未来の心の葛藤もわかるし、卒業について自分たちも身近なものとなってきているので、思うところが違うのだろう。
私がそんなことを考えながら見ていると、さなえがちょっとと言って私を呼ぶのでついていく。
「どうするのかって言うと? さぁちゃんは何が言いたいのですか?」
「未来が卒業するけどファンの人とかには握手会の時だけだよね」
「そうですね」
「何かしてあげたいんだけど、そういうの私は苦手だから紗良なら何かあるかと思って」
「ライブとかあれば挨拶とかもできるのでしょうけど、ちょうど何もない期間ですからね」
「だから、紗良が未来を送り出す何かを考えてよ」
「だからというのはよくわかりませんけど、考えようとはしているのですが、そういうのは私も苦手なんです。でも、もう少し考えてみます」
しばらく考えたことを頭の中でシミュレーションして、まとめたものを村雨部長に出しておいたところスケジュールの合間に村雨部長に呼ばれていつもの会議室に入れられた。
「無理じゃないか?」
「無理ですか?」
「俺はメンバーじゃないから、実際のところはわからないけど、お前たちのステージは綿密なリハーサルがあって成り立つものだろうに」
「サプライズにリハーサルはありません」
「だから無理だって言っているんだよ。全然関係ないところでリハーサルして、突然合わせられるわけがないと思うが。納得のいくように揃うのか? そりゃこっちも考えるとは言ったもののまだ何も出てないから人のことを言える状況じゃないが」
「この楽曲なら振付自体は全員が頭に入っているので、動線を間違えなければ可能なはずです。振付の先生にも確認してきました。私がきちんと位置を決めていればそこを目印にして揃えられるだろうとのことです」
「うそっ? これ、書いただけじゃなかったのか。やる気満々じゃないか」
「参加者を確認してから位置決めをして番号表を配布します」
「あっそう。もう止まりそうもないな。それで、あとは何をすればいいわけ?」
「場所の確保と配信の準備をお願いします。そこはやっぱり先立つものも必要になりますので。あと来てくれるメンバーのスケジュール調整も水面下で」
村雨部長が肺活量の検査をしているのではないか? というくらい長い溜息をついていた。
いろいろ考えた結果。私は未来の卒業の日に合わせて、超々ミニライブを配信したいと企画書を提出していた。正直なところ人を喜ばせるということが苦手なので、私と未来の中では思い出のあの曲とグループの代表的な曲を一曲ずつだけやって最後に挨拶をしてもらおうと考えたものだ。代表的な曲の時には来てくれるメンバーに入ってもらって未来に最後のセンターをしてもらう。
ただ、問題は本人を入れてのリハーサルはできないので、突然だと本人が戸惑はないかということだった。
「まあ、未来もプロですし、あとは私が何とかするということで」
未来と私の思い出の曲と言えば、あとは遥さんだ。
「紗良は本当にあの楽曲が好きだね」
「未来との思い出といえばあの曲以外ないと思いまして。記憶を取り戻した曲でもありますし」
「まあそうねぇ。じゃあ私が卒業する時も唄ってくれるの?」
「望まれるなら。唄わせてもらいます」
「ふふっ。楽しみにしよっと。でもそのあとの流れが恐ろしいんだけど。サプライズってこんなのドッキリでしょ。大丈夫なの?」
「できるだけ本人の動きは最小にして、たとえ止まってもおかしな感じにならないようにします。多分ですが……」
「さすがの紗良も、自分以外の動きは制御しきれないか」
村雨部長から場所の確保ができたとの連絡があり、未来に場所の許可をもらいましたので配信でファンの人にもお別れ会をしましょうと言って、最後の配信に向けて段取りの確認と練習を行うことにして、遥さんと三人で集まった。
「なんでこの曲で私がセンターなの?」
「なんでって、未来が主役ですし、最後なのですから思いっきり唄ってください」
「紗良が送り出してくれる唄が聞きたいのに」
「これは、未来のためでもありますが、未来のファンの人のために、未来が贈るものでもあると思うのですよ。だから配信にしてもらいましたし、最後に未来がここにいたっていう形を残したいのです。ネットで流れますからほぼ永遠に残りますが嫌ですか?」
「ううん。紗良が考えてくれたことなら私はうれしいし、ファンの人にも最後に挨拶できるならそれもすごくうれしい。ありがとう。遥さんもありがとうございます」
「私だって未来のことが心配だったし、こうやって最後に一緒にできてうれしいよ」
三人だけだから結構やりやすいよね、などと言いながら、代表曲の振付けも練習していたが、私がもう少しこの辺とか、ここでこういう感じなどと細かいことを言うので、三人しかいないのにそんなところで曲がる必要なんかないじゃない? と未来が突っ込んでくる。私は、会場があまり広くないみたいなので、そこに壁らしきものがあるって聞いているんですよ、と適当に答えた。
「壁って。最後だからどこかの小さいスタジオを借りてくれたんだね。メンバーを呼んでもいいかな」
「そうですね。でも場所は未来には内緒なので、私が呼んでおきますから呼びたい人を言ってください。来られるかどうか確認します」
「えー。サプライズなの? 飾り付けとかしちゃったり?」
「サプライズをそんなに聞いてはダメですよ。サプライズではなくなってしまいますから」
「だよね」
グループでサプライズを完全に隠ぺいするのは無理だと思う。スケジュールを見たりすればメンバーの動きは大体わかるし、私ほど気になることはなんでも知ろうと思うメンバーはいないと思うが、本人が他の話の中で聞いたときに矛盾を感じることもあると思うからだ。
そこでサプライズはあるということは隠さずに、本当は何をするかということを隠しておくことにした。まあ、結果的にどう思うかは本人次第なのだけれど。
当日の配信はできるだけ時間があれば見てもらえる人が多いように、少し遅いが十九時からにした。中学生メンバーもギリギリ出られるし、大人メンバーも仕事がひと段落ついている可能性も高い、未来の本当の最後という感じでもあるので良いだろうとの村雨部長の判断もあった。
詳細を聞いて、こんなに会場などに費用をかけてもいいのだろうかとも思ったが、特殊効果があるわけでもなく短い時間だし、配信は市場調査の一つだと思っているから問題ないといわれた。
マネージャーの真帆ちゃんと遥さんとで未来を迎えに行き、配信を行う会場に向かいながら、今日の配信の段取りについて確認をしていると、未来がスタジオってどこなのかと言っているうちに会場についた。
「えっと……。今日の配信って、ここでやるの?」
「……そうです。ここを借りてもらいました」
「大丈夫なの? 本当に? スタジオでもないし思ってた大きさとちょっと違うけど」
「大丈夫か? って聞かれると私もよくわからないのですが、村雨部長がここって言っていたので大丈夫なんだろうと思います」
私もこんなに大きなところは必要ないと思ったが、いろいろあってここしかなかったと村雨部長は言っていた。機材とかメンバーのいるところも確保できるし、大きい分にはいいだろうとのことだが、そういうところは適当なんだなと、普段の気配りの細かさとの境目はどこなんだろうと思う。
とにかくイベントでよく使用されているホールを使用しての配信が始まろうとしていた。
特別に作られたステージに来ると、軽く流れを確認しましょうということで、あらかじめ用意した半分本当のことが書かれていない台本を見ながら、打ち合わせを行った。
「紗良、この後ろの布は何?」
「あっそれはですね会場が広すぎて仕方なく覆うことにしたのです」
「そんなこと言って、ほんとはみんなが隠れているんでしょ。ちょっと見ちゃお」
「…あっダメです」
未来が見てしまうように、少し時間を空けてダメだと言った。
「チラっ……て、もう見ちゃったよ。本当に何にもない」
向こう側には配線の準備をしているスタッフの人がいるだけで、突然見られて二人であわてて挨拶をしていた。
「やった」そう思いながら私は未来を温かい目で見守っていた。
自分で確認したのなら何もない向こう側を何度も意識することはないだろう。未来が最後に呼びたいと言っていたメンバーや、見送りたいメンバーはバスで乗り合わせてくるということにしているだけで、実際には裏で準備をしている。
まだ到着していないような感じにしているだけだ。後ろを自分で見ないようなら見るように仕向けることも考えていた。
「もうすぐ配信の時間なのにみんな来てくれないのかな?」
「いえ、バスはもう出ているということですが、こんな時間に工事で渋滞しているみたいです。配信は始める時間が決まっていますから、最悪楽曲には来られなくても、最後の挨拶には間に合うはずとのことです。みんな間に合わなかったら楽曲は配信を見るっていっていました」
「さみしいけど、来てくれるんだし配信を見てくれるファンの人もいるんだから、頑張る」
「そうよ。メンバーとは頑張れば会えるけど、ファンの人達とはこれで最後かもしれないんだから頑張りましょ」
「そうですよ。遥さんの言う通りです。私も全力で頑張りますので、よろしくお願いします」
ついに配信の時間が来て、私が今日でグループ最後の未来の姿を目に焼き付けてほしいと伝えて楽曲が始まった。
今回は未来がソロパートを歌うのだが、グループを卒業するのがなぜかわからないくらい素敵な歌声だった。
私は未来と唄いながら、「未来のその優しさや、人への気配り、賢さすべてが人としてもパーフェクトだと思っていたのですよ。これからもそのままでいてください」という気持ちを込めて唄っていた。
未来と遥さんの歌声は本当に素晴らしいと思う。もちろん絵里奈の歌声も素敵だが、それとはまた違う澄んだ空気のような気持ちよさがある。二人に囲まれて唄っていると、森の中にぽっかりと開いた草原で鳥と一緒に唄っているようだな。そんな風に考えて気持ち良く唄っていると、すぐに終わりの時間が来てしまった。
「いけない。次のことを考えないと」
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「これから何があっても、全力で楽しんでください」
そう言って、未来が「えっ?」と言うか言わないかのうちに、私と遥さんは自分の決められた位置にズレる。それと同時に後ろにいた恵美さんたちがサッと前に出た。
すぐに、ほぼ全員のフォーメーションで楽曲が始まった。
本当は初めに二期生を近くのフロントに配置したいと思ったが、さなえと真由美以外は未来が驚いて予測できない動きになった時に、きちんと対応しきれない可能性もあるので、基本的には今日来られる一期生にお願いした。
「いいよ。二期生の子たちには先に前に出て申し訳ないけど、私は大丈夫。なんといっても事故がないのが一番だからね。途中からフォーメーションを変えればいいよ。紗良は先に前に出るんでしょ」
恵美さんはそう言って快く引き受けてくれた。
「前に出るというか、きれいに見せるために遥さんとシンメトリーに移動します。位置決めをきちんとしたいので。私は先に一緒に唄うので本当は端でいいのですが」
「紗良は端が好きだよねぇ。それでいて、どこにいても目立つのがすごいわ。ところで私が卒業する時も何かしてくれるんでしょ?」
「恵美さんにですか? いえ、特に何も考えていませんが」
「なんでよ」
「恵美さんはご自身の卒業ライブで送られると思いますので、私が特別何かする必要はないのではないかと考えます。もちろんその時は全力で頑張りますし、心からおめでとうございますというのはします」
「なんという合理主義。何かしなさいよ。絶対に紗良に唄わせてやる」
楽曲が進み、恵美さんの言っていたように、フォーメーションを変えて二期生が前に出た。
私は前に居たので交代して後ろに下がったのだが、その時に横目で朋子を見たらいつものように号泣していた。よくそれで後ろにいたときに鼻をすすらなかったなと妙なところに感心する。
楽曲が終わり、全員が静止したところで最後の挨拶をしてもらおうと近づこうとすると、笑顔だった未来が突然座って泣き出した。
私は訳が分からなかった。
「えっ? なんで?」
「なんでじゃないわよ。紗良のせいでしょ。早く行って」
さなえに私のせいだと言われ、なお意味が分からないと思いながらも、後ろの誰かに背中を押されたので、駆け足で近寄り、腰を折った状態で泣いている未来を斜めに覗き込んだ。
「これから最後の挨拶なのですが、何かありました?」
横の方で「そんな聞き方あるか」というさなえの小さい突っ込みが聞こえたが、さっきまで笑顔で嬉しそうにしていたのに、こんなに泣かれるとは訳が分からないと思いながら、顔を上げて、こういう時はどうするんですか? という目で華さんを見ると、頭をなでなでするんだというジェスチャーをされた。
教えられた通りに、未来の頭をなでながらハンカチを渡して「一旦下がります?」と聞くともう大丈夫だからと言って立ち上がった。
「皆さん、ありがとうございました」
未来が一旦振り返り、メンバーに向かってお辞儀をすると、私に最後の挨拶をするねと言ってカメラの方を向いた。
「最後にこんな素敵なセンターをさせてもらって、メンバーみんなのやさしさに泣いてしまいました。皆さんにびっくりさせてしまっていたらごめんなさい」
もう一度小さくお辞儀をする。
「私ヴァルコスマイルの服部未来は今日でいなくなります。今まで、つらいことも楽しいこともいっぱいあって、でもすべてが私の中に生きていて、皆さんにお返しがしたくて、頑張ってもどうしようもなかったこともあったりして。それでもやっぱり頑張りたくて体調を崩したりしましたが、メンバーに支えてもらって、今は元気になりました。元気になったなら続けたらいいのにといわれるかもしれませんが、元気になったからこそ、私は新たな一歩が踏み出せるような気がしたんです。明日からは一人の服部未来になりますが、仲間がいなくなるわけではありません。これからは助けてもらうだけじゃなくて、私も誰かを助けられるように、新たな目標に向かって強くなりたいと思っています。ファンの皆さんとはこれでお別れになってしまいますが、ヴァルコスマイルを今までと同じように好きでいてください。そして今まで私がいたことで誰かを勇気づけられていたらうれしいです。本当にありがとうございました」
挨拶が終わりメンバーのみんなから拍手が上がると未来は笑顔で最後のお辞儀をした。
配信終了の時間になったので、締めの挨拶をしようと思ったのだが、未来が先ほど泣き崩れたことで来られなかったメンバーの手紙を渡す段取りを飛ばしていたことを思い出した。
「時間がなくてすみません。今日来られなかったメンバーからはここに手紙を預かっていますので、後で読んでください。この手紙で今日は全員参加です。今まで本当によく頑張りましたね」
そう言って愛おしい気持ちを込めて微笑むと、未来が紗良にそんな風に微笑まれて、そんなこと言われたらまた泣いちゃうと言って、号泣したところで配信が終了した。
配信終了後。めちゃくちゃ泣いている未来に三期生が今までありがとうございましたと群がっていたところで、恵美さんからひと言言われた。
「紗良は、どれだけ未来を泣かせば気が済むのよ」
「私が泣かせているのではなくて、ご自身で泣いているのですが」
何を言っているんだ? とみんなからは突っ込まれた。
でも最後に未来から「本当にうれしかった。一生の思い出にする。ありがとう」と言われたので、あれでよかったのだろうと思う。
未来はつらいことも楽しいこともいっぱいあったが、すべてが自分の中に生きていて、みんなに返したいと言っていた。私もライブできてくれているファンの人たちから声援をうければ、やる気が出てくるし、もっと喜んでもらいたいって思う。
「そうか、やっぱりそうだよな」
私は心の中でそう思った。
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さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
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